近年のビジネス環境の変化の中、グローバルなビジネス展開に対応できる経営者としての資質をもつMBA保持者の需要が高まっているといわれています。今回は、そのMBAの価値について再認識する機会がありましたのでご報告したいと思います。
30年ぶりのMBA同窓会
イギリスでMBAを取得して、すでに30年。この10月に30年振りに同窓会が開催され、150人の同級生のうち50人近くが集まりました。コロナの影響もありアジアの同級生は殆ど参加しませんでしたが、イギリス各地からはもとより、アメリカ、ジャマイカ、ヨーロッパから、同窓生たちが2日間の同窓会のためにやってきました。
同窓生の一部とはソーシャルメディアなどでコンタクトしていましたが、実際には30年振りの再会で、会ってまず顔がわかるのか、または相手が自分のことを覚えているのか、そして30年ぶりに話をして話題は続くのか等、参加前はいろいろ心配でした。心配を紛らわせるため、昔仲の良かった同窓生と数ヶ月前から連絡をとりあって、最終的に参加を決めました。
結果、本当に楽しかった。
すぐにお互いの顔がわかり、あっという間に話に花が咲きました。どの同窓生もMBA卒業後に様々なキャリアに進み今に至っていて、お互いに色々な話を聞いて、話をして、あっという間に2日間のイベントが終わってしまいました。口を揃えて、みんなで楽しかったと、同窓会の後もソーシャルメディアで会話が続いています。
あのMBAの2年があったから自分のキャリアは開けたと今までも思っていましたが、同窓生と自信を持って楽しく話している自分が30年前とは違っていて、本当の意味で仲間となった気がし、あの時期があったからこそ自分が人間として成長したのだと改めて感じました。2年間のMBAはまさに自分の人生において財産だったと感じた2日間でした。
私がMBAを取得した理由は、一般的な年収アップとキャリアアップのためでした。MBAを取得した後、給与は大幅アップし、その後もMBAがあるからこそコンサルタントのキャリアに進むことができたのだと思います。MBA取得は私にとって、キャリア形成において大いに価値がありました。
しかし、今回同窓会に参加して、MBA取得はそれ以上のものであったと気付きました。
MBA取得の本当の価値
30年前はイギリス人の同級生に気後れしていたところもあった自分がいて、生粋のイギリス人と話すよりも、他の国々からきた同級生と大部分の時間を過ごしていました。しかし、今回はあっという間にイギリス人の同級生とも話が弾み、以前から仲良かった友達が「あれ、彼と前から友達だったの?」と驚くほどでした。
自分がMBAを取得したことにより、そしてその後グローバルビジネスに関わることができたことにより、グローバルな人間として成長し、またイギリス人の同級生も同じようにグローバルにキャリアを積んでいて、双方が同じ視点で世界を見るようになっていたため、話が合っていたんだと感じました。
イギリスのMBAプログラムは、アメリカのMBAプログラムと違って同窓会のネットワークは強いものではありません。今回の30年同窓会でさえ、同級生の一人が率先して1年前から計画してくれたことでやっと実現しました。しかし、集まって初めてMBAをベースに成長した仲間と話し、改めてMBAの苦楽を共にした仲間意識と培った価値観でつながっていることを感じました。
イギリスのMBA課程では、沢山の本を読み、多くのプロジェクトをこなしました。沢山のビジネス本を短期間で読んで、エッセイやプレゼンテーションを用意することは、英語がネイティブではない私にとっては大変なことでした。また、イギリス人と行うプロジェクトで、自分の考えをうまく伝えることができず苦労しました。そんなMBA課程で、ビジネスでの英語力が備わっただけでなく、視点や価値観的にグローバル人材として成長できたと改めて実感したのが、30年同窓会でした。
イギリスでMBAを取得したことで得られた価値
私の感想ではありますが、海外でMBAを取得したことで獲得した価値として感じていることをまとめます。
グローバルな視点
グローバル視点が備わる。自分がグローバルに働くことができただけでなく、ほとんどのイギリス人の同級生もグローバルに働いていました。
プロジェクト管理能力
計画して、期間内にやりとげ結果を出すという能力が備わります。多くの同級生が、マネジメントとして働き、またはコンサルタントとなり、そしてまた起業していました。
コミュニケーション力
人の話を聞く姿勢、そして筋立てて論理的に説明する能力が備わります。
MBA取得者としての自信
それぞれが様々な国で色々な経験をし、その立ち振る舞いから、MBA課程をやり遂げたことからくる自信、そして今の自分への自信へ繋がっているオーラが備わっていました。
MBA取得により、キャリアアップそして給与アップという、一般的なMBAの価値は間違いありません。しかし、MBAは、その他にも価値があるものでした。多くの国から生徒が集まるMBAの取得は、グローバル人材となる価値観を養った2年間だったのです。
20年以上世界4大会計事務所の1つアーンストアンドヤング(EY)のジャカルタ事務所のエグゼキュティブダイレクターとして、ジャパンデスクを率い、日系企業にアドバイザリーサービスを提供。またジャカルタジャパンクラブで、税務・会計カウンセラー、及び課税委員会の専門員を務め、日系企業の税務問題に関わってきた。現在は日本在住。海外滞在歴は30年、渡航国はアジア、欧州、北米の38か国、480都市以上に及ぶ。 国際基督教大学大学卒。英国マンチェスタービジネススクールでMBA取得。