外国人社員とのコミュニケーション-『やさしい日本語』を使いこなす3つのコツと注意点

10年ほど前、こんな経験をしました。

出張先で、取引先のアメリカ人スタッフとオーストラリア人スタッフ、そして私の三人で食事をすることになり、私は「ちょっと困ったな」と思っていました。悪い予感は的中。アメリカ人スタッフはとても早口の英語で話し続け、私は話の50%も理解できません。適当に愛想笑いをしてやり過ごすしかありません。

一方、オーストラリア人スタッフの話はほぼ100%理解でき、相槌だけでなく会話も楽しむことができました。なぜでしょうか?彼は(おそらくネイティブスピーカーではない私がいたからですが)、とてもゆっくりと、身振りや手ぶりを使いながら話してくれたからです。つまり『やさしいEnglish』で話してくれたのです。ゆっくりとした口調で、わかりやすい単語を使い、文章を短く切って、身振りや手ぶりを交えながら。

翌日私は「あなたはとても分かりやすい英語で話してくれるので、すべて理解することができました」と彼に感謝を伝えました。彼は「私はもともと小学校の国語教師をしていたので、ゆっくり話す癖がついているのです」と理由を説明してくれました。合点がいきます。私の英語力はオーストラリアの小学生とちょうど同じレベルの語彙力・会話力だったのでしょう。

英語であっても、日本語であっても、ネイティブスピーカーではない人と話す際にはある程度の配慮が必要です。それは外国人社員とのコミュニケーションにおいても同じです。絶対に理解し合わなければいけない業務コミュニケーションにおいてはなおさらです。

つまり、職場で『やさしい日本語』を使う必要があるのです。

『やさしい日本語』とは?

近年、在留外国人の増加に伴い、東京都やNHKが『やさしい日本語』による情報伝達を始めています。

東京都生活文化局は、「『やさしい日本語』とは、外国人等にもわかるように配慮して、簡単にした日本語のことです。1995年の阪神・淡路大震災では、日本人だけでなく日本にいた多くの外国人も被害を受けました。その中には、日本語も英語も十分に理解できず、必要な情報を受け取ることができない人もいました。そこで、そうした人達が災害発生時に適切な行動をとれるように考え出されたのが『やさしい日本語』の始まりです。」と説明しています。必要な情報を“正確に伝え”、“適切な行動をとれるように”するのが『やさしい日本語』だということです。

それゆえ、職場でのコミュニケーションにおける『やさしい日本語』とは、業務に必要な情報や指示を“正確に伝え”、“適切な業務ができるように”するためのコミュニケーションスキルです。これを日本人上司や日本人社員が身に着けていると、外国人社員とのコミュニケーションがより円滑になります。外国人社員は、自分がやるべきこととやるべきでないことを明確に理解して、安心して仕事をすることができます。一方日本人上司は、「業務指示がちゃんと伝わっているだろうか?」と心配する必要がなくなります。

『やさしい日本語』を使いこなす3つのコツ

それでは、すぐに始められる『やさしい日本語』の3つのコツを見ていきましょう。それは①文章を短く切って話す②簡単な言葉やはっきりした表現を使う③学習してほしい単語を指定する、の3つです。

文章を短く切って話す

結婚式のスピーチや乾杯のあいさつで、だらだらと長く話す人がいます。料理は冷め、ビールの泡がなくなり、話は全く頭に入ってきません。一方、とても分かりやすく、興味深いスピーチをする人もいます。そして、ほとんどのスピーチ本に必ず書かれているのが、“文章を短く切って話す”というコツです。

例えば、こんな話し方をしていないでしょうか?
「太郎さんと花子さんは大学のゼミで出会い、太郎さんは花子さんの明るい性格に魅力を感じたようでして、二人は交際をスタートさせて、お互いが社会人キャリアを積んだら結婚しようと約束し、晴れてこの度幸せな結婚生活をスタートさせられます」

この文章を短く切って話すとこうなります。
「太郎さんと花子さんは大学のゼミで出会いました。太郎さんは花子さんの明るい性格に魅力を感じたそうです。二人は交際をスタートさせ、お互いが社会人キャリアを積んだら結婚しようと約束しました。そして、この度、幸せな結婚生活をスタートさせられます!!」

短く切ったほうが伝わりやすく、聞いていて気持ちが良いものです。

職場での業務指示においては如何でしょうか?
「アンドレさんはその荷物を梱包して、取引先のA社に送って、それが終わったら説明書の英訳を完了させて私のところに持ってきて、、、あ、そうだ、梱包と発送の仕方を新人のウェンさんに教えてあげてください」

これではネイティブの日本人でも業務を忘れてしまいそうです。短く切って話すとこうなります。
「アンドレさん。まず、その荷物を梱包して、取引先のA社に送ってください。次に、説明書の英訳を完了させてください。完了したら、私のところに持ってきてください。あ、そうだ、荷物の梱包と発送の仕方をウェンさんに教えてあげてください」
この時「まず」、「次に」や「完了したら」と言う際に、指で1・2・3と指すような手ぶりがあると更に正確に伝わるでしょう。

かんたんな言葉やはっきりとした表現を使う

小学校3年生のこどもを叱るときに、「君が宿題を忘れたことを、先生は遺憾に思います」とは言わないでしょう。しかしビジネスシーンでは難しい言葉やあいまい表現があふれています。それでは、外国人社員に伝わりやすい言葉や表現とはどのようなものでしょうか?

