技能実習から特定技能への接続が現在の最適解ー試験が受けられないという構造的な欠陥

颯爽と現れた人手不足の救世主「特定技能」

「特定技能1号」及び「特定技能2号」の設立で、日本はついに表立って人手が足りない企業へ外国人の受け入れによって人材補填ができるようにしました。

また、「技能実習2号」から「特定技能1号」への移行措置のおかげで、技能実習生は借金返済だけでなく、家族への仕送りや自身の貯蓄にもお金が回せるようになるかもしれません。

さらに、特定技能2号の適用範囲が当初2職種(建設業、造船・舶用工業)のみであったときは、他の12職種は労働力の使い捨てではないか、との指摘もありましたが、2022年度から新たに11職種が特定技能2号に追加される予定とのことです。そうなれば特定技能14業種中、13業種が2号、つまり実質的な永住への道が開けることになります。

ちなみに残り1業種は「介護」です。「介護」は在留資格「介護」という「特定技能2号」とは別の種類を取得すれば同じように永住への道が開けるため、事実上、すべての特定技能対応職種が永住への道に繋がります。

しかし、現状「外国人の長期就労や永住の安易な拡大は移民受け入れに繋がりかねない」として慎重論が根強く、実施されるかどうかは不確定です。

「特定技能」の概要

技能実習制度も、もともとの趣旨である「技能移転による国際貢献」が形骸化してしまっていると言わざるを得ませんが、2017年の法改正により諸問題は少しずつ改善されつつあるようです。

ブローカーの規制や、送り出し機関の最大手数料額の規定、失踪する技能実習生が多い送り出し機関に対する送り出し禁止の伝達、受け入れ先企業では日本人と同額賃金支払いの徹底など、さまざまな対策を講じています。

そのような中、新制度である特定技能は、技能実習2号や技能実習3号からの移行が主流となっています。新規で特定技能を申請するよりも、技能実習から特定技能に接続する方が、条件が易しい上、より確実だからです。

特定技能評価試験は14業種それぞれに存在し難易度も試験によりけりですが、実施国が少なかったり開催時期が不定期な業種も存在します。新規で特定技能を申請する場合、試験が実施されないという解決しようのない問題に直面します。

また、日本語能力を証明できる試験として「日本語能力試験(JLPT)」と「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」の二つが存在し、それぞれJLPTはN4以上、JFT-BasicはA2レベル程度の結果が求められます。

JLPTは、毎年7月と12月の年2回しか開催されず、国によっては年に1回だったり、そもそも開催されなかったりします。またJFT-Basicは、特定技能の創設にあわせて新しく作られた試験であるため、同様に開催機会が少ない上に合格指導できる人がほとんどいない点もネガティブに働いています。先日、ミーティングをしたネパールに3つの校舎を持つ日本語学校も“試験が実施されないから学生を集めようがないし、日本に送りようがない。”と嘆いていました。

また介護分野については、上記と別に「介護日本語評価試験」への合格も必要になります。新規で特定技能を取得するのは、新型コロナウイルスの問題に関係なく、構造的な難しさがあるのです。

ところが、技能実習2号や技能実習3号から特定技能に接続する場合、これらの試験が免除されます。そのため、現在最も選ばれている方法となっています。ただし、試験のみでしか特定技能1号の技能基準を満たさないものもあるため、そこは注意が必要です。

技能実習継続か、特定技能移行か、それが問題だ

さて、ここで気になるのは技能実習2号、つまり3年間日本で経験を積んだのち、在留資格は技能実習3号にするべきか、それとも特定技能1号にするべきなのかです。

制度としては技能実習3号が2017年、特定技能が2019年に成立しており、技能実習継続の方が早くから存在しますが、その間に変化したことも踏まえて解説していきます。

技能実習3号の取得につきまとう「優良要件」というハードル

2017年11月の技能実習法制定の際に創設された技能実習3号。3年間教育してようやく一人前になってきた頃に外国人労働者が母国に帰る、という状況は受け入れ先企業にとって非常に惜しいということで、2年間の実習期間延長が許可されるようになりました。

しかし、何でもかんでも技能実習3号を利用できるわけではありません。技能実習3号は、「優良要件」を満たした監理団体が仲介し、同じく「優良要件」を満たした受け入れ先企業が実習生を引き続き受け入れられる制度となっています。当初はこの制度以外に実習生に4年以上働いてもらう方法はありませんでした。またこの「優良要件」を満たすための基準もそこまで厳しくありませんでした。

2019年に特定技能制度が創設された際、「優良要件」を満たすための基準が引きあがり、監理団体・受け入れ先企業ともに技能実習3号の受け入れに伴うリスクが高まりました。

監理団体は「一般管理事業」を行う団体と「特定管理事業」を行う団体の2種類に分けられ、優良とされているのは「一般管理事業」を行う団体です。技能実習3号を監理でき、実習生受け入れ人数も「特定管理事業」を行う団体より拡大できます。監理団体としての「優良要件」は

