水上の人形劇にV-pop|ベトナムに広がる無形文化の魅力 その二

前回の記事『水上の人形劇にV-pop|ベトナムに広がる無形文化の魅力 その一』ではベトナムの芸能・芸術のなかでも古典音楽について解説してきました。無形文化遺産に登録されているものもあり、それぞれが特徴的で聞きごたえがありました。

今回は「V-pop」からお話はスタートします!また音楽以外にも話を広げていきたいと思っています。

そもそも「V-pop」ってなに?

1986年、ドイモイ(刷新)政策が政府から打ち出されました。これは主に経済(価格の自由化、国際分業型産業構造、生産性の向上)、社会思想面において新方向への転換を目指すものとされています。

この政策はベトナムの音楽界にも多大な影響を与えました。外国の音楽が、特に1990年代からは欧米のポップミュージックが大量に入ってきたのです。国営レコード会社、民営レコード会社も新人歌手の発掘・育成、売り出しに力を入れました。

1995年にはベトナムのポップス市場が形成され、それが「ニャックチェー(若者の音楽)」の始まりとされています。

当初は欧米のポップミュージックの影響でバラードが流行りました。ベトナムでは情緒的なものが好まれる傾向にあるため、今でもバラードの人気は健在です。

2000年に入ると中国の歌をベトナム語の歌詞に変えて歌われることが多くなり、2010年になると今度は「K-pop」つまり韓国のポップミュージックが国内でブームとなり、その影響を多大に受け活気づいた「ニャックチェー」も、いつしか「V-pop(Vietnam-pop)」と呼ばれるようになりました。

「V-pop」はベトナムの伝統的音楽と「K-pop」の融合という、新しい音楽の誕生を意味します。

見た目だけじゃない!多才なアーティストたち

外見で持てはやされるだけでなく、音楽学校での専門教育を受けているためか、多くの歌手は歌唱技術が高いのです。テレビ番組での公開オーディションでデビューという、日本でも見かけるスター誕生のようなプログラムも2000年代から充実してきました。お国柄として抒情的なバラードが多く歌われますが、他にもハードロックやヒップホップ、ソウル、さらには日本の演歌に類似した物、ベトナム独自の伝統音楽との融合など、ジャンルについても多彩です。

また苦難の歴史があったからか、多様な文化が絶え間なく押し寄せてきたからなのか、ベトナムのアーティストはマルチに活躍する人が非常に多いです。

女優のゴー・タイン・バンさんはアクション・モデル・ダンサー・監督・プロデューサーという幅広い、という言葉では言い表せない信じられないレベルの多才さをお持ちです。同じく女優のチー・プーさんも自身が主役の短編映画では監督・脚本・プロデューサーを務め、さらに歌手活動もされてるとか。
【ベトナムの芸能人・歌手ベスト10!】ベトナム人と仲良くなるために知っておきたい有名人』参照

役者として芝居をする、それだけで多大な集中力・労力・胆力を放出します。それはどんな短い役だとしてもです。

演出・監督と役者を兼任となれば、全体を把握できる視野と的確に人を動かす力も持ち合わせたうえで役者個人の人生を歩むのです。役者自身もある程度全体を把握する、いわゆる「鳥の目」や流れをつかむ「魚の目」という視点は必要なのですが、それらは役の人物を生きる「虫の目」を活かすためのもので、それを演出等の分野に活かすというのはレベルが違います。

さらにそこで制作・プロデューサーを兼任、とはいったいどういうことでしょう!より広い視野、つまり作品を受け取るお客様とやり取りする視点を持つということになるのです。もちろんこれも少なからず役者には必要な視点ではあります。チケットを売ったり、結果的に作品世界を理解する助けになる視点ですから。しかしこれらの視点を持つだけでなく、作品においての役割のレベルに昇華させるというのは、作品全体に対してのゆるぎないイメージと、それを形作るための異様なまでの集中力が必要とされる偉業です。

