外国人永住者が増える中、ダイバーシティ&インクルージョンと多文化共生を考える

前回の記事「技能実習から特定技能への接続が現在の最適解ー試験が受けられないという構造的な欠陥」では、技能実習から特定技能への移行措置を中心に、外国人労働者の受け入れ方についてお話ししました。

特定技能2号の適用職種拡張が今後進んでいけば、結果的に「永住者」の人数は増えていきます。永住者の条件を簡単にまとめると以下の通りです。

素行が善良である

独立した生計を営むことができる資産または技能を持つ

日本国の利益につながる

公的義務の履行

公衆衛生上問題がない

10年以上の在留(5年以上就労または居住資格によって在留)

このうち最後の「10年以上の在留」には例外があり、日本人または永住者と結婚した場合3年以上、「定住者」または「日本への貢献があったと認められた人」は5年以上、「高度人材外国人」の場合1~3年以上の在留で日本での永住権の獲得が可能になります。

特定技能2号の在留期限は更新し続けられれば無期限なため、5年以上就労の条件にも当てはまり、そのほかの面で問題なければ「永住者」の仲間入りも夢ではありません。

永住者となれば、在留資格の更新の必要もなくなり、家族の在留資格の選択肢も広がりを見せ、職種を問わず就労することも可能となります。

このような永住者が増えていく中で、日本に住む誰もが異文化理解やダイバーシティを尊重し、外国人との「多文化共生」を求められていくことでしょう。

多文化共生のために自分たちができること

昨今よく耳にするダイバーシティ(diversity)とは「多様性」を意味し、集団において年齢、性別、人種、宗教、趣味嗜好などさまざまな属性を持つ人々の多様性を認める考え方を指します。

the fact of many different types of things or people being included in something; a range of different things or people.

たくさんの異なる種類の物や人がひと所に含まれていること。様々な物や人。

Cambridge Dictionaryより筆者訳

またインクルージョン(inclusion)という言葉も同様に使われています。こちらは「受容」を意味し、個人の考えや意見を尊重し、共に成長し活かし合う考え方です。

the idea that everyone should be able to use the same facilities, take part in the same activities, and enjoy the same experiences, including people who have a disability or other disadvantage:

障がい、その他の問題を抱える人も含めてすべての人が、同じ設備を利用することができ、同じ活動に参画することができ、同じ体験を楽しむことができるようにすべきだという考え方。

Cambridge Dictionaryより筆者訳

このダイバーシティとインクルージョンを両立させることで、多文化共生への道が開けると考えられます。多文化共生とは、国籍や民族などの異なる人々が、互いの文化的違いを認め合い、対等な関係を築きながら、地域社会の構成員として共に生きていくこととされています。具体的な取り組みとしては

コミュニケーション支援
行政・生活情報の多言語化、相談体制の整備、日本語教育の推進、生活オリエンテーションの実施など

生活支援
教育機会の確保、適正な労働環境の確保、感染症流行時における対応など

意識啓発と社会参画支援
多文化共生の意識啓発・醸成、外国人住民の社会参画支援

地域活性化の推進やグローバル化への対応
外国人住民との連携・協働による地域活性化の推進・グローバル化への対応、留学生の地域における就職促進

が挙げられます。

それでは外国人労働者を雇う企業の目線ではいったいどのような対応が必要でしょうか。

非ネイティブにあわせたコミュニケーション

職場における多文化共生を阻害する要因として、外国人労働者とのコミュニケーション不足が真っ先に挙げられます。

外国人はほとんどが日本語を母語としておらず、ある程度成長してから学習しています。そのため、私たち日本人と同等の日本語力を期待することは基本的にできません。

また、ある程度日本語力の洗練された人であっても、文化や価値観の壁があって話が通じない、という問題も出てきます。日本人同士でも「この人とは話が噛み合わないな」という経験をすることがあるように、言語力は十分であっても、意思疎通ができることはまた別の話です。

外国人労働者は日本に来る前にある程度日本語の勉強をし、日本語能力試験をはじめとする試験を受けて、我々日本人とコミュニケーションが取れるよう努力しています。

それは、彼らが異国の地である日本で生きていく手段として、自分のために当然勉強すべきだという見方もあるでしょうが、多文化共生の考え方からすれば円滑なコミュニケーションの成立を外国人労働者側に求めることは明らかに間違いでしょう。

日本語が十分に扱えないというdisadvantageに対して、日本人社員も寄り添いの姿勢と工夫が求められます。例えば、下記のような取り組みが挙げられます。

翻訳機や翻訳アプリを導入する。

写真や動画、手話、擬音などをコミュニケーションに取り入れる。

外国人労働者の母語であいさつなど簡単な言葉を勉強してみる。

一緒にスポーツをしたり、観たりなど共通の体験を積み上げる。

話を聞く姿勢を外国人労働者にはっきり見せる。

上記の他にも有効な手段はたくさんあります。何をすべきかわからなかったら、私たちが英語など外国語を話すことを想像してください。適切な単語や表現が出てこないときに翻訳機が使えたら嬉しいでしょう。「コンニチハ。ゲンキ?ダイジョウブ?」と片言でも話してくれたら安心するでしょう。足早に通り過ぎていく人に声をかけるより、自分の目を見て微笑みかけている人の方が話しかけやすいでしょう。

日本語を含めて外国語を使っての会話は、実践を通じてはじめて上達します。そのため、目の前の外国人労働者の日本語力に問題があるのなら、自分が率先して話し相手になるべきです。「日本に来ているのだから日本人に合わせろ。もっと勉強しろ。」と突き放すことは、全く解決へと向かいません。

