外国人雇用の手続き一覧

  • 2022-5-26

外国人材の採用をしたいと思っても、いったい何から始めればいいのか分からない方も多いでしょう。

日本人採用の場合との違いは?
どういう手続きで進めればいいのか?
就労ビザの取得が大変と聞くけど具体的には何をすればいいのか?

今回の記事では外国人材を迎え入れる際に必要な手続きを解説したいと思います。

1.事前調査

募集をかける前に必ずやるべきことは「求人する業務はどの種類の就労ビザに該当するのか?」を事前に調べることです。

外国人は基本的に日本で就労することが認められていません。しかし、事前の許可を受けた上であれば、一定の制限のもとで就労が可能となります。これが就労ビザ(正確には就労可能な在留資格)のしくみであり、許可された就労ビザの種類によって従事できる仕事とできない仕事がわかれます。

例えば、『技術・人文知識・国際業務』の場合、海外営業や貿易事務、法務、経理、人事などのオフィスワークは可能ですが、飲食店のホールやキッチン、機械の組み立て、レジ打ち、タクシー運転手など、専門知識や複雑な思考を伴わない繰り返しの作業はできません。かわりに『特定技能』や『技能実習』『永住者』『日本人の配偶者等』『特定活動』などの許可を得る必要があります。

在留資格についての詳しい解説は『増加し続ける外国人労働者の現状と在留資格の基本』をご覧ください。

2.募集

求人の業務と適合する就労ビザが明らかになったら、その許可を既に有している、もしくは許可が見込める人材を集めます。募集においては以下の方法が選択肢として挙がります。

無料の求人掲載サービスを利用する

自社のホームページで募集する

有料の求人サイトを利用する

SNSで募集する

学校に求人を送る

知人に紹介してもらう

人材紹介会社や派遣会社を利用する

ハローワーク等公的機関を利用する

新聞・外国語フリーペーパーに掲載する

多様な手段があり、募集方法を立案するときに困ってしまいますね。実際、日本人と勝手の違う外国人募集において、どの方法が自社に合っているのか迷う会社が多いようです。

そのような場合は、自分で調べることと並行して外部に相談することをお勧めします。下記の窓口はいずれも無料であり、外国人雇用の支援実績が豊富なコンサルタントもいるので有益な情報が得られるはずです。

JETRO 高度外国人材活躍推進コーディネーターによる伴走型支援サービス

東京都外国人材採用ナビセンターのコンサルティングサービス

MICHIの運営元 株式会社ソーシャライズの無料相談窓口

3.書類選考

適切な募集方法が決まり、3ヶ月も運用すればある程度の応募が集まります。続いては、自社が求める人材像に適合しているか書類を確認します。

このとき、外国人ゆえに注意をしなければならないことがあります。具体的には、

就労ビザを保有しているか?その期限は6ヶ月以上あるか?

就労ビザを保有していない場合、今持っている在留資格の種類と期限はいつまでか?

学歴欄には学校名だけでなく、学部や専攻内容も書かれているか?

職歴欄に書かれている内容はフルタイムのものか?それともインターンシップやアルバイトのことか?

日本語に関する資格等は合格したのか、受験予定なのか?

などです。

「そんなことも注意しないといけないのか!?」と思われる事柄もあるかもしれません。しかし、日本式の履歴書は世界標準ではなく、書き方を知らない人たちは意外と多くいます。そして、それは仕事の能力や学習能力、人柄とはそれほどリンクしていませんので、履歴書が正しく書けないからといって書類選考で不合格にしてしまうのは、非常にもったいないことです。

あと、当てはまるケースは数少ないのですが、「大学卒業」と書いてあっても実際は夜間コース等で限られた単位しか履修しておらず学位は取得していなかったり、日本語能力試験とよく似た名前の別の試験(例えば、日本語力試験2級)が書かれていたりするので、そのあたりは卒業証書や合格証書などを別途請求して、事実確認をした方が良いでしょう。

