高度人材獲得競争ートップ3はスイス、シンガポール、英国 日本の順位は?

『世界では優秀な人材の激しい獲得競争が起きている』。こんなニュースをよく目にします。そうした人材の輩出校として、英国のケンブリッジ大学やオックスフォード大学、米国のハーバード大学やMIT(マサチューセッツ工科大学)、更に近年は中国の精華大学や上海交通大学、インドのIIT(インド工科大学)なども注目されています。こうした大学の卒業生たちを獲得しようと、世界中の大企業が誘致合戦を繰り広げている様子をニュースで見たことがあるかもしれません。

一方日本は、一億人以上の人口を有し教育水準が比較的高かったため、高度経済成長期には人材を国内自給することができていました。その人材の中には、高い教育を受けた高度人材や熟練技術者も含まれますし、『金の卵』と呼ばれた勤勉なブルーカラーも含まれます。しかし、少子高齢化と人口減少が進み、グローバル経済に対応できる人材を育成する教育機関が乏しい現在、世界の人材獲得競争に後れを取っていると言われています。

そのような状況の日本が、高度グローバル人材から『魅力的な国』『働きたい国』とみなされるには、どうすれば良いのでしょうか?

今回は、国連が公表している数値とGlobal Talent Competitiveness Index(GTCI)を基にWorld Economic Forumが作成したランキングから、世界の高度人材獲得競争と日本の現状について考えてみましょう。

*World Economic Forum (WEF)とは:経済、政治、学究、その他の社会におけるリーダーたちが連携することにより、世界、地域、産業の課題を形成し、世界情勢の改善に取り組むことを目的とした国際機関。1971年に経済学者クラウス・シュワブにより設立された。スイスのコロニーに本部を置き、同国の非営利財団の形態を有している(Wikipediaより抜粋)

高度人材にとって最も魅力的な国は?GTCI指標とランキング

世界の高度人材獲得競争を表す指標として、上述のGlobal Talent Competitiveness Index(GTCI)というものがあります。これは高度人材としてある国で働く際に考慮される四つの要素について、それぞれの国の魅力度や優位性を数値化したものです。

GTCIの四つの要素とランキング

Enable:その国の規制や経済の展望
Attract:適性を満たした企業や人材を引き付ける、その国の魅力度
Grow:その国で受けられる高等教育やスキルアップの機会
Retain:クオリティオブライフ(獲得した人材を引き留める指標となる)

以下の解説ではわかりやすいように、①可能性②魅力度③成長性④QOL(クオリティオブライフ)と表記します。

今回ご紹介するランキングは、GTCIのこの指標を基にWorld Economic Forumが作成したもので、単純な外国人材の数のランキングではありません。むしろ、世界中の高度人材にとっていったいどの国が魅力的なのか、どの国に移住して働きたいと思っているのかを知る良い材料となります。

ランキングトップ5とその特徴

まず、ランキングトップ5を見ていきましょう。

1位:スイス

ランキング1位は、人口865万人のヨーロッパの国スイスです。①可能性は2位、②魅力度と③成長性は5位、④QOLは1位となっています。全体的に評価が高く、中でもQOLはトップです。

2位:シンガポール

ランキング2位は、人口585万人のアジアの国シンガポールです。①可能性と②魅力度は1位、③成長性は13位、④QOLは7位となっています。経済成長を続けているシンガポールは可能性と魅力度でトップを獲得しています。

3位:英国

ランキング3位は、人口6,643万人の英国です。①可能性は8位、②魅力度は11位、③成長性は7位、④QOLは5位となっています。全体的にバランスが良い評価です。

4位:米国

ランキング4位は、人口3億3千万人の米国です。①可能性は11位、②魅力度は16位、③成長性は2位、④QOLは8位となっています。受けられる教育機会の評価が高いです。

5位:スウェーデン

ランキング5位は、人口約1千万人の北欧の国スウェーデンです。①可能性は9位、②魅力度は13位、③成長性は8位、④QOLは4位となっています。こちらも全体的にバランスが良いですが、QOLの評価が高いのはスイスと同じくヨーロッパの国の特徴かもしれません。

