外国人社員のパフォーマンスが低いと感じたら確認すべきこと

  • 2020-12-17

外国人社員のパフォーマンスは低い?

外国人雇用の相談を受けていると「外国人社員が思ったような活躍をしてくれない・・・」という内容がよく寄せられます。具体的には、以下のような悩みがあるそうです。

「自分の仕事じゃない」「自分のミスじゃない」と仕事に当事者意識がない。

 4年も日本にいるのにコミュニケーションが十分とれない。

 会議や打ち合わせで全く発言しない。

皆さんにもご経験があるでしょうか?採用時はやる気に満ちていて会社に新しい活力をもたらしてくれるものと期待していた分、上のような問題に直面するとがっかり感も大きいようです。「外国人は日本人と違って扱いづらい」という考えに至る経営者もしばしば目にします。

その感覚は概ねあっている

誤解を恐れず言えば、「外国人社員のパフォーマンスは低い」や「外国人は日本人と違って扱いづらい」という感覚は概ね合っています。採用している外国人社員の活躍支援のため、関係者にヒアリングをさせてもらうと「いい人だとは思うけど・・・仕事はちょっとね。」という声がよく聞かれます。そこから質問によって掘り下げていくと、仕事の進め方や意識の部分に大きな隔たりがあり、一緒に仕事がやりづらいという感覚から「パフォーマンスが低い」という評価につながっているようです。

しかしながら、この評価を鵜呑みにしてしまうのは危ういです。確かに仕事の進め方に個性があって、一緒に仕事はやりづらいのかもしれませんが、売上や利益を下げているといった悪影響は現実に出ているのでしょうか?感覚的な評価によって将来有望な人材を手放すのは非常にもったいないです。

「この人は仕事ができる!」という感覚の違いをおさえておくことで、外国人雇用は成功させやすくなります。感覚的な評価から脱し、会社の未来を担うグローバル人材に活躍してもらいましょう!

共通項を重んじる日本人

日本人は子供の頃から”均質にする”、”足並みを揃える”、”例外を認めない”ことに慣れさせられており、そこに高い価値があると教えられます。子供にものを教えるとき「ほら、Aくんはちゃんとやっているよ。」という指導をする親や先生は多いと思います。私も注射が怖くて泣いていたとき、幼馴染を引き合いに出されて「Bちゃんも我慢しているんだから泣かないの!」と親に怒られたものです。それが「なぜ大切なのか」を説明するのではなく、「他の人もやっている。他の人にもできている。だからすべきだ。」という論理で幼い頃から物事を教わります。そして、他の人にはできるのに自分にはできないことは、”個性”ではなく”劣性”として認識させられます。

今はどうかわかりませんが、私が小学生だった頃、学校でまだ習っていない漢字や解法を使うと注意を受けた記憶があります。(私の先生はそれでも柔軟な方だったようで、減点はされず赤ペンでの指摘でした)SNSを見ていると、学校によっては採点基準を揃えて”平等に”するためなのか、不正解となる場合もあるようです。また、いわゆる優等生というのは、あらゆる科目において最高成績を取る人物のことであって、算数だけはいつも学年1位とか、虫博士であるとか、歴史にとても詳しいなどといった人は、”変人”や”奇才”であっても”優秀”とは言われません。皆ができることは同じレベル以上にできて、なおかつ他者より秀でたものを持っていることが、優秀な人物像として刷り込まれるのです。

この基準に則って義務教育や高等教育を”優等生”として過ごし、会社に入って同じ研修をこなし、その上で活躍した人が”優れた会社員”であると評価されます。この一連の過程の中でも「均質性」や「同一性」をベースとし、さらに何か秀でたものを持っている人が高く評価されます。こうして、日本企業は「日本人にできることは同じレベル以上にできて、なおかつ海外の言語や文化、経済、社会に精通していること」を当たり前のように期待します。その結果、自分や他の社員にはできるのにできないこと、自分や他の社員はやっているのにやらないことばかりに目がいってしまい、「外国人社員のパフォーマンスは低い」とか「外国人は日本人と違って扱いづらい」などの評価とつながります。

事例紹介

一つ、印象深い事例をご紹介します。日本の文部科学省から奨学金を受け、国費留学生として日本で学んでいたMさんのお話です。彼女は母国語であるポルトガル語の他、スペイン語、英語が堪能で、日本語も最難関であるN1レベルを満点で合格するほどに精通していました。卒業後、日本企業に入社し、ひととおりの新入社員研修を受けた後、実際の勤務が始まりました。さぁ、これから頑張るぞ、という初期の段階でトラブルは発生しました。

