外国人材を採用するときに便利な日本語能力試験4選

日本語能力試験についておさらい

外国人の日本語能力を測る試験として最も知られているものは「日本語能力試験(JLPT)」でしょう。N5からN1までの5段階の評価で、最上位のN1合格者は「幅広い場面で使われる日本語を理解することができる」とされています。

JLPTは国際交流基金が実施する試験で、日本語を母語としない人の日本語能力を測定・認定する世界最大規模のテストです。年間の受験者数は100万人をかるく超え、非常に信頼度の高い試験として知られています。学習者の日本語力を聴解、読解、言語知識(文字・語彙・文法)の3分野で測定し、「いかに日本語という言語を知っているか?」という観点で実力を明らかにします。実践的なコミュニケーション能力よりは語学的な知識を測るので、N1を持っていてもうまく話せない人が結構います。

仕事で使える日本語力を測るテストは何か?

外国人が日本語で仕事をするとき、読む・書く・聞く・話すのいずれも高度に扱うことができて、日本人と全く問題なく働けることが理想的ですが、現実には何かしらの不都合が生じます。そのとき、読む・書くは辞書や翻訳機を使うなどして比較的フォローしやすい一方、聞く・話すは即座の反応や場の空気などが重要であるため、フォローしづらいのではないでしょうか。

弊社のお客様でも読む・書く以上に聞く・話すの能力を重視される会社様が多いです。会話力が欠けていると、業務指示はもちろんのこと日常のコミュニケーションにも支障をきたし、会社の一員としてなかなか溶け込めないようです。

JLPTが採用募集時の日本語能力の基準として広く活用されているものの、実際には「仕事で使える日本語力」を測るテストが他にあります。以下でそれらのテストを4つご紹介します。

BJTビジネス日本語能力テスト

BJTビジネス日本語能力テストは、仕事で使う日本語力を測る目的で開発されたテストです。ビジネスシーンでよく聞かれる会話の聞き取りや資料の読み取りなど、実践的な問題が多く出題されます。特に、会話や指示を聞きながら必要な情報を読み取る「聴読解」は、複合的な日本語力が試されるので、BJTの聴読解パートで高得点が取れる人は、打ち合わせしながらメモを取ったり会議の内容に遅れずついていったりなど即戦力として活躍できる可能性が高いです。

BJTは年間の受験者数が5,000人程度であり、JLPTの200分の1程度しかいません。これは、試験の質が低いからではなく、日本語学習者にとってBJTよりもJLPTの方が認知度が高かったり、学校の授業等で受験対策がしやすかったりという事情があります。正直なところ、日本語能力を採用基準に設定するなら、JLPTよりもBJTの方が圧倒的に良いと筆者は考えます。BJTは空席があるかぎりほぼ毎日開催されており、受験のハードルも低いので、早く広まって欲しいと思います。

採用募集時にBJTを基準として設ける場合、まずは420点以上を目安にすると良いでしょう。これは、J5〜J1+の6段階評価のうち上から3番目のレベルです。最近話題となっている※特定活動(本邦大学卒業者)の取得要件も480点以上(J2レベル以上)であり、上から3番目とはいえJ2はかなりレベルが高いです。

留学生の就職支援に係る「特定活動」(本邦大学卒業者)についてのガイドライン (出入国在留管理庁)
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実用日本語検定J.TEST(A-Cレベル試験)

実用日本語検定J.TESTは(A-Cレベル試験)、読解500点+聴解500点の1000点満点で受験者の日本語力を測定します。600点未満は認定なしとされ、600点以上がC級、700点以上が準B級、800点以上がB級、850点以上が準A級、900点以上がA級、930点以上が特A級として認定されます。

最も低いC級認定でもJLPT N2相当とされ、N1以上の日本語力を測定できる試験として年間約50,000人が受験していると言われています。問題は文法・語彙や読解、漢字、記述、聴解、聴読解などで構成されており、バランス良く受験者の能力を測定してくれます。

実用日本語検定J.TEST保有者の入社前から入社後の様子を筆者は観察したことがないので、実際に効果があるのかは想像となりますが、問題を見る限りはBJT同様、採用募集時の日本語力を担保する基準としてJLPTよりも優れていると思います。

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JSST(Japanese Standard Speaking Test)

JSSTは、語学教材やeラーニングで有名なアルク社が実施している日本語の会話力テストです。特徴は、なんといっても電話で手軽に受験できることです。その手軽さとは反対に、測定方法は熟練した3名の評価官が「正確さ」「発話の形」「待遇表現」「内容」「総合的タスク」などを10段階のレベルで評価します。読み・書きを省いて日本語の実践能力を測る思い切った面白い取り組みだと思います。