「らしさ」が光るベトナム演劇業界

北部は演劇も伝統的

やはりというかなんというか、北ベトナムは伝統を重んじた作品が多く、南ベトナムはくだけた作品が多いようです。

ベトナムの伝統的な演劇はいずれも音楽と舞踊の要素を有する歌舞劇(ミュージカルのようなもの)です。

北部の民衆歌舞劇「チュオ」は、長く農村での農民自身による娯楽の位置を占めてきました。口承文化に題材をとり、村の集会所ディンの庭にゴザを敷くなどして設けられた簡素な舞台で、台詞と様式化された動作により展開されていきます。台詞は普通に話される部分と、伴奏を伴う歌唱の部分とが含まれます。まさにミュージカル、切り替えの様子などは日本でいう新派歌舞伎の感覚でしょうか。

「チュオ」は20世紀初頭に都市部の劇場に持ち込まれ、今日では専業化しています。革命期からドイモイ期を通して、伝統的な演目の保存改良だけでなく新しい演目の捜索を積極的に行っています。

宮廷文化とも密接につながる古典劇「トゥオン」。高度に様式化された動作、人物設定を明示する化粧や装身具など、中国の戯劇に通じるところもありますが、音楽面ではベトナム独自の要素が強いです。中国やベトナムの歴史説話を題材とした作品群は台詞も文語的で鑑賞には相応の知識が必要だそうです。上演時間も2時間以上と、まるで日本における新劇のように、あまり気軽に見られない敷居の高さを感じますが、そのぶん役者の身のこなしなど質が高いものが見られそうです。

南部はやっぱり多彩

南部では、民謡や中部のさまざまな伝統音楽が南部に流入してできた「ニャクタイトゥー」と音楽的に密接な関係を持つ改良劇「カイルオン」が演じられています。20世紀初頭に演じられるようになりましたが、当初から専業的な色合いが強く、西洋の音楽や演劇の要素を取り入れ、題材も他の伝統劇の翻案や時代物からメロドラマにサスペンス、宗教説話までほとんど何でもありといった感のあるジャンルです。

劇場としてみても、北部には伝統的な国立劇場が多く、南部には日本の下北沢のような小劇場がたくさんあります。ちなみに国立劇場はドイモイ政策が災いして政府の補助金を大幅カットされ困窮しており、小劇場はそこからテレビなどで有名になった女優などが増えたことで流行っているとのこと。

水上人形劇「ムアゾイヌオック」

実はこれが一番紹介したかったものかも知れません。

この水上人形劇は、世界でも類例のないベトナム独特の芸能として注目されています。紅河デルタで演じられてきた農村の民間芸能で、ため池の濁った水に舞台を組み、人形の使いては腰まで水につかり、すだれで隠された舞台裏から人形を操作します。全幕を通して一貫したストーリー展開はありませんが、水面を地面に見立てて演じるほかにも、まさに水上であることを最上限に生かした、田植えや漁業、子供の水遊びをはじめとする多彩な動きを演じるなど、躍動感あふれる魅力的な演目の集合体です。

元来は地域ごとに独自の演目があり、また今日でもそれを継承、あるいは回復している芸能グループもありますが、都市部では専業集団での公演が一般的で、格式ある劇団では伝統楽器による生演奏とともに用いられ、観光資源として大きな役割を果たしています。

ここまでの説明だと堅苦しそうなイメージですが、実際はコミカルでユーモラス、言葉が分からなくてもちゃんと理解できる分かりやすいものが多いです。人形もかわいらしいのが多いですね。

なお、日本でも公演が行われた模様です。

ベトナム水上人形劇・横浜赤レンガ倉庫公演

現代のベトナム・ミュージカル

最後に【伝統文化】ベトナム版ミュージカルチケットを紹介したいです。

Youtubeへのリンクもついているので是非ご覧ください。これは言葉が分からなくても一見の価値ありです!

特にベトナムの「笠」や「竹」の使い方が秀逸。中国の音楽に近しい印象のベトナムの音楽に乗せ、コンテンポラリーダンスに近い肉体の躍動から彼らの農村での生活が垣間見える、息をのむエンターテイメントです。もし機会があるのならば、是非見てみたいものです!!

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