【外国人社員のホンネ】Yさん(メディア業界×企画職×台湾・台北)

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外国人社員は、なぜ日本で働くのか?何を喜びとして感じ、何に不満を抱いているのか?
外国人留学生の就職支援や外国人社員の転職支援に携わり続けているソーシャライズが”ホンネ”に切り込みます!

外国人社員のホンネ
※写真はイメージです。

ーー まずは、日本に興味を持った理由を教えてください。
小学校4年生の時に初めていった外国が日本でした。その時から日本にひきつけられていきました。

台湾の大学卒業後はきちんと英語を学びたいと思ってイギリスの大学院に進学して、そこではたくさんの違う文化を持った人たちに出会うことができました。そのなかでも一番仲良くなったのは日本人でした。

それから日本についてもっと知りたいと思うようになり、イギリスの大学院卒業後、改めて日本に留学し、日本語学校で1年半勉強しました。

ーー Yさんはどんな仕事を今していますか?
私は今、台湾人向けの就職支援メディアやイベントを運営しています。その仕事をしようと思ったきっかけは、留学生時代にあります。

当時、日本語学校に一緒に行っていた同じ台湾出身の人たちは日本で就職先が見つからずに、国に帰ってしまいました。私も就職先を決めるのに苦労していましたが、幸運にも卒業前ぎりぎりで就職先が決まり、日本に残ることができました。

しかし、就職先が見つからず帰国していく友達を見て、どうすることもできなかったことが悔しく、私には何ができるのか、と考えたことがきっかけです。幸いなことに、この思いに会社の人たちが共感して下さり、新規事業として台湾人向けの就職イベントを開催する機会を与えてくれました。私はやはり日本に留学をしに来た台湾の方々を応援したいという気持ちが強く、会社の人たちもそれを応援してくれています。

日本語学校では卒業見込み者に対して進学支援が主流で、就職支援が足りないという問題があります。台湾には大学卒・大学院卒で日本が話せて、日本で就職したいという人が多く、就職準備のために日本に留学する場合があります。しかし、就職支援が日本語学校では十分に受けられないので日本語学校の先生には頼ることができず、自力で探すしかないという状況があります。それに対して自分には何ができるか考えた結果として、台湾の学生向けの就職イベントの開催を企画しました。

ーー 最近開いたイベントも盛況だったようですね。Yさんが企画したイベントについて詳しく教えてください。
イベントの目標を「日本で10年以上働きたいと思える企業との出会いの創造と支援」と定め、私と同じような就職活動に関する問題を抱えている留学生を対象に、就職を支援するイベントを開催しました。

当日は26名の参加者がいて、参加した企業は5社でした。参加対象とする企業を考えるときに、IT産業が最も将来性ある分野で、かつどこのIT企業も人手不足にあることがわかったので、留学生を受け入れてくれるのではないかと思い、IT企業を対象にイベントを企画しました。

私の会社の大先輩にあたる方にキャリアコンサルタントの方がいて、その方がIT企業を紹介してくださり、この方とチームを組んで留学生の就職支援を行いました。集客手段にはFacebookを使います。具体的には、フェイスブックに20個以上ある在日台湾人のグループ一つ一つでイベントの告知をして、参加希望を募りました。

さらに、その参加希望を出してくれた方とは毎日チャットでやりとりをして、その中で就活状況をヒアリングしました。こうすることで、友達のように自分の就職状況について話してくれます。

直近のイベントでは、41名の事前の申し込みを得て、当日の参加は26名でした。イベント開催後、すぐに2名の内定者が出て、現在も選考が進んでいますので、これからももっと出ると思います。

就職支援のやりがいは、自分が経験した苦労を他の人たちの役に立てられることです。内定をもらった台湾人の参加者から「本当にありがとう」と言われると、自分が内定をもらった時よりも嬉しいです。この絆に感謝しています。日本で私は、人脈もないし、経験もありませんでしたが、先ほど紹介した会社の先輩をはじめ多くの協力者がいてくれるのでとても心強いです。

ーー Yさんは新卒で働き始めて1年もたっていませんが、ほとんど一人でプロジェクトの運営をして成功させています。日本で働く日本人の新卒でも、なかなかこういう人はいないのでは、と思っています。自分が仕事で成功している秘密は何だと思いますか?
私の会社では一人一人やることが違うので、自分で考えてやることがとても大事になってきます。誰かに言われてやる、ではなくて、自ら進んで考えて、やり始めたら周りから自然と評価されるようになってきました。

皆さんが応援してくれるので、失敗を恐れることなく自分から動くことができます。日本語でおかしなところがあっても優しく訂正してくれたり、営業先でミスをしてしまっても、ベテランの社員さんがフォローをしてくれます。

私たち外国人は、日本語の勉強から日本で就職するまでにたくさんの困難を乗り越える努力をしてきましたので、挑戦することには自信があります。ただ、日本人の言葉や文化には不慣れです。そのために日本人の新入社員よりもたくさんの失敗をしてしまいます。それでも、応援してくれる環境があったら、私のように活躍できる外国人は多いと思います。

