外国人採用の面接の注意点

  • 2021-7-11

今回は、「日本人の採用は経験があるけれど、外国人の採用面接ははじめて・・・一体どんなところに気を付ければいいの?」という疑問をお持ちの方に向けに、今回は面接のときに気をつけておきたい外国人ならではの4つのチェックポイントをお伝えします。

外国人採用の面接、チェックポイントはこれ!

1経歴について

2日本語力について

3業務内容について

4雇用条件や制度について

1. 経歴について

まずは面接前、書類選考段階の注意事項です。経歴(特に学歴)を確認し、就労ビザが下りそうか判断しましょう。素晴らしい人材と出会うことができて内定を出したものの、就労ビザが下りない!などということになってしまっては、それまでにかけたコストが無駄になってしまう上に採用計画自体に狂いが生じます。留学生から就労ビザへの切替に関しては近年15%〜20%もの人が不許可になっている事実を考慮すれば、珍しい話でもありません。書類の経歴部分はしっかり事前に確認をしておきましょう。

就労ビザに関する記事はこちら「外国人採用で知っておきたい就労ビザの話~フルタイム編~

次に面接段階の注意事項です。書類に記載されている経歴が正しいのかどうか、自己紹介などで確認しましょう。特に、海外の教育制度は日本と異なることがしばしばあり、認識の齟齬が生じる可能性があります。具体的には、大学に設けられている専門課程で1年〜2年のコースや夜間コースなどです。働きながら大学に通っていたり、複数の大学に通っていたりする人も偶にいるので、まずは事実関係を詳細に聞き取りましょう。必ずしも不許可になるとは限りませんが、申請時により慎重さが求められることには違いありません。それらの情報があれば、在留資格の専門家に相談したとき確かな回答が得られるでしょう。

また、既に日本で生活している人については、アルバイトをしているのかも要確認です。例外がいくつかあるものの、基本的にアルバイトは週28時間までに制限されています。生活が困窮していたなどの理由があったとしても、事前の個別許可なくこの時間を超えた場合は資格外活動違反という犯罪です。この事実を理由に就労ビザの許可がおりない事例もたくさんありますので、リスク回避のためにも確認しておいた方がいいでしょう。

ただ、真正面から「週に何時間アルバイトをしていましたか?」と聞いても、「28時間までです」としか答えてくれないでしょう。※多くの場合、彼らは週28時間以上のアルバイトが違反だと知っています。
そこで、間接的な質問を重ねて事実確認を行い、明らかに時間超過している場合については採用を見送るなどの対応をするのが現実的かと思われます。例えば、以下のような問答があります。

面接官:「勉強にアルバイトで毎日大変ですね。どんなスケジュールで生活しているのですか?」
面接者:「9時から16時まで学校で、その後18時から24時までアルバイトをしています。」
面接官:「すごい体力ですね。」
面接者:「いえいえ、そんなことないです。」
面接官:「休まなくて疲れませんか?」
面接者:「とても疲れるので、お休みの日はずっと寝ています。」
面接官:「ということは、土日はアルバイトお休みなんですね。」
面接者:「いえ、店長が忙しいので、土日も働きます。」

平日は6時間働いているということなので、仮に週4日勤務だと24時間働いていることとなります。そして、土日も働いているということであれば、28時間を超過している可能性がとても高いと考えられます。もちろん、土日どちらかのみで4時間勤務であれば、ちょうど28時間におさまりますが、飲食店で週末に店長が忙しい状況で4時間のみの勤務というのはやや不自然です。少しやらしい手ですが、このように細かい事実を収集してリスク回避を行うことは、企業面接において大切なことだと私は考えます。

2. 日本語力について

日本企業の多くは、外国人を採用するときに「日本語力」と「コミュニケーション能力」を重視しています。そのため、面接においても日本語会話力の確認は欠かすことのできない項目でしょう。

どの程度の日本語力が求められるのかは仕事内容や会社の状況によって様々でしょうから、この記事では「これができれば大丈夫!」などという話はしません。そうではなく、日本語を取り巻く状況や日本語に対する見方・考え方の変革についてお話します。

まず、面接者の日本語力について、「●●ができなさそう」というマイナス評価はやめて、「●●ならできそう」というプラス評価で判断する方が将来にわたって建設的です。理由は、世界で日本語を学ぶ人の数も質も下がっている中、今以上に日本語の堪能な面接者が応募してきてくれることは期待しづらいからです。