日本人一人一人が外国人労働者と向き合い、日本式の「言わなくてもわかるはず、空気をよめ」ではなく「ジェスチャーを交えながらでも、きちんと言いたいことを伝え合う」必要があるのです。企業側も日本人社員向けの研修を行ったり、外国人労働者との定期的な1対1のミーティングを行うなどしていきましょう。

地域社会とのかかわりあい

コミュニケーションが必要なのは何も社内だけのことではありません。社外、つまり地域社会との関係でも必要です。

世間一般には、自分の住む地域に外国人が増えることに対してネガティブな感情を持つ人がかなりいると思われます。外国人による犯罪の増加を懸念する声もよく耳にしますし、そのような報道がされることで真面目な外国人労働者に対しても地域社会の不信感が増していきます。その不信感が外国人を雇用する企業のイメージダウンにつながるという事態も散見されます。

外国人雇用を行う企業は、外国人が一住民として地域に溶け込めるよう配慮することで、結果的に自社の利益につながることがあります。例えば、地域の清掃ボランティア活動や子供たちに外国語・文化を教える教室に参加するなど地域社会との関わり合いを企業が取り持つことで実現できます。

最近では、都道府県や市区町村、NGOやNPOなど様々な主体が多文化共生をテーマに活動を展開しています。そういった機会を積極的に活用すれば、会社としての手間や負担もそれほど多くありません。

外国人と接する機会が基本ニュースでの伝聞だけであれば、良いイメージを抱くというのはなかなか難しいことです。そのため、地域住民と外国人労働者の交流を促進する必要があるのです。せっかく外国人を雇用するのであれば、もう一工夫凝らして、地元の評判を良くしていくことを私はおすすめいたします。

労働環境

外国人労働者の多くは日本の労働関連法を知らないため、何も説明をしなかったら自分たちの常識で会社の労働環境を評価します。

過労死ラインを超えた残業や最低賃金以下の報酬などは論外として、日本人社員には当然に受け入れられている自社の労働環境が、外国人労働者の思わぬ反感を買って、騒動を起こされるのは会社としても痛手ですよね。

特に「日本は残業が多い」とか「上下関係が厳しい」などは広く世界に認識されている日本企業のイメージであり、たとえ自分の会社が基本的にそうではなかったとしても、ほんの一部だけを切り取られて「残業の多い辛い職場」「私たちを下に見て、話を聞いてくれない酷い会社」などと評価されてしまう恐れがあります。(参考:確証バイアス)

そのため、積極的な情報開示に努めるとともに、ルール作りの段階から外国人労働者の声を聞き、反映させる工夫が重要となります。日本企業に課されたルールではなく、自分たちで決めたルールという認識を持たせることで、外国人労働者からの不当な悪評を回避することができるでしょう。

また、賃金については明確で合理的な設定をしましょう。法的な要件である「日本人社員と同等以上の報酬」を満たすことも大切ですが、定着・活躍してもらうためには「自分が正当に評価され、相当の報酬をもらっている」という納得感が大切です。

書面化され、誰でも閲覧可能な賃金テーブルを用意したり、昇給・賞与の基準を繰り返し通知したり、良い評価につながることと悪い評価につながることとをこまめにフィードバックしたりなどが有効です。

なお「日本人社員と同等以上の報酬」について、具体的には同等の就業年数(キャリア)の日本人の賃金や賃金規定、地域の業界水準を参考に報酬を決めます。技能実習2号を修了した外国人なら日本人勤続4年目の従業員と同水準となります。賃金規定がなく、日本人従業員もいない場合は、近隣同業他社における同等業務に従事する同等程度の経験を有する外国人労働者の報酬額との比較での判断となります。最低賃金を下回ったり、日給や時給制で雇ったりはしないよう心がけてください。労働法令に慣れていない場合、社会保険労務士などの専門家に相談することを推奨します。

そのほか、在留資格や入国管理法などの実務についてもきちんと押さえておく必要があります。気づかないうちに違法行為をしてしまい、場合によっては不法就労や不法滞在となって企業側と労働者側双方に不利益が生じる恐れがあります。在留資格については、行政書士や弁護士などが対応してくれます。
当メディアでは無料相談窓口を設けています。一次対応は24時間以内に無料で行います。専門性が高かったり、解決まで時間がかかるような内容の場合は、適切な専門家をご紹介いたします。

まとめ

外国人労働者の多くは日本の先進的な技術や仕事への姿勢に敬意を表し、希望を胸に来日します。しかし、それは良い側面ばかりでなく、”失望”という悪い結果も引き起こしてしまいます。

技能実習生の失踪が最も多かった平成30年頃は、来日してすぐ「こんなはずじゃなかった」と打ちのめされた人がきっと多かったのでしょう。詳しくは『現代の奴隷』と揶揄される外国人技能実習生が陥る苦境をご覧ください。

2017年の技能実習法改正、2019年の特定技能創設、そして昨今注目されているダイバーシティや多文化共生により、外国人労働者との接し方について一人一人がしっかりと考えなければなりません。

彼らを「単なる労働力」とみなし経済上のメリットだけに集中することは、受け入れ先企業や地域社会の持続可能性を損なう方向に作用しかねません。外国人一人一人の生活を尊重し、地域社会に溶け込めるようにフォローしていくことが、これからの日本社会に必要だと言えます。

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