かんたんな言葉とカタカナ英語

『やさしい日本語』におけるかんたんな言葉とは、小学校3年生でも理解できる言葉です。東京のある研究機関の調査によると、小学校2年生が習得している平均語彙数は6,400語、3年生は8,100語だそうです。そして、日本語能力試験(JLPT)のN2に合格するために必要な単語数は6,000語だと言われています。人生経験などを加味すると、N2に合格している外国人社員の語彙力は小学校3年生レベルだと考えるのが妥当でしょう。

小学校3年生というと、ニュースを見たり新聞を読んだり、読書感想文を書いたり自由研究の発表をしたりと、言葉を使っていろいろなことができる年齢です。外国人社員は、日本語力以外は大人の社会人ですから、かんたんな言葉で語彙力をカバーすることができれば、より一層能力を発揮できるでしょう。

外国人社員の語彙力の少なさをカバーするもう一つの方法は、カタカナ英語を使うことです。例えば先ほどの例で、「アンドレさん。まず、その荷物を梱包して、取引先のA社に送ってください」という文章がありました。「梱包」というのは難しい言葉です。日本人でも、「コンポウを漢字で書いてください」と言われると書けない人も多くいます。しかし私たちにはカタカナ英語という強力な武器があります。「アンドレさん。まず、その荷物を“パッキングして”、取引先のA社に送ってください」と言い換えれば、伝わりやすくなります。社内業務の中で、カタカナ英語に置き換えられる言葉のリストを作ってみるのも良いかもしれません。あまりやりすぎるとルー大柴みたいになりますが。

はっきりとした表現を使う

よく「英語を話すときにははっきりとした表現が好まれる」と言われます。実際にはどの言語にもあいまい表現は存在しますが、ネイティブスピーカーではない人と話す際にははっきりした表現の方が伝わりやすいものです。

例えば、「It’s not so bad」と言われると「良かったのかな?悪かったのかな?」と少し不安になりますが、「Good!!」と言われると「あぁ、良かったんだ」と安心できます。逆に「Not good」と首を横に振られると、「あぁ、やり直しだな」と反省させられます。外国人社員とのコミュニケーションにおいても、日本人同士の阿吽の呼吸は通じませんので、評価や指示をはっきりと伝えるようにしましょう。

また、日本語学校の先生たちは「それは良いです」「それは悪いです」というはっきりした表現を使います。「悪いです」という表現を使うことに抵抗があるかもしれませんが、「それはどうかと思います」や「賛成しかねます」といったあいまい表現を理解できる日本語レベルになるまでは、はっきり伝える方が親切でしょう。

学習してほしい単語を指定する

外国人社員の多くは、日本で仕事をして生活を送るために、できるだけ日本語を習得しようと努力しています。しかし、生活や仕事のすべてのシーンで、日本人と同じレベルの日本語力を習得するには何年もの歳月が必要です。そのため、優先的に習得するべき日本語を指定してあげるならば、外国人社員は学習しやすくなります。

例えば、業務で毎日使う言葉、業界用語や会議で多用される言葉があるはずです。先ほどの例で言えば、「梱包」という言葉を時々しか使わないのであれば「パッキング」と言い換えるのが良いですが、倉庫業務で毎日梱包作業をするのであれば、言い換えるよりも「梱包」を覚えてもらう方が良いでしょう。入社後のOJTで、優先的に覚えてほしい言葉や今後勉強してほしい分野を伝えられるように、予め準備しておくことができます。

『やさしい日本語』を使う際の注意点

最後に、『やさしい日本語』を使う際の注意点を考えましょう。それは赤ちゃん言葉にならないように注意するということです。ここで言う赤ちゃん言葉とは、相手を子ども扱いしているような話し方のことです。

あるテレビ番組で、日本に長く住んでいる外国人が違和感を覚えることとして、「日本人同士は敬語を使って話しているのに、外国人の自分と話すときにはタメ口になる」という意見が出ました。日本人側としては、できるだけわかりやすくフレンドリーに話そうとしたのでしょうが、外国人側から見れば子ども扱いされているような印象を受け、不快に感じたようです。

同じように、外国人社員の日本語語彙力は小学生レベルかもしれませんが、それは日本語能力に限ったことです。相手は社会人ですので、『やさしい日本語』を使いつつも子ども扱いしているという印象を与えないように注意する必要があります。

『やさしい日本語』を使いこなす3つのコツと注意点まとめ

職場で外国人社員と円滑なコミュニケーションを取るために、『やさしい日本語』を使いこなす3つのコツと注意点を考えました。3つのコツは、

①文章を短く切って話す
②簡単な言葉やはっきりした表現を使う
③学習してほしい単語を指定する

です。注意点は、

子ども扱いしているような話し方をしない

でした。

大企業においては、社内共通語を英語にしたり、日本人社員が英語を学んだりしていますが、ほとんどの企業にとってそれらは現実的ではありません。一方、『やさしい日本語』を使うという方法は、少し意識を変えるだけで誰にでもでき、必ず効果が出ます。外国人社員の採用を始めるにあたって、是非検討してみてください。

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