1位と2位は人口規模が小さく、3位と4位は歴史的背景

トップ5を見ると、1位と2位の特徴がまず際立ちます。スイスとシンガポールは両国とも人口規模が小さく、国を発展させるためには世界中から優秀な人材を集める必要があるということです。この点人口が1億を超える日本とは、そもそもの前提条件が違うと言えるでしょう。

3位と4位もまた特徴的な国です。英国は世界中に植民地を持っていた歴史を背景として、優秀な人材を集めることに長けています。そして、米国はそもそも移民国家であり、高度人材も一般労働者も、引き続き世界で最も多く受け入れている国です。こうした国に世界的に評価の高い大学が集中しているのも、その歴史的背景から理解できるでしょう。

6位~25位ランキングとその特徴

それでは6位~25位を一気に見ていきましょう。

6位~25位ランキング

6位:オーストラリア
7位:ルクセンブルク
8位:デンマーク
9位:フィンランド
10位:ノルウェー
11位:オランダ
12位:アイルランド
13位:カナダ
14位:ニュージーランド
15位:アイスランド
16位:ベルギー
17位:ドイツ
18位:オーストリア
19位:アラブ首長国連邦
20位:エストニア
21位:カタール
22位:日本
23位:チェコ
24位:フランス
25位:イスラエル

6位~25位ランキングの特徴

ランキング18位までは、西ヨーロッパと北ヨーロッパの国々、若しくは英語圏の国が続きますが、19位にアラブ首長国連邦、21位にカタール、25位にイスラエルと、中東の国々がランクインしています。そして22位に日本もランクインしました。

高度人材にとって魅力的な国ランキングから見えてくるもの

それでは、このランキングを基に、高度人材を引き付けている国々の特徴を見ていきましょう。

【特徴1】人口の少ない国々

ランクインしている25ヶ国で特徴的なのが、人口規模の小さな国が多いということです。1位のスイス、2位のシンガポールを含め、人口が1千万人を下回っている国が14ヶ国あります。一方人口が2千万人を超える国は、3位英国、4位米国、6位オーストラリア、13位カナダ、17位ドイツ、22位日本、24位フランスの7ヶ国だけです。これはオーストラリアとイタリアを入れ替えれば、そっくりそのままG7のメンバーです。
人口が少ない国は、国を発展させ続けるために優秀な人材を集める必要があり、そのために制度を整えたり生活環境を向上させたり、さらにはそれを高度人材にアピールしたりと、様々な努力を払っています。一方日本は、1億人規模の人口を有しており、戦後の高度経済成長期に諸外国から人材を誘致する必要があまりありませんでした。逆に、その恵まれた環境が人材市場をガラパゴス化させてしまったとも言えるでしょう。

【特徴2】西ヨーロッパ、北ヨーロッパ諸国

ランクインしている国々のもう一つの特徴は、西ヨーロッパと北ヨーロッパに位置する国が多いということです。半数以上の国々がその地域に属しています。もともと地続きのヨーロッパ諸国では、国境を越える人の流れが形成されます。極端な例ですが、人口62万人で、ベルギー・ドイツ・フランスに囲まれているルクセンブルクでは、国境を越えて通いで働きに来る『コミューター』と呼ばれる人たちがいます。埼玉から東京に出勤してくる感じでしょうか。

この点、島国であり、台湾・韓国・中国などの周辺国より数十年早く経済成長した日本の場合、周辺国から自然に高度人材が流入してくるという現象は起きませんでした。

【特徴3】英語圏の国々

もう一つの特徴として、前述のヨーロッパ地域に属さない国々のグループを上げることができます。それは、英国・米国・オーストラリア・カナダ・ニュージーランドの英語圏五ヶ国です。これらは『ファイブ・アイズ』と呼ばれたりもします。これに加えてシンガポールも英語圏ということができますが、これらの国々では英語で生活し英語で仕事ができる状態が整っています。こうした要素もグローバル人材にとって魅力の一つと言えるでしょう。

22位にランクインした日本の特徴

さて、このランキングの中で日本は特徴的です。人口規模は25ヶ国の中で米国に次いで大きく、1億を超えています。そして、ヨーロッパにも英語圏にも属していません。次の記事では、人材市場においても『ガラパゴス化』していると言える日本の特徴を見ながら、日本が世界の優秀な人材を惹き付けるために何をすれば良いかを考えましょう。

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