まず数の話をします。国際交流基金の調査によると、2018年時点、世界で日本語を学ぶ人は385万人ほどいるそうです。これは多いように感じるかもしれませんが、英語が約15億人、フランス語が約8,200万人、中国語が約3,000万人という規模と比べるとどうでしょうか?どう考えても少ないですよね。国際的にはそれほど通用性のないイタリア語でも約800万人の学習者がいることを考えれば、日本語がいかにマイナーな言語かわかると思います。なお、日本語学習者数は2012年の398万人をピークに減少しています。

次に質の話ですが、語学勉強の動機には「趣味・教養」の側面と「ビジネス」の側面があります。企業としては、後者の人が増えてくれた方がいい人材に出会える可能性が高くなり、嬉しいですよね。ただ、ビジネスのために語学を学ぶというのは、それなりに大変なことであり、相応のメリットがなければできるものではありません。例えば、私たち日本人も受験や就職、昇給昇進に役立つから一生懸命TOEICのスコアを上げる努力をしているのであって、仮にそれらのメリットが無くなったとしたら、英語を勉強するでしょうか?

現在、日本語学習者が直面している状況は上と同じです。最上位のN1を取得しても「日本語力不足」を理由に面接不合格となり、何とか入社できたとしても「メールが書けない」「電話対応ができない」「報告書の日本語が間違っている」と至らない点ばかり指摘され、改善したところで見返りはありません。このような状況で、ビジネスとしての日本語力を磨き続けられる人は本当にごく少数の”変わり者”でしょう。

このような苦難に耐えなくても、母国に帰れば日本語力を武器にいいポジションで就職できるチャンスが増えています。また、無理に正社員として頑張らずアルバイトとしてほどほどに働けば、日本の生活はそれなりに満喫できます。飽きたら帰国すればいいですし、また寂しくなったら旅行で来日すればいい。このようにして日本語をより洗練させる動機は全体として失われ、将来的にはN2レベルですらなかなか出会えなくなるかもしれません。

日本語力を重視する企業であればあるほど、今すぐ採用を行うべきです。その方が高い日本語力を持った人に出会える可能性が高いです。グローバル化が進む昨今、外から見た日本・日本語がどういう状況にあるのか常に情報収集する姿勢が、外国人雇用を成功させる鍵と言えるでしょう。

3. 業務内容について

せっかく採用した優秀な人材が、早期離職してしまうのはとても惜しいですよね。それを防ぐためにも、面接の中で期待する役割や任せたい業務の認識を合わせることが非常に重要です。

まず、基本中の基本として、職務記述書(Job Description)は作成しましょう。説明する側が情報整理できていないと、説明される側は全くわかりません。ホームページやパンフレットに書いてあると言われても、どこが自分に関係ある部署・仕事なのかがさっぱりです。面接者に手渡すための他、説明する側の情報整理の意味でも必ず職務記述書(Job Description)は作成しましょう。

次に、伝え方の工夫です。前提として、言語・文化が異なる相手には、意図を汲み取ってもらうことが期待できません。よって、日本人同士で対話をするとき以上に情報の量と質を高めなければなりません。これは、互いの暗黙知の度合いが低いことに起因するのですが、長くなるので別の記事で取り上げます。

日本語という異なる言語を介しての情報伝達が非効率的であるならば、非言語を介して情報伝達するか、相手の言語を介して情報伝達するのが有効な手段となります。前者は図表や写真、動画を使い、後者は言葉のとおりです。職務記述書(Job Description)を作成していれば、使用すべき図表・写真や、説明の流れは自ずと決まってくるでしょう。いくつかの項目にわけて、各項目の説明が終わる度に質疑応答を交えるとかなり認識の齟齬は防げるでしょう。

外国人は概してキャリア意識が日本人よりも強い傾向にあるため、「このような役割・責任の下、これらの仕事をして、結果こういう専門性が身について、1年後にはこういうキャリアに繋がる」ということを明確に理解してもらいましょう。また、いかに職務記述書(Job Description)を作成したとしても、それ以外の業務や雑務が発生し、社員同士協力し合って処理することは日常的にあると思います。そういうときに不和なく協力を得られるよう、周辺業務が発生することや、その場合は手の空いている人が対応することなどを事前に伝えておいたほうがいいでしょう。その情報を伝えた上で入社してもらうことにより、「これは私の仕事じゃない!」という不満をある程度は抑えることができるでしょう。

