グローバル人材に魅力的な国ランキングー日本の順位と数値を徹底分析

前回の記事では、高度グローバル人材にとっての魅力度を表すGTCI(Global Talent Competitiveness Index)指標を基にしたランキングから、25ヶ国の魅力度ランキングを分析しました。

全体的に、スイスやシンガポールなどの人口の少ない国々、スウェーデンやデンマークなどの北欧・西欧の国々、英国や米国などの英語圏の国々が、それぞれ政策や歴史的背景を基に世界中から優秀な人材を誘致しています。

一方、ランクインしている25ヶ国の中で、人口が多く、ヨーロッパに属さず、英語圏にも属さない唯一の国が日本です。今回の記事では、グローバル人材から見た日本の魅力度を分析し、今後日本がグローバル経済の中でどのように戦っていくべきかを考えましょう。

グローバル人材に魅力的な国ランキング-日本の順位と数値を分析

GTCI(Global Talent Competitiveness Index)指標を基にWorld Economic Forumがまとめた魅力度ランキングで、日本の順位は25ヶ国中22位でした。各指標の順位を見てみると、①可能性は5位、②魅力度は51位、③成長性は19位、④QOLは16位です。
*前回の記事で触れましたが、GTCIは以下の各指標に基づいて順位付けされています。

Enable(可能性):その国の規制や経済の展望
Attract(魅力度):適性を満たした企業や人材を引き付ける、その国の魅力度
Grow(成長性):その国で受けられる高等教育やスキルアップの機会
Retain(QOL):クオリティオブライフ(獲得した人材を引き留める指標となる)

それでは、各指標の日本の順位について、詳しく見ていきましょう。

【GTCI指標1】Enable(可能性)は5位

可能性の指標で、日本の順位は5位でした。この指標についてGTCIでは以下のように説明されています。

『簡潔に言えば、国はグローバルタレントに移住する機会を与え、熟練労働者を誘致することに積極的である必要がある。この指標の数値は、規制の緩和、経済市場や労働市場の展望などの要素を包含する。更に、政府の有効性や政治の安定性、腐敗度、市場の競争性、ビジネスのしやすさ、ICTインフラ、失業率、労働政策、労働生産性などの各要素も包含する(筆者訳)』

つまりは、国としての受け入れ態勢がどの程度整っているか、市場も考慮に入れて算定される指標だと言えるでしょう。

この点日本は、経済規模が大きく、政治が比較的安定して腐敗度も低く、市場の競争性が確保されていることが評価されているのかもしれません。一方、高度グローバル人材を誘致するための施策として、高度人材ポイント制や文部科学省の国費外国人留学生制度などがあるものの、こうした制度の利用促進や採用意欲の高い企業とのマッチング支援など、高度グローバル人材の受け入れの課題は残されていると言えます。

【GTCI指標2】Attract(魅力度)は、なんと51位

魅力度の指標で日本の順位は51位でした。この指標についてGTCIでは以下のように説明されています。

『この指標については人とビジネスの両方を考慮に入れなければならない。両者は相互に補完しあっており、国は外国からの直接投資と利用できる国力による生産的なビジネス、及び特定の人々に対する移住障壁を撤廃することによるクリエイティブな人材に注力する必要がある。この指標においては、差別を禁ずる法律、総合的な寛容性、女性の賃金や管理職機会といったジェンダーの平等性など、国内の開放性も大きな要素となる(筆者訳)』

つまりは、国として、そして社会全体として、寛容で平等で生産的な土壌が整備されているかということが問われる指標だと言えるでしょう。

残念ながら、日本はこの指標において51位という結果になっています。アニメや食といった文化面、そして旅行先としては高い評価を受けている一方、ジェンダーの平等性や社会的寛容性においてはまだ改善すべき点が多い、少なくとも世界の高度グローバル人材は日本をそのように見ているということです。

更に、職場における魅力度について、経済産業省が発行している通商白書2016では、「我が国における労働環境に対する負のイメージ」という見出しで、『我が国への高度外国人材の定着において重要なことのひとつが、彼らの労働環境についてである。ここでは、我が国で「働くこと」に関する課題について見てみる。我が国において我が国企業へのフルタイム勤務経験のある外国人へのアンケート調査によると、我が国への居住に対するイメージは 81.7%が魅力的であると答えているのに対し、我が国における労働を魅力的ととらえるのは 21.1%にとどまる。さらに、この原因となる要素を尋ねると、「長時間労働」といった項目のなかに「遅い昇進」や「評価システムの不透明さ」といった、日本企業特有の人事システムへの不満がみられている』と検証されています。

日本という国に魅力を感じるものの、日本で働くということには魅力を感じていない実態が浮き彫りになっていると言えるでしょう。

【GTCI指標3】Grow(成長性)は19位

成長性の指標で日本の順位は19位でした。この指標についてGTCIでは以下のように説明されています。

『労働者が新たな技術を身に着けるよう促すことにより既存の人材に投資することは、更なる人材を誘致し、将来的により一層技術が流入する機会を開く大きな要因となる。この指標には、教育レベル、技術教育、現場教育の機会、継続的な教育の機会、より一層の成長や経験の機会が開かれていることなどが含まれる(筆者訳)』

つまりは、その国に移住して働き始めた後も、もしくは大学を卒業した後も、更に成長しスキルアップしていく機会が与えられるか、ということが問われる指標と言えるでしょう。

この指標において日本の前後、18位はフランス、20位はドイツでした。一方、高い評価を受けていたのは、1位がオランダ、2位が米国です。1位のオランダについては、働き方がとてもフレキシブルであることで知られています。週休3日、場合によっては週3日労働も珍しくはなく、パートタイム従業員も正社員と全く同じ条件(責任も同じ)で働くことが保証されているゆえに、結婚や子どもの誕生後も男女ともにキャリアアップを図ることができるようです。

「理想的」とも言われるオランダの労働環境ですが、「オランダの奇跡」と呼ばれる経済回復をもたらした1982年のワッセナー合意以前は、女性の労働参加に保守的な国であったということはあまり知られていません。制度を整えて労働環境を改善し生産性を向上させたオランダの例は、日本にとって良い手本になることでしょう。

【GTCI指標4】Retain(クオリティオブライフ)は16位

QOLの指標で日本の順位は16位でした。この指標についてGTCIでは以下のように説明されています。

『成長に伴い、有能な人材はどの国にでも移動できるようになり、そうした人材を引き留めるための投資が必要とされる。クオリティオブライフは重要な要素であり、在留している人材により多くのものを提供できる国は有能な人材を持続的に確保できることになる。社会保障、年金システム、(人口1,000に対する医師の数などの)医療の充実度、環境などの要素も関係する(筆者訳)』

この点日本は、社会インフラが充実していて医療や環境も良い評価を受けている一方、日本語を話せないと生活しづらいという課題もあります。コロナ禍以前の観光客誘致政策もあり、改善されている部分は多いと言えるでしょう。

グローバル人材にとって魅力的な国になるために-寛容で平等な社会形成が不可欠

以前の記事に引き続き、高度グローバル人材にとっての魅力度を表すGTCI(Global Talent Competitiveness Index)指標を基にしたランキングと、各指標における日本の評価を考えることができました。経済市場の可能性やクオリティオブライフの面で高い評価を受ける一方、ジェンダーの平等性や社会の寛容さの面ではとても低い評価をされていることが浮き彫りになりました。

世界中から有能なグローバル人材を惹き付けて競争力を確保するためには、社会全体の意識を変えていく必要があると言えます。

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