JSSTもJ.TEST同様に、入社前後で受験者の様子を観察していないため確証をもってお話はできませんが、読み・書きの能力を測るテストと組み合わせることで高い効果を発揮するのではないかと想像しています。採用目的と言うよりは、入社後の日本語力向上のマイルストンとして利用すると良さそうです。

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ONiT(Oral Nihongo Test)

ONiTは、外国人留学生や外国籍社員のビジネス日本語の「話す」力を測るテストです。「状況説明能力」や「報告・相談能力」などビジネスシーンで求められる12の実践的な能力を「発音」「文法」「語彙」「流暢さ」「文章構成」「相手への配慮」の6つの観点で評価する精緻なテストです。

読み・書きの能力は測定しませんが、ONiTで一定以上得点できる外国人は読み・書きの能力も相当高いと類推できます。それほどにONiTは難しく、厳密な試験だからです。実際、JLPT N2保有者でも習熟していない人は300点中12点しか取れなかった事例もあります。また、ONiTで半分の150点を超えている人は、もれなく日本企業で活躍しています。

ONiTの効果検証には筆者も関わっており、入社前の留学生、就活を終えたばかりの内定者、入社後1年以内の者、そして日本企業で活躍している者の4つにわけて受験者を募り、実際に受けてもらいました。得られた結果はいくつもあったのですが、印象的だったのは、全ての受験者カテゴリついて「敬語運用能力」は低く、入社後1年以内の者も活躍している者も対して変わらなかった点です。販売・接客職や営業職の方もONiTの合格基準には達せず、唯一著名なホテルのフロント職を務める人のみ基準を超えました。

ONiTの詳細はこちら

日本語力の高い人材を採用し続ける注意点

当記事では、仕事で使える日本語力を測定できるテストをいくつかご紹介しました。ごく自然な外国人採用では、各テストの点数やレベルの高い人を選んで採ることになろうかと思います。

しかし、この採用方法は危険性も孕んでいることを指摘しておきます。その理由は、高いレベルで日本語を扱う人間はこれからどんどん採用できなくなるからです。

外国人が日本語を学ぶ動機は、大きく分けて2つあります。「趣味・教養」としてか「就職・ビジネス」としてです。アニメや漫画、文化や歴史に興味があるという人たちは前者に、技能実習生や就活生、日本でビジネスを営む人などは後者に当てはまります。

現在、日本語を高いレベルで習得している人の多くは「就職・ビジネス」目的です。語学の習熟には膨大な時間と労力がかかりますが、それを費やすだけの対価が期待できるからこそ人は努力して言語を磨き上げます。技能実習生や就活生は、日本企業に就職して母国で働くよりも高い給与を得られるがゆえに日本語学習を頑張っています。

しかし、近年は状況が変わってきています。頑張って日本語を学ばなくても母国で仕事に就けるようになったり、英語や中国語、プログラミング言語など他言語を学ぶほうがリターンが大きくなっていたりします。そのため、日本語はわざわざ苦労して学ばなくてもいい言語になっているのです。

実際、日本語や日本文化を世界に広める活動をしている「国際交流基金」の調査によると、日本語教育機関や日本語教師の数は1979年から2018年まで一貫して増加しているのに対し、日本語学習者数は2009年から2018年にかけて横ばいとなっています。さらに、ピーク時の学習者398.5万人という人数さえも中国語学習者の約10分の1、イタリア語学習者数の約半分であり、世界の主要言語と比べて人気はありません。

日本語教育機関数
日本語教師数
日本語学習者数
出所:国際交流基金『海外の日本語教育の現状ー2018年度 日本語教育機関調査より』より筆者作成

平易な日本語で働ける環境整備を進めましょう

日本語を高いレベルまで磨き上げる学習者が増えない以上、今いる人材を取りあうか、採用の日本語基準を下げるかしなければなりません。労働者不足が日本全体でますます深刻になることを考えると、日本語力の高い人材を採ることは極めて困難になるでしょう。従って、日本語力の高い人材のみを選抜して採り続けることは、今はできていたとしても、近い将来できなくなる可能性が高いのです。

外国人雇用を今後も続けていくのであれば、このような事態に備えて少しずつ平易な日本語で働ける環境・体制を整えておくのが良いでしょう。

もっと詳しく知りたいなぁ・・・

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