世界で最も知られた人材交流事業 – フルブライト奨学金に参加した日本の政治家6名の紹介

この記事は約7分で読めます。

奨学金事業や交換留学事業など、世界には様々な人材交流事業があり、政界や経済界をけん引する人材を輩出しています。

今回の記事では、最も名の知られた人材交流事業の一つであるフルブライト奨学金と、そのプログラムに参加した日本の政治家を見てみましょう。

フルブライト奨学金とは?

フルブライト奨学金は、第二次世界大戦終了後の1945年に米国議会で提案され、J.ウィリアム・フルブライト上院議員の信念に基づいて発足しました。

専門分野の研究を進めるための財政的支援を提供し、日米の相互理解に貢献するリーダーを育成することを目的としています。奨学生は留学先や地域社会での活動を通じて両国に対する知識を広め、帰国後も日米関係の向上に寄与することが期待されます。

日本では、1949年から1951年にかけて米国ガリオア・プログラムにより日本人が留学し、1952年にフルブライト・プログラムとして日米の人材交流が始まりました。現在、プログラムは両国政府によって運営され、両政府の資金に加え、民間からも資金援助を受けています。

世界では、フルブライト・プログラムは1946年に設立されて以降、160以上の国々が参加しています。これまでの総参加人数は約400,000人で、新たに支給される奨学金の数は年間8,000にも上り、資金源は米国政府(国務省)、相手国政府、および民間支援からなっています。

インターナショナル・ビジター・リーダーシップ・プログラムとは?

フルブライト奨学金のプログラムの一つである『インターナショナル・ビジター・リーダーシップ・プログラム(IVLP)』には、後に日本の著名な政治家となる人たちが数多く参加しました。このプログラムについて、在日米国大使館と領事館のウェブサイトには、以下のように説明されています。

国務省のインターナショナル・ビジター・リーダーシップ・プログラム(IVLP)は、各国の新興リーダーを対象としたプロフェッショナルレベルの交流イニシアチブです。このIVLPが今年、設立から80周年を迎えます。短期の訪問が相互理解を深め、文化的・専門的な結びつきを強化します。

IVLPへの参加者は、世界で22万5000人を超えています。そのうち日本からの参加者は、3800人以上となっています。小説家の大江健三郎や村上春樹のほか、総理大臣経験者では、菅直人、鳩山由紀夫、海部俊樹、細川護熙が参加しています。小池百合子(東京都知事)、坂東眞理子(昭和女子大学理事長・総長)も同プログラムの同窓生です。

近年の日本からの参加者は、多彩なプログラムにより米国を訪問しています。安全と危機管理の意識を醸成するプログラム、社会環境整備のためのデジタル経済変革技術、革新的で協働的な英語教授法などが例として挙げられます。

在日米国大使館と領事館のウェブサイトから引用

インターナショナル・ビジター・リーダーシップ・プログラムに参加した日本の著名政治家

続いて、このプログラムに参加した経験を持つ、日本の著名政治家を見ていきましょう。

鳩山由紀夫

鳩山由紀夫は、経営工学のPh.D.を持つスタンフォード大学出身の日本の政治家です。日本の政治において重要な役職を歴任し、特に民主党代表および第93代内閣総理大臣として知られています。鳩山氏はアメリカ留学経験を持ち、この経験が彼の政治姿勢や外交政策に影響を与えたとされています。

鳩山氏の政治キャリアは、2009年に内閣総理大臣に就任したことで一層注目されました。しかし、就任後は普天間飛行場移設問題などで政権運営に苦慮し、支持率が低下するなどの課題に直面しました。その後、2010年には辞任に追い込まれましたが、日本の政治において、現在も一定の影響力を持ち続けていると言われています。

鳩山氏は、従来の日本の政治路線を継承し、アメリカとの関係強化を目指す一方で、独自の外交政策を打ち出したことでも知られています。2010年4月には米誌『TIME』が「世界で最も影響力のある100人」リーダー部門で鳩山氏を6位に選出しました。鳩山氏は「革新的には見えない」が「(自民党による)事実上の一党支配体制を、機能する民主主義に変わる手助けをした」と評価しました。

小池百合子

小池百合子は、アラビア語通訳者やニュースキャスターとしての経験を経て、1992年に政界に転身しました。ニュースキャスターとしては、テレビ東京の『ワールドビジネスサテライト』で良く知られています。政治家としては、参議院議員1期と衆議院議員8期を経験し、環境大臣、内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策担当)、防衛大臣を歴任しました。2016年以降(2024年現在も)は、第20、21代東京都知事を務めています。

自由民主党に所属していた小池氏は、2003年に第1次小泉内閣で環境大臣として初入閣し、2007年には防衛大臣に就任しました。特に防衛大臣としては、テロ対策特別措置法の延長問題などに取り組み、日米関係の維持に努めました。2008年には自民党総裁選挙に立候補しましたが、結果は3位でした。その後も政治活動を続け、2016年にはフランス政府よりレジオン・ドヌール勲章を受章するなど、国内外で高い評価を受けています。