履歴書を確認した結果、就労ビザを保有していないことがわかったら、今持っている在留資格から変更することを具体的に検討しなければなりません。その場合、成績証明書や卒業証書など追加の確認し、自社の業務に適合する就労ビザが取得できるかを事前にある程度判断する必要があります。

全てのケースについて書き出すにはスペースが限られているため、最も一般的な就労ビザの一つ『技術・人文知識・国際業務』について述べます。『技術・人文知識・国際業務』を取得するには、以下の要件を満たす必要があります。
※分かりやすさを重視し、簡略化して書いています。実際には異なる場合があるので、ケースごとに事前確認をしてください。

応募者が学歴要件もしくは職歴要件を満たし、その専門性と業務内容とに関連性があること
※関連性の判定は、専門士の場合とても厳しくなります。

学歴要件:短期大学卒業以上の学位もしくは日本の専門学校を卒業しているか?
※短期大学士、学士、修士、博士、Associate、Bachelar、Master、Doctor、商業専門士、工業専門士、高度専門士、準学士などです。

職歴要件:10年以上の実務経験があるか
※通訳、翻訳、デザイナー、貿易、語学講師など一部の職種は、実務経験3年で許可されます。

採用を検討する段階において行政書士や弁護士など専門家に相談するのは、コスト的に現実的ではないでしょう。上に述べた無料の相談窓口では事前確認も無料でおこなっているので、ぜひ積極的に使ってみると良いでしょう。

4.面接

書類選考によって有望な応募者か見極めた後は面接です。質問例として、下記が挙げられるのではないでしょうか。

日本で働きたい理由

志望理由

将来のキャリアプラン(母国に帰りたいのか、永住する予定なのか)

これまでの勉強や仕事の経験

日本で働く上で心配なこと

一般的に想定される上記の質問に加えて、以下のコミュニケーションを行うと応募者の自社に対する興味を高めることができます。

(外国人を既に雇用している場合)外国人社員にどのような活躍をしてもらっているかの説明

(制度・社内文化的に可能であれば)2週間以上のまとまった休暇が取れる旨の説明

就労ビザの取得や更新、永住権申請、家族滞在等の申請を会社として手伝う意思の表明

社宅、住宅手当、家探しなど住居確保を会社として手伝う意思の表明

外国人が共通して抱いている日本就労の懸念について、先回りして伝えることで安心感を与えることができます。特に、給与や待遇などで他社よりも魅力的な条件を提示しにくい企業が、自社の優位性を伝える一つの工夫として機能します。

5.内定

内定を出すときは、労働条件を知らせる文書(「内定通知書」「雇用契約書」「労働条件通知書」など)を作成します。基本的には日本人の採用において使用するフォーマットで構いませんが、人によっては以下の点が要検討です。

内定通知書に「この雇用契約は、日本で就労可能な在留資格が不許可になった場合、無効となる」と但し書きを追記する。

内定者の母国語で雇用契約書や労働条件通知書を用意する。

雇用契約書や労働条件通知書に詳細な仕事内容を列記した「Job Description」を追記する。

6.在留資格など公的機関の手続き

雇用契約が成立したら、就労ビザを申請します。前述した通り、正式には「就労可能な在留資格」の許可申請といいます。就労可能な在留資格の許可申請には、主に4つのパターンが存在します。

1.まだ日本に来ておらず、現在在留資格を有していない人が行う『在留資格認定証明書交付申請

2.既に日本に来ているが、就労できない在留資格を有していたり、仕事内容の関係から別の種類に変えなければならなかったりする人が行う『在留資格変更許可申請

3.既に日本に来ており、就労可能な在留資格を有していて、変更する必要もないが、あと3ヶ月以内で在留期限が切れてしまう人が行う『在留期間更新許可申請

4.既に日本に来ており、就労可能な在留資格を有していて、変更する必要もなく、期限も6ヶ月以上残っている人が行う『就労資格証明書交付申請

1.〜3.は必須ですが、4.は任意の申請です。『就労資格証明書交付申請』は、内定者が現在持っている就労ビザで雇用契約に書かれた業務に従事できるのか確認するために行います。認められるのであれば、次の在留期間更新許可申請はスムーズにいきますし、認められない場合は現在の違反状態を解消し、次の在留期間更新許可申請で許可をもらうための準備ができます。外国人材にとっても受け入れ先企業にとっても、メリットの多い話なので、余裕があるなら是非やっておきましょう。

