グローバル人材に魅力的な国?-日本のジェンダーギャップ指数を読み解く(前編)

前回の記事では、高度グローバル人材にとっての魅力度を表すGTCI(Global Talent Competitiveness Index)指標を基にしたランキングから、25ヶ国中22位の日本の魅力度を分析しました。

政治や経済の安定性、社会インフラなどの環境整備では高い評価を受けているものの、社会の寛容性やジェンダー平等性を表す魅力度では51位と、かなり出遅れている現状が浮き彫りになりました。

今回は、日本が低い評価を受けている部分、特にジェンダーの平等性について分析し、今後高度グローバル人材を誘致するために必要な変革について考えましょう。

ジェンダーギャップ指数2021を読み解く-依然として低い日本の評価

ジェンダーの平等性について考えるにあたって、世界経済フォーラム(World Economic Forum)が公表している『ジェンダーギャップ指数2021』を紐解いてみましょう。もちろん、この指数だけで全ての説明がつくほど一国の社会は単純ではありませんが、グローバル人材から見た魅力度はこうした指数が判断材料になっていることは間違いありません。

『しゅふJOB総研』が『女性の管理職比率』をテーマに、主婦層を中心とする就労志向の女性(有効回答数705件)に行ったアンケート調査-日本のスコアと順位は?

世界経済フォーラムが2021年3月に「The Global Gender Gap Report 2021」を公表し、各国における男女格差を測るジェンダーギャップ指数(Gender Gap Index)を発表しました。この指数は、「経済」「政治」「教育」「健康」の四分野のデータで分析され、0が完全不平等、1が完全平等を示しています。2021年の日本の総合スコアは0.656、順位は156か国中120位でした。残念ながらこの順位はG7で最下位、79位のタイ、87位のベトナム、101位のインドネシア、102位の韓国や107位の中国など近隣諸国と比べても低い評価となりました。

各分野における日本のジェンダーギャップ指数を分析

続いて各分野における指数を見ていきましょう。前述の通りジェンダーギャップ指数は「経済」「政治」「教育」「健康」の四分野のデータで分析されています。それぞれの分野における日本の順位は、「経済」117位、「政治」147位、「教育」92位、「健康」65位でした。スコアは、「経済」0.604、「政治」0.061、「教育」0.983、「健康」0.973です。

「教育」や「健康」の分野では高いスコアを獲得し、ジェンダーギャップはほとんどないと評価されています。特に識字率と初等教育へのアクセス、及び出生の男女割合は1位です。しかし、これらの分野では日本以外の国々も高いスコアを得ているので、それほど差はつかないようです。

問題は、「経済」と「政治」において非常にスコアが低く、ジェンダーギャップが大きいと評価されていることでしょう。続く章では、「経済」「政治」両分野の各項目を細かく分析していきましょう。

「経済」分野の各項目を分析

「経済」分野においては、①所得の男女平等(83位、0.651点)、②管理職における男女平等(139位、0.173点)、③専門職・技術職における男女平等(105位、0.699点)を見ていきましょう。

所得の男女平等

この項目は83位、0.651点でした。平均的な女性の所得は男性のそれに比べて43.7%低いと報告されています。これはパートタイム従業員の割合が全従業員の50.8%で、男性の22.18%よりかなり高いことに関係していると考えられます。

管理職における男女平等

この項目は139位、0.173点でした。管理職の女性比率は14.7%です。この比率は経済先進各国においてもそれほど高いとは言えず、米国で42%、スウェーデンで40%、英国で36.8%、フランスで34.6%、ドイツで29%、イタリアとオランダで27%、韓国で15.6%となっています。

経済が発展していて教育面での男女間格差がそれほど大きくない先進各国においてもなお、管理職の比率が男性に偏っている実態を考察すると、社会風土や人々の意識、あるいは結婚や出産といったライフイベントが女管理職の女性比率に影響していることが予想されます。

専門職・技術職における男女平等

この項目は105位、0.699点でした。専門職・技術職の女性比率は41.2%です。管理職における女性比率ほど低くはないものの、平等という評価は下されていません。

管理職におけるジェンダーギャップを考察する

ここで、「経済」分野におけるジェンダーギャップのうち、管理職における男女平等について更に考察してみましょう。

先ほど見た通り、日本における管理職の女性比率は14.7%でした。この項目を考察するうえで、『しゅふJOB総研』(運営会社:株式会社ビースタイル ホールディングス 本社:東京都新宿区、代表取締役:三原邦彦)が行った意識調査を参照しましょう。