ーー Yさんは自分の日本語にあまり自信がないそうですね。どうやって就職活動とか仕事を乗り切っているのですか?
私はいつも笑顔で話すことを意識しています。日本語にはあまり自信がありませんが、勇気を出してはっきりと声を出して話すことが大事だと思います。みんな優しくて、私の日本語が間違っていても、頑張って理解しようとしてくれます。
ーー 日本語がうまいか下手かというよりは、相手が自分のことをわかってくれているか、そうじゃないかということのほうが大事ということですね。
そうですね。それがコミュニケーションの面白さだと思います。自分でいうのもなんですが、私はあまり人に嫌われない性格かなと思っています(笑)だから、聞く人たちが私のことを理解しようとしてくれます。
ーー 「笑顔が武器」・・・そうは言っても、日本語のコミュニケーションで困ることはないですか?
ありますよ。例えば、日本人同士で話しているときはスピードがとても早くて、わからないことが多いです。単語とかもわからないことがありますが、とりあえず、そのまま聞くようにしていますね。メモを取っておいて、あとでパソコンで調べます。

ただ、普通はできるだけ皆さんと話すことで対策をとっています。コミュニケーションの量を増やすことが一番大事だと思うからです。本当に皆さん優しいので、私が何を言っても反応してくれます。

ーー 最初のころは仕事のどんなところが大変でしたか?
全部です(笑)私の会社はすごく小さい会社で、従業員が6人しかおらず、外国人は私だけなんです。不安がたくさんありました。でも、皆さんとても優しく接してくれるので、働きやすいです。大変なことは大変なのですが、皆さんフォローをしてくれるので楽しくやっています。
ーー 会社に入ってからびっくりした日本の企業文化とかってありますか?
あります!私の会社の社長はちょっと古いタイプの考え方を大事にする人なので朝礼を大事にしているんですね。毎日朝9時になったら朝礼をやって、そこで経営理念とか方針とか職場の3原則を毎日みんなで読み上げるんですよ(笑)ちょっとびっくりしましたね。日本の会社ってみんなこんな感じなのかな?って思いました。

あと、その朝礼の中で毎日みんな一人1分半ぐらいのショートスピーチをします。内容としては、今日は何の仕事しますとか、昨日はどんな成果あげましたとか。業務内容の確認もお互いにしあって、情報共有をしています。このような毎朝の朝礼はびっくりしました。

ーー 日本の職場と台湾の職場は何が違いますか?
私は台湾では働いたことがないので想像になってしまう部分もあるとは思いますが、日本では社長の言っていることに従うしかできないような感じがします。

台湾の職場ではもっとフランクな雰囲気です。あと、台湾では働くときにスーツを着る必要はないです。でも日本は着なきゃいけないですよね。

あとは上下関係とかは日本のほうが気を遣わなければならないと思います。

ーー どういうときに上下関係を気にしますか?
食事会のときですね。特にお客さんと行くときは、お客さんがお酒を飲み終わったらすぐ注がなければいけないです。台湾ではそんなにやらないですね(笑)飲み終わったら自分で注ぐので。でも日本だと、お客さんはとても大事に扱われるので、「私が注ぎます」といわざるを得ない雰囲気があります。

あと、私はあまりお酒が飲めないので、飲み会の文化がちょっとびっくりしました。飲み会の時はジュースとかを飲んでいるのですが、ジュースを注文したときに少し変な雰囲気を感じました。

というのも、お客さんから「飲んでよ飲んでよ」といわれるのですが、自分としては本当に飲みたくないんです。飲めないし、飲みたくもないんです。飲めないのに、なぜそんなに何度も何度も言われなくてはいけないのか?ととても疑問に思いました。苦しい気持ちでした。会社の人は私が飲めないことは知っているのですすめてきませんが、お客さんは知らないのでそういう時はかなり厳しいですね。とても嫌な気持ちでした。

ーー 典型的なアルハラですよね、それは。そのとき、Yさんはどう対応したんですか?我慢されたんですか?
私は、そういうときは「アルコールアレルギーがあるので飲めません」と言うようにしています。「本当に飲めないから勘弁してください。」っていう感じです。本当に日本の飲み会の文化は不思議です。
ーー 飲み会以外で何か戸惑ったことはありますか?
他には・・・思いつかないです(笑)本当に飲み会に困っています。現在進行形で困っています。おとといもそういうことがあって。本当に嫌でした。

そういえば思い出したことがあって、以前、仲の良い他の会社の社長さんがかばってくれたことがあります。「Yちゃんにそういうこと言わないでよ」って。そのときは守ってもらえた気がして、すごく嬉しかったです。

高度な日本語力よりも、相手の気持ちを知るための小さく密なコミュニケーションが大切!
いかがでしたでしょうか?Yさんのように、以下の事例にあてはまる外国人留学生や外国人社員はたくさんいると、私は思います。

  • 来日前から日本に関心を持ち、日本に来て様々な挑戦を経て日本社会に馴染み始めたところ、就職活動の制度に阻まれて帰国を余儀なくされる。
  • 職場における違いへの寛容性とフォロー体制のもと果敢に挑戦し、水を得た魚のように入社直後から活躍する。

彼らには統一的なマニュアルが馴染みづらく、どうしても個別対応の手間が生じます。しかしながら、個別対応は小さな工夫からでも大丈夫であり、少しでも実行すれば外国人登用はうまく進み、社員の多様化による多くのメリットを享受することができます。目先の日本語力だけで、貴社に順応しようという意欲あふれる若い才能を手放すのは、あまりに惜しいことではないでしょうか?

次回もご期待ください。

外国人雇用に関する綿密な調査と積極的な情報発信を手掛ける新メンバー。『グローバル』や『ダイバーシティ』という単語がメディアを踊る中、外国人を頼れる仲間として雇用する企業・団体が増えていかない現状に課題を感じ、海外で過ごしてきた自身の経験も活かしながら記事を書いています。

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