また、在留資格の他に『所属機関に関する届出』も忘れず行いましょう。これは、会社ではなく内定者が自分自身で行うべきものなのですが、この届出を怠ると在留資格の申請に悪影響を及ぼす可能性があります。当然、その状況は雇用する企業にとっても不都合です。そのため、届出漏れが起きないよう会社からリマインドしてあげることが重要です。雇用契約を締結した日から14日以内に行わなければならないので、その点も要注意です。

そして、『外国人雇用状況の届出』も必須の手続きです。雇用保険被保険者となる場合は、雇用保険の手続きを行うことで完了できるのですが、雇用保険被保険者にならない場合に届出漏れが生じやすくなるので要注意です。

最後に内定者が引っ越しを行い、現住所が変わるのであればその届出を市区町村及び入国管理局に対して行うことも忘れてはいけません。こういった届出は、日本における在留状況の良・不良を判断する要素となり、在留資格申請の結果に影響し得るためです。会社の方でも適切に届出がなされたかどうかは確認しましょう。

7.受け入れ準備

公的機関に対する手続きのほか、企業でも必要な準備をしておきます。人や会社によって内容は異なりますが、よくあるのは以下のものです。

(外国からの呼び寄せの場合)航空機の手配

入社研修・日本語教育カリキュラムの用意

社宅・寮など住居の手配

業務マニュアルの多言語化

指導社員や管理者に対する外国人雇用研修

受け入れ準備は、やろうとすれば際限なく続いてしまうので、最低限やらなければならないことだけに集中するのが賢明です。誤解を恐れずに言えば、どれだけ準備しようと必ず入社後に問題は発生します。我々が普段何気なく「外国人」と呼んでいる彼らは、想像するよりもずっと多様な存在なので、受け入れ準備を初期に確立しようとするのは無理な話です。問題に直面したとき、迅速かつ柔軟に個に配慮した対策を講じるしかありません。そうすることでダイバーシティ&インクルージョンが実現します。道のりは長いので、まずは気楽に臨みましょう。

8.入社

入社手続きに関しては、基本的に日本人社員と同様です。前述のとおり、雇用保険被保険者になるのであれば、その手続きと同時に『外国人雇用状況の届出』を済ますくらいの話です。

入社後の雇用管理については、以下の手続き等が必要となるでしょう。

1.就業規則等の多言語化と交付

2.就労ビザの更新時期の管理

3.(何か変更が生じたら)出入国在留監理官署への「社名変更等届出」の提出

1.と2.は義務ではありませんが、やっておくとトラブル回避につながるので、やっておいて損はありません。3.は入社後に企業の社名や住所が変更になった場合、この届出が義務となっているので忘れないようにしましょう。

まとめ

以上のように外国人材採用までを8つの手続きに分けて解説しました。道のりは長いですが、一つ一つクリアしていくことで社内に新しい風を吹き込むことができます。

外国人雇用における助成金や補助金支援について』で扱った助成金等も利用しながら、是非外国人材雇用にチャレンジしてみてください。

中村拓海

高度外国人材に特化した人材コンサルタント。人材探索から在留資格申請、入社後の日本語教育、ダイバーシティ研修等、求人企業の要望にあわせた幅広いサービスを提供する。また留学生専門キャリアアドバイザーとして東京外国語大学、横浜国立大学、立教大学、創価大学等で外国人留学生の就職支援を行い、80カ国・500名以上の就職相談を受ける。内閣官房、内閣府、法務省等の行政および全国の自治体における発表や講演実績も豊富。

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