小池氏は日本の政治において女性としての地位向上や、環境問題、安全保障政策などに取り組んできました。彼女の活動は、日本国内だけでなく国際的な舞台でも注目されています。

細川護煕

細川護熙は、日本の政治家であり、第79代内閣総理大臣を務めました。彼は熊本県出身で、政治家としての活動の他にも陶芸家や茶人としても知られています。

細川氏は、朝日新聞記者を経て政界入りし、参議院議員、熊本県知事、衆議院議員を歴任した後、1993年に内閣総理大臣に就任しました。彼は非自民・非共産連立政権の首班として、38年ぶりの自民党からの政権交代を実現しました。

政権発足後、細川内閣は政治改革を最大の使命と位置づけ、小選挙区比例代表並立制などの改革を成立させました。また、アメリカとの関係を重視し、クリントン大統領との首脳会談では北朝鮮情勢などを協議しました。

しかし、政権は短命に終わりました。細川氏は消費税を福祉目的税に改め税率を引き上げる国民福祉税構想を発表しましたが、深夜の記者会見での突然の発表や、準備不足が露呈し、世論の反発を招きました。さらに、政権内での対立や借入金未返済疑惑が浮上し、わずか9ヶ月で細川政権は終了しました。

細川氏は政界から引退後は陶芸家として活動し、2014年には東京都知事選に出馬しましたが落選しました。

海部俊樹

海部俊樹は、日本の政治家であり、第82代内閣総理大臣を務めました。

海部氏が首相に就任した時期はバブル景気の真っただ中で、経済は好調でしたがリクルート事件などにより政治不信が高まっていました。そのため、清新なイメージで登場した海部氏には、党内外から大きな期待が寄せられました。

海部内閣では、リクルート事件に関わった政治家にかわり、関係の薄い政治家を登用するなど政治改革を進めました。しかし、党内の不満が高まり、政治改革法案が廃案になる遠因ともなりました。海部内閣発足直後には、内閣官房長官の女性スキャンダルが発覚し、海部氏は迅速に対応して女性初の官房長官を誕生させるなど、女性層の支持拡大を図りました。

外交面では、ベルリンの壁訪問や湾岸戦争の戦費提供、中国との関係改善など、国際社会との協力を重視しました。特に、中国への対応では日本が初めて天安門事件後の西側先進国首脳として中国を訪問し、円借款を再開させたことは特に注目されました。

フルブライト大学院留学プログラムに参加した日本の著名政治家

ここまで、フルブライト奨学金のプログラムの一つである『インターナショナル・ビジター・リーダーシップ・プログラム(IVLP)』に参加した日本の著名政治家を見てきました。

続いては、フルブライト奨学金の別のプログラムである、『フルブライト大学院留学プログラム』に参加した人を見てみましょう。2024年5月現在の外務大臣である、上川陽子です。

上川陽子

上川陽子は、自由民主党に所属する日本の政治家です。静岡県静岡市生まれで、東京大学を卒業後、アメリカのハーバード大学で政治行政学修士号を取得しました。アメリカでは民主党上院議員の政策スタッフを務めた経験もあります。

日本に帰国後は自民党に入党し、2000年に衆議院議員に初当選しました。その後、自民党内での活動を重ね、女性局長や総務大臣政務官などを歴任しました。

2013年には総務副大臣、2014年には法務大臣に就任しました。法務大臣は、死刑執行命令を下す権限を持ちますが、上川氏の命令により刑が執行された死刑囚は16名(安倍第3次改造時の1名を含む)となり「法務省が死刑執行を公表するようになった1998年11月以降に就任した法相」では鳩山邦夫(13名)を抜き最多の執行数となりました。特に、一連のオウム事件で死刑が確定したオウム真理教の教祖・麻原彰晃(本名:松本智津夫)ら死刑囚13名の死刑執行を命令したことで知られています。

その後、2023年に外務大臣に就任しています。2024年1月には、ロシアによるウクライナへの侵攻を受け、ウクライナの首都キーウを訪れ、NATOの基金に約3700万ドルを拠出することを表明しました。

フルブライト奨学金に参加した日本の政治家6選 – まとめ

今回の記事では、フルブライト奨学金のプログラムに参加した経験を持つ日本の政治家についてまとめました。

若いころの海外留学経験は、政治家の考え方、政策や人脈形成に大きく影響することでしょう。私たちが政治家に関心を持つとき、その人がどのような教育を受け、どのようなキャリアを積んだのかを調べるのはとても重要なことです。

グローバルタレントの力で日本企業の海外進出をサポートする【株式会社PILOT-JAPAN】代表。及び、多言語Web支援を行う【PJ-T&C合同会社】代表。キャリアコンサルタントとして500名以上の留学生や転職を希望する外国人材のカウンセリングを行ってきた。南アジア各国に駐在、長期出張経験があり、特にネパールに精通している。

タイトルとURLをコピーしました