「ダイバーシティ経営」実践のすすめー外国人雇用に力を注ぐ企業の取り組み その2

前回の記事『「ダイバーシティ経営」実践のすすめ-外国人雇用に力を注ぐ企業の取り組み』では、「ダイバーシティ経営」を行い、経済産業省から「新・ダイバーシティ経営企業100選」「100選プライム」に表彰された大橋運輸株式会社について、また「100選プライム」の選考基準にある「ダイバーシティ2.0」を実践するとはどういうことなのか、3つの視点と7つのアクションに分けられた「行動ガイドライン」について解説を加えました。

今回は、この「行動ガイドライン」と対応した大橋運輸株式会社の取り組みについてみていきましょう。

「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」に対応した大橋運輸株式会社の取組

アクション1 経営戦略への取り組み

女性の活躍推進をきっかけにダイバーシティ経営に着手(2010年)

ダイバーシティポリシー「多種多様な人材がその属性にかかわらず互いに尊重しあい、持てる能力を最大限に発揮し、お客様や地域に貢献できるような職場環境づくり」を制定(2016年)

経営トップからの定期的なメッセージの発信

新・ダイバーシティ経営企業100選受賞(2017年)

アクション2 推進体制の構築

ダイバーシティ推進のモデル部署を設置(2015年頃)

ダイバーシティ推進事務局を設置(2019年)

ダイバーシティ推進室(経営トップ、総務、ダイバーシティ推進事務局)を設置、女性常務(安全衛生推進室室長)を監査役に(2020年)

アクション3 ガバナンスの改革

弁護士、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、地元医師会と連携し、職場環境や制度導入・改定についての相談を実施

毎年3月に定時株主総会を開催

LGBTQ に関連するコンサルタント、大学教授と連携

インターン生や他社の女性管理者等の社外からの意見や提言の適宜受入

アクション4 全社的な環境・ルールの整備

事務職への短時間勤務制度の導入(2015年)

就業規則に差別禁止を明記、ハラスメント相談室を設置(2017年)

「原則書類選考無し、面接複数回実施、職場見学・体験」を行う採用プロセスの導入(2017年)

社内管理栄養士による健康管理等の健康経営の取り組み実施(2018年)

残業時間申請の厳格化(2019年)

ジョブローテーションの導入(2019年)

アクション5 管理職の行動・意識改革

管理職登用基準の見直し(2018年)

外部研修への参加奨励

ダイバーシティ推進室による情報提供

アクション6 従業員の行動・意識改革

ダイバーシティに関する情報共有の実施

社員のキャリアアップ・スキルアップに関する挑戦を応援する制度(資格取得支援等)整備

継続して安心して働けるための相談窓口の整備(2008年)

直属上長との定期面談等によるキャリア構築の支援

アクション7 労働市場・資本市場への情報発信・対話

業界団体等、社外のダイバーシティ関連セミナーへの登壇

メディア、学術論文への取材協力

こうしてみると、大橋運輸株式会社はダイバーシティ2.0の実践のために社内外問わず積極的なアプローチを続けていることが伺えます。中小企業だからこそダイバーシティ経営が必要だと、トライ&エラーを繰り返してきた成果が結実したことで、先述のような表彰・評価につながったのだとわかります。

スズキハイテック株式会社の場合

1914年創業のスズキハイテック株式会社は、100年以上の歴史を持つ山形県のメッキ加工業を営む中小企業です。

もともとは仏壇仏具やリヤカーの表面処理・メッキ処理に始まり、現在はハイブリッド車・電気自動車など、大手企業からの受注に幅広く対応することで企業拡大を行ってきましたが、リーマンショックや東日本大震災による工場閉鎖や工場の海外移転の影響で日本市場での受注が減少、海外市場へ進出する必要に迫られました。

2015年に現経営トップが就任したことで受注生産型から開発主導型の企業への変革がおこなわれ、その際に優秀な外国人材の採用に力を入れ、その採用された外国人材が次々と成果を上げることで新たな組織風土が確立。

2016年に中小企業庁「はばたく中小企業・小規模事業者300社(海外展開部門)に、2018年に経済産業省「地域未来けん引企業」に、そして2020年には同省「新・ダイバーシティ経営企業100選」に選定されました。