団体管理型技能実習の実施状況の監査その他の業務を行う体制
管理事業に関与する常勤の役職員と実習管理を行う実習実施者の比率、管理責任者以外の監査に関与する職員の講習受講歴など

技能等の習得等に係る実績
過去3年間の基礎九、3級、2級程度の技能検定等の合格率など

法令違反・問題の発生状況
直近過去3年以内の改善命令の実績、失踪の割合

相談・支援体制
他の期間で実習が困難となった実習生の受け入れに協力する旨の登録、あるいはその実績など

地域社会との共生
実習実施者に対する日本語学習の支援、実習実施者がおこなう地域社会との交流を行う機会・日本文化を学ぶ機会の提供への支援

の5つで、点数制で満点の6割以上であれば基準に適合となります。

また、受け入れ先企業にも基準があります。

技能等の習得等に係る実績
過去3年間の基礎級、3級、2級程度の技能検定等の合格率など

技能実習を行わせる体制
過去3年以内の技能実習指導員、生活指導員の講習受講歴

技能実習生の待遇
第1号実習生の賃金と最低賃金の比較、技能実習の各段階の賃金の昇給率

法令違反・問題の発生状況
過去3年以内の改善命令の実績、失踪の割合、過去3年以内に実習実施者に責めのある失踪の有無

相談・支援体制
母国語で相談できる相談員の確保、他の期間で実習継続困難となった実習生の受け入れ実績など

地域社会との共生
実習生に対する日本語学習の支援、地域社会との交流を行う機会、日本文化を学ぶ機会の提供

これらの点で監理団体と同じく満点の6割以上であれば優良な受け入れ先企業と認定されます。認定された場合は技能実習3号受け入れが可能になると同時に、基本人数受け入れ枠(企業の常勤職員に対する実習生の受け入れが可能な人数)が2倍に拡大されます。

技能実習3号も、実習生に任せられる職務や作業は限定されており、外国人技能実習機構による技能実習計画に基づいたもので、1号・2号よりもさらに厳格な実習の管理が必要となっています。

技能実習3号にするメリットとしては、同じ技能実習制度の枠内で運用が可能であるため、不慣れな事務作業による手間がかからないことでしょう。団体管理型の技能実習制度を活用する企業は、総じて人事部門が弱い傾向にあるので、採用や育成、管理の手間がかからない点は非常に魅力的といえます。

自由度によって生まれる「利点・欠点」特定技能

「技能実習を3年満了した外国人で、同じ業種で特定技能への移行」は先述の特定技能試験関連がすべて免除されているので簡単に在留資格の変更ができます。

また仮に「別の業種」あるいは「試験でしか携わることのできない業種」であったとしても、日本国内なら各試験を受験する機会にも恵まれていますし、合格出来れば既に国内にいる分採用の難易度は下がります。

一方、特定技能は技能実習と異なり転職が可能です。人手不足に頭を悩まされている企業にとっては、転職のリスクはかなり大きなデメリットでしょう。

とはいえ、自社に定着してもらうための創意工夫を凝らし、外国人が働きやすい労働環境を整備することにつながるので、短期的には大変でも、長期的には良い結果につながると私自身は考えています。

技能実習から特定技能への接続方法

続いて、技能実習生から特定技能へ切り替える際の手続きについてまとめます。

移行の申請・書類提出先は、地方出入国在留管理局です。提出後の審査にかかる期間は約1~2か月になります。書類に不備があった場合さらに時間がかかり、登録支援機関とのやり取りや社内制度の整備などの時間も考えて、準備期間には3~4か月を見ておきましょう。

提出書類は

在留資格変更許可申請書

実習生の写真

実習生のパスポート及び在留カード

申請取次者証明書、戸籍謄本などの身分を証する文章

実習生の報酬に関する説明書

実習生の履歴書

雇用契約書の写し

技能水準/日本語能力水準を証明する資料

技能実習2号終了に関する評価調書

詳しくは『「特定技能(1号)」への在留資格変更許可申請に係る提出書類一覧』参照

等があります。

こうして見てみると技能実習から特定技能への移行は、新規取得より難易度が低く確実とはいえ、それなりの手続きがあり申請にも時間がかかることが分かります。

ちなみに建設職種の場合は国土交通省の許可が必要なため、申請期間として6か月は必要です。加えて、建設技能人材機構への入会が必要など独自のルールがあります。

何よりもまず、確かな情報収集から始めましょう

特定技能制度は日本企業の人手不足問題を解決する政策として大きな注目を浴びています。その一方で、実際の利用人数はまだ5万人にも達していません。
出入国在留管理庁「特定技能1号在留外国人数」(令和3年12月末現在)を参照

その理由は、新型コロナウイルス感染症による入国制限というよりは、試験が開催されていないため応募しようがないし送りようがない、という構造的な問題だと考えています。おそらく、入国制限を解除した後も、しばらくは技能実習から特定技能への接続により、特定技能を取得する人が大半を占めるでしょう。

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