「Mさん、ちゃんと電話に出て下さい」

そう、電話対応です。研修で教わったとおり、会社にかかってきた電話を取るのは新入社員の務めです。そうやって電話に出ることで少しずつ社内の人や仕事を覚えていくのだから、多少日本語に不安があったとしても出てほしい。会社はそのように期待しました。ところが、Mさんは全く出ようとしないので、注意したのです。すると、Mさんは言いました。

『なんで私が電話に出るのですか?私よりも上手に対応できる人が出たほうがお客さんも喜ぶし、無駄がないですよね?』

あー!これだから外国人は!そんな気持ちになる人もきっと多いでしょう。皆がやっていることはやるべきであり、今できないこともできるようになっていくのが成長で、その気持ちくらいは新人なんだからもっていてくれ、と。日本語が上手な分、彼女に対する不満と不信は大きかったと思われます。

「研修で電話対応は新入社員の仕事って教わったでしょ?嫌かもしれないけれど、しっかりやってもらわないと困るよ。そうやって仕事を覚えていくんだから。」

上司はたまらず言いました。これに対してMさんは

『でも、海外のお客さんからの問い合わせはほとんど私がやっていますよね?それは私が外国語が得意で、私の方が良い対応をできると考えているから任せてもらっているんじゃないですか?もし、新入社員の成長のためと言うなら、他の人が英語で電話対応しないのはなぜですか?今、私だけが注意されているのは、おかしいと思います。』

Mさんは、研修の意味を理解していなかったわけでも、サボっていたわけでも、日本語に不安があったわけでもありません。自分の強みを活かして役割分担し、お客様に良いサービスを提供することが仕事だという価値基準で働いていただけです。だからこそ、英語やスペイン語の電話が全て自分に回ってきても文句を言わず対応しましたし、多くのお客さんは日本人なので、最初に電話を取る理由がないと考えたのです。

活躍の源泉=モチベーションはこうして削がれる

我々日本人は、幼い頃から同じようなことを学び、似たような経験を積み、均質化されて育ちます。そのため、細かいことまで言わなくても、相手の状況や気持ちが何となくわかります。その結果、言われなくてもやるのが当然、言われてもやらないのは言語道断!という価値基準を持ちます。

ただ、上記の事例が示すように、”言われなくてもやるべき当たり前のこと”というのは、自分たちが教わってきたことやできることに限られており、これは、外国人にとって合理的でないと感じられます。

こうして、入社時点には確かに存在していたモチベーションは削がれ、その職場における自身の未来は見えず、自身の特長を評価してもらえない現実に嫌気がさして、転職もしくは帰国をします。日本人の目には、こういった心情が見えないので「外国人はすぐ辞める」「外国人は扱いづらい」という印象が生まれます。

外国人雇用をやめるべき会社・組織

日本人だけで働いていたときには問題にならなかったことが、外国人雇用をはじめると次々と生じます。上記はほんの一例であり、まだまだたくさんのトラブルや失敗事例があります。そして、このような問題は外国人雇用を続ける限り延々と出続けます。

なぜなら、”外国人”という人間は存在せず、究極的には個々人によって価値観も行動様式も異なるため、会社として取り組む内容が異なるからです。”外国人対応”などというのは、リアルな外国人との接点をまだ持っていないから言える虚構であり、ダイバーシティ対応に終わりはないのです。

繰り返すように、日本人は均質化に高い価値があると教え込まれているので、「皆がそうなら自分もそうしよう」と勝手に会社組織に適合してくれるので問題は表面化してきませんでしたが、外国人雇用をはじめれば大なり小なり問題はかなり出てきます。

もし、既存の価値観や制度を変えることに大きな抵抗がある組織ならば、私は外国人雇用をやめるべきだと考えます。多少、採用コストが高くなったとしても、日本人を採用し続けるほうが無理がなく、良い結果をもたらすでしょう。あるいは、一部の企業で既に成功例が出ているように、期間なり職務内容なりを明確に定めて、その範囲内で活躍をしてもらうことです。技能実習制度が、まさに当てはまるでしょう。

うちの会社の場合はどうすればいい?

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中村拓海

高度外国人材に特化した人材コンサルタント。人材探索から在留資格申請、入社後の日本語教育、ダイバーシティ研修等、求人企業の要望にあわせた幅広いサービスを提供する。また留学生専門キャリアアドバイザーとして東京外国語大学、横浜国立大学、立教大学、創価大学等で外国人留学生の就職支援を行い、80カ国・500名以上の就職相談を受ける。内閣官房、内閣府、法務省等の行政および全国の自治体における発表や講演実績も豊富。

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