スズキハイテック株式会社 経営課題に対する取組の歴史

年度 取組内容
2012

中国大手メーカーと技術提供

2014

メキシコに現地法人設立

2015

現経営トップが就任

ボリビア出身と中国出身の山形大学留学生を採用

2016

羽ばたく中小企業・小規模事業者300社(海外展開部門)選定

2018

地域未来けん引企業選定

2020

新・ダイバーシティ経営企業100選選定

先述の大橋運輸株式会社と比べると、「この年にこの取り組みを行った」というより、
実績を積み上げていくことで社風がその影響を受けて自然と変わっていった結果、周囲からその変化を評価されるというのがスズキハイテック株式会社の特徴と言えます。

では一体どのようにしてこれだけ短期間のうちに周囲から評価されるダイバーシティ経営を行えるようになったのでしょうか。

現経営トップが考えたダイバーシティ経営推進のための取組とその成果

2015年に就任した現経営トップが最初に考えたことは、いかに100年の歴史の中で生まれた受動的な風土を変革させるか、ということでした。

新たなことに挑戦する企業体質に変えるには、今までとは異なる多様な人材を採用し、彼らの活躍を通して会社のマインドを徐々に変えていくことが最良と判断しました。また「多様な人材」という面では、近年激化する人材獲得競争において優秀な日本人社員の採用が困難であったこともあり、優秀な外国人材の採用が求められました。

2012年、2014年にスズキハイテック株式会社は中国やメキシコでの技術提携や現地法人設立をおこなったものの、法制度や文化が異なる海外での事業や取引において非常に苦労したため、現地の言葉や文化を理解できる外国人材の採用が必要とされました。そこで地元にある山形大学にて、中国出身とボリビア(メキシコと同じスペイン語が公用語)出身の留学生2名を、来日理由や働く目的などの条件が一致したため採用しました。

現経営トップが思う外国人採用に当たって重要なことは「理解と尊重と共有」だそうです。採用前に外国人社員と直接話し、会社側と外国人社員側の双方の希望や目標を伝え合いました。このすり合わせがあったことで、外国人社員の人生における「働く目的」が明確になり、彼らが安心して働ける環境づくりの土壌ができました。

100年を超える長い歴史のある企業では、大きな変化を起こそうとすれば社内からの反り返りが起こると予想し、あえて外国人社員受け入れのための大きな職場環境・体制の変更は行いませんでした。代わりに経営トップ自らが率先して外国人社員のサポートに関わることで、その姿勢を持って社内の環境をじわじわと変えていきました。

外国人社員への言語や文化、宗教などのそれぞれが持つ属性や価値観についてまでの理解が進んでくることで、彼らやその後輩を育成・支援する体制がスムーズに整備されていきました。また、やる気と能力がある外国人社員は、1年以上働いたのち、適正を見て役職を付け責任感を持たせることで、アウトプット能力の向上を目指しました。

彼らの活躍ついて講演活動やメディア発信など、外部へのPRを積極的に行うことで、社内外の誰もが外国人社員を受け入れ、認めるようになりました。そして組織風土についても、長年の受け身であった姿勢から、外国人社員に影響を受けた新しい技術に挑む姿勢へと変わっていきました。これにより従来の組織体制では難しかった不採算事業の見直し・再編や、新規事業への計画策定などを、自発的に考え進める体制が社内全体に生まれました。

新規事業・技術開発は順調に進み、次期主力製品の量産化や大手メーカーとの直接取引、山形大学との共同研究開発など、これまでの受け身の姿勢では考えられない多様なビジネスを展開。常に外国人社員の活躍についてのPRを行ってきたことで、積極的な求人活動を行わなくとも、地元山形大学などから優秀で意欲溢れる人材の確保にも成功。このようにして先述のような評価をされるに至りました。

大橋運輸株式会社とスズキハイテック株式会社の違いとして、前者は「行動ガイドライン」のすべてを網羅していたのに対し、後者は視点1(経営陣の取組)と視点3(外部コミュニケーション)のみに、それも外国人社員に特化して力を入れ、これにより自然と視点2(現場の取組)がついてきた形となっています。

やり方は違えども、いずれの企業も「ダイバーシティ経営」実現へのたゆまぬ努力と情熱を持ち続けることが成功のカギだったのだと思われます。

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