4. 雇用条件や制度について

業務内容の他、雇用条件や制度についても認識の齟齬がないよう正確に伝えることが大切です。特に、①残業時間と残業代、②休日・休暇、③昇進・昇給、④住居に関する支援制度、⑤在留資格に関する支援制度、は重要です。

①残業時間と残業代

よく外国人は残業をしないと言われますが、これは正しくありません。理由もメリットもない残業が嫌われるのです。時間外労働は25%増しになることを伝えた途端、残業に前向きになる人もいれば、日本で働くことを決意した時点で、ある程度の残業は覚悟している人もいます。要は、目の前の面接者が残業をどう捉えているのかを知ることが大切であって、一律に残業をなくせばいいというものでもありません。

残業の有無や残業時間以上に気をつけるべきことは、「みなし残業」です。理由は、残業したのに給与が増えていないような気がするからです。そのため、基本給とみなし残業代の違い、そこに含まれる残業時間数については繰り返し説明し、認識の齟齬が生じないよう十分注意しましょう。

②休日・休暇

週2日や月8日など休日について説明することはもちろんのこと、有給休暇や夏季休暇などまとまった休みがあるのか、どのくらいの長さなのかについては説明しましょう。長期休暇中に一時帰国したり、来日する家族を迎えたりなど、家族を含めて予定を立てたいという理由があるためです。やはり異国で働き、生活するのはストレスがかかるものなので、息抜きの機会をしっかり付与できる環境が好まれます。

③昇進・昇給

昇進と昇給については、年何回何月にある、という話だけでなく、どのような条件を達したら昇進・昇給できるのかについても話をする方が良いです。これは、優秀で上昇意欲の高い人ほど強い傾向があるのですが、同じ役割や仕事内容で居続けることを良しとしません。周囲がものすごい勢いで昇給・昇進していく様子もSNSなどで目にしてしまうので、日本企業でゆっくりじっくり成長することに我慢できない人が意外に多いです。何をすれば、次のステージに進めるのかという目標設定は、入社前の面接時点から明らかにしておきましょう。

④住居に関する支援制度

外国人の多くは住居探しで不便な思いや嫌な思いをしている人が結構います。そのため、入社する会社が住居に関する支援を提供しているのかどうかが、高い関心事となっています。寮の提供や住宅手当の他、家さがしの手伝いの有無も気にしている人が多いので、面接のときに説明すると良いでしょう。

⑤在留資格に関する支援制度

最後に在留資格に関する支援制度です。本来、雇い入れる会社が書類を作成し入管に提出しない限り、就労ビザの許可は下りないので、その意味では全ての会社が在留資格に関する支援を提供していることになるのですが、この事実を知らない人も結構います。そのため、言わなくてもわかるだろうと説明をおろそかにすることなく、在留資格申請に関わる資料の準備と作成は、会社で行う旨をしっかり伝えましょう。そうすることで、面接者の入社意欲も高まります。

形式主義に陥っていないか要注意!

今回は4つのポイントに絞って解説しましたが、実際には他にも注意すべきことがたくさんあります。いずれにせよ共通して注意すべきことは、形式主義に陥っていないかということです。事前に準備した質問を聞いて、面接者の答えを収集するだけでは優秀なグローバル人材は採れません。彼らは、自分自身のキャリアをものすごく大切に考えていて、最良の機会を常に求めているからです。画一的な対応をして、自分のニーズに応えてくれていない会社はすぐに見破ります。このあたりは、優秀な日本人にもあてはまるでしょう。

また、世界の状況は目まぐるしく変わっている中、日本や日本企業も常に相対的評価がくだされています。日本が他国に比べて上り調子だったときには、そこまで心配する必要もなかったでしょうが、他国が伸びて日本との差異が縮まっている現代においては、本気で相手にされなくなるかもしれないという危機感は持っていたほうがいいでしょう。杞憂で終わればそれでいいのです。

中村拓海

高度外国人材に特化した人材コンサルタント。人材探索から在留資格申請、入社後の日本語教育、ダイバーシティ研修等、求人企業の要望にあわせた幅広いサービスを提供する。また留学生専門キャリアアドバイザーとして東京外国語大学、横浜国立大学、立教大学、創価大学等で外国人留学生の就職支援を行い、80カ国・500名以上の就職相談を受ける。内閣官房、内閣府、法務省等の行政および全国の自治体における発表や講演実績も豊富。

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