女性の管理職比率について、女性自身はどう思っているのか

『しゅふJOB総研』が『女性の管理職比率』をテーマに、主婦層を中心とする就労志向の女性(有効回答数705件)に行ったアンケート調査を見ていきましょう。このアンケート調査結果は、『しゅふJOB総研』が出したプレスリリース(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000645.000003176.html)から抜粋しています。

管理職になることを「希望する」と答えた人は回答者の35.9%

管理職になることを「希望する」と答えた人は、全回答者(有効回答数705件)のうち35.9%でした。そのうち「管理職を希望する」は4.8%、「条件によっては管理職を希望する」は31.1%でした。

一方、「管理職を希望しない」と答えた人は全体の52.9%に上りました。この結果を見る限りでは、半数以上の女性が「管理職を希望していない」実態がうかがえます。なぜ半数以上の女性が管理職を希望していないのか、以下のような意見からヒントを得られるかもしれません。

女性管理職の割合は50に近付く方がいいに越したことはないが、出産により職を離れる期間があることを考えると、女性は組織にとらわれず、自分で仕事をするのも良いかと思う(50代:パート/アルバイト)

● (女性管理職の割合が)高くなるといいとは思うけど、今の社会の仕組みでは、なりたい人は増えないと思う(40代:パート/アルバイト)

● 産休育休で仕事ができない期間が評価されないのは不平等だと思う(30代:SOHO/在宅ワーク)

これらの意見を見ると、出産というライフイベントと管理職としてキャリアを築くことのバランスを取る難しさがうかがえます。「今の社会の仕組み」が何を指すかは詳しく説明されていませんが、産休明けのキャリア継続の「仕組み」や、短時間労働でも責任ある仕事を任されキャリアアップを図れる「仕組み」を検討する必要があるでしょう。

女性管理職の割合は「少ない」と皆思っている

女性管理職比率について、「少ない」と思う人は80.7%で、回答者の8割が「少ない」と感じていることがわかります。母数は少ないですが(49件)、男性から得たアンケート結果でも、73.5%の人が「少ない」と思うと回答しています。女性男性共に、女性管理職が少ないと実感しているのは紛れもない事実です。

女性管理職の比率が少ない理由

「女性管理職の比率が少ないのはなぜだと思うか」という問いに対しては、複数回答で以下のような結果が得られています。

結婚や出産をすると管理職として続けづらい雰囲気が職場にあるから 81.1%

前例となる女性管理職の数が少ないから 45.1%

管理職志向の女性の数が少ないから 32.1%

女性は責任ある仕事を任せてもらえないから 30.6%

成果ではなく拘束時間の長さで給与が増減するから 21.1%

管理職の枠に女性比率などの数値目標が設定されていないから 16.2%

在宅勤務が認められる業務が少ないから 16.0%

女性は昇級に対する意欲が少ないから 7.1%

①を見ると、職場の雰囲気や風土に原因があると感じている女性が多いことがわかります。出産に伴う産休や育児に伴う時短勤務(場合によっては緊急的な早退や欠勤)が、管理職には相応しくないという雰囲気があるのかもしれません。実際これは、「仕事にどれほど集中できるか」「どこまで責任を負えるか」という側面も考慮しなければいけませんので、難しい問題だと言えるでしょう。

一方、制度や取り組みによって解決できそうなのは⑤と⑦の意見です。時短勤務や在宅勤務が認められれば仕事を継続したい、という女性は多いかもしれません。前回の記事で取り上げたオランダの事例では、1980年代から労働環境を改善し、週休3日やパートタイム労働でもフルタイム従業員と同じ賃金かつ同じ責任で働ける制度になっています。コロナ禍をきっかけとして、在宅ワークや自宅近くでのフレキシブルなリモートワークが認められるようになってきましたので、新しい取り組みを実践するチャンスであるとも言えるでしょう。

アンケート結果の以下の意見を見ると、そうした取り組みの根底に「長時間労働」主義ではなく「成果」主義を置くべきだと考えさせられます。

女性、男性の別なく在宅勤務ができるとか、時短での成果主義を認めるという空気が必要だと思う。また男性に、女性上司であることの違和感をもつことのないよう、入社時から教育してゆく(50代:派遣社員)

ここまで、「経済」分野における日本のジェンダーギャップと、特に管理職に女性比率について考察してきました。この記事の後編では、女性管理職を増やす方法と、「政治」分野における日本のジェンダーギャップについて考えましょう。

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