外国人材との共通の話題を探す–世界進出した日本のソフトパワーから

前回の記事『外国人材との共通の話題を探す–日本と世界のソフトパワーの比較から』では、アメリカ・インド・韓国の国境を越えたソフトパワーと、各国におけるそれらの受け入れられ方の違いを考察しました。今回の記事では、国境を越えた日本のソフトパワーと、それを活用して外国人社員と共通の話題をもつ方法について考えましょう。

アニメに頼りすぎ?日本のソフトパワー

日本のソフトパワーとして最初に挙げられるのはアニメでしょう。直近では、コロナ禍による行動制限があったにも関わらず世界中でヒットした『鬼滅の刃』を思い起こす方も少なくないはずです。

こうしたソフトパワーの海外展開において、それを主導する政策である「クールジャパン戦略」を先ず見ておく必要があるでしょう。

「クールジャパン」と「ナショナル・クール」

「クールジャパン」という言葉をお聞きになったことがあるでしょう。この言葉は、ハーバード大学教授ジョセフ・ナイが提唱した「ソフト・パワー」の一種である「ナショナル・クール」を基に、日本のナショナル・クールを推進する国策を指して用いられます。1990年代に英国で推進された「クール・ブリタニア」をもじったとも言われています。

具体的な推進としては、先ず2010年6月に経済産業省が「クール・ジャパン室」を設置しました。内需の減少に伴い、海外需要の獲得と共に関連産業の雇用を創出することが「クール・ジャパン戦略」と命名されます。

続いて2013年11月25日、政府と電通など官民ファンドによる海外需要開拓支援機構(愛称:クールジャパン機構)が設立され、以降のクールジャパン戦略はクールジャパン機構が管轄することになりました。
【出典】Wikipedia「クールジャパン」より。

クールジャパンの具体例としては、 映画・音楽・漫画・アニメ・ドラマなどのポップカルチャーやゲームなど、いわゆる日本のサブカルチャーだけでなく、食文化・ファッション・現代アート・建築と言った、現代日本のハイカルチャー、日本の武士道に由来する武道、伝統的な日本料理・茶道・華道・日本舞踊など、日本の伝統文化のコンテンツを指す場合もあります。また、世界的に市場競争力を持ち得ている自動車・オートバイ・電気機器などの日本製品や産業も「クールジャパン」と位置付けられることがあります。しかし、やはりすぐに思い浮かべられるのはアニメ・マンガ・ゲームでしょう。

欧州とアジアで大きなきっかけ-アニメ・マンガ・ゲーム

平成29年に内閣府が行ったとある調査があります。調査の概要は別の記事で触れたいと思いますが、この調査では、複数の外国人に「あなたが日本に興味を持ったきっかけは何ですか?」という質問をして回答を得ています。回答者は欧州・アジア・北米の三つの出身地帯に分けられています。

最も多くの人が選択したのがアニメ・マンガ・ゲームで、欧州出身者の75.00%、アジア出身者の56.60%、北米出身者の23.15%の人が選びました。北米出身者で選択した人の割合が低いのは意外かもしれません。調査が行われたのは5年前ですので、現在の状況とは幾分変わっている可能性もあります。

顕著な例としては、2020年10月に日本で公開された「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は、翌2021年5月までに全世界興行収入が517億円、累計来場者数が4135万人となり、2020年公開映画の全世界興行収入1位を獲得しました。

日本では知られていない日本人も-邦楽

同じ調査において、比較的多くの人が選択したのが日本の音楽でした。欧州出身者の27.00%、アジア出身者の28.30%、北米出身者の10.19%の人が選びました。こちらも北米出身者があまり選んでいないのが特徴的です。

4年ほど前、つまり外国人観光客が多く来日していたころですが、新宿ゴールデン街のとあるバーで飲んでいると、2人組のイギリス人が「Oh! サカナクション!!」と声を上げました。店内で日本のアーティストであるサカナクションの曲が流れていたのです。日本で人気のあるアーティストが来日外国人にも好まれているということで、店内では一気に会話が花開き、途中からカラオケ大会のように盛り上がりました。

日本ではあまり知られておらず、むしろ海外で名を馳せている日本人アーティストもいます。MIYAVIというアーティストをご存知でしょうか?三味線に影響を受けた独特な奏法を持つギタリストで、アンジェリーナ・ジョリーが監督した映画に出演したり、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の日本人初の親善大使を務めたりしている大阪出身のアーティストです。以前UNHCR関係の外国人スタッフたちと話をしたとき、彼らの口からしばしば故・緒方貞子氏とMIYAVIの名前が聞かれたことを思い出します。

サムライとカリフォルニアロール-歴史と日本食

アニメ・マンガ・ゲーム、そして音楽においては、欧州やアジアに比べて北米出身者の選択が少ないことが特徴的でした。一方、北米出身者が日本に興味を持った最大のきっかけとなったのが日本食です。欧州出身者の24.00%、アジア出身者の22.17%、北米出身者の27.78%の人が選びました。

北米での日本食と聞くと、カリフォルニアロールを思い浮かべる人もいるかもしれません。諸説ありますが、カリフォルニアロールはロサンゼルスの寿司職人であった真下一郎という人が、現地の人たちの好みに合うように開発したものだそうです。あんなものは寿司ではない!と怒る人もいるかもしれませんが、何が日本食かではなく、何が日本食として好まれるかを考えて柔軟な発想に至った職人の心意気がうかがえます。

次に歴史(神社・仏閣等の建造物を含む)について考えましょう。欧州出身者の23.00%、アジア出身者の5.66%、北米出身者の21.30%の人が選びました。アジア出身者があまり選んでいないのが特徴です。「サムライ」「ニンジャ」といったアイコン化されたものから神社・仏閣に至るまで、欧州や北米の歴史とは大きく異なる極東文化が興味の対象になるのかもしれません。

トリップアドバイザーがリリースした「外国人に人気の日本の観光スポットランキング」2016年版のトップ10から神社仏閣だけを引き抜いてトップ5にすると、以下のようになります。

第1位伏見稲荷大社(京都府)

第2位宮島と厳島神社(広島県)

第3位東大寺(奈良県)

第4位金閣寺(京都府)

第5位清水寺(京都府)

同じランキングで日本人が好む神社仏閣ランキングは、以下のようになります。

第1位伊勢神宮(三重県)

第2位高野山(和歌山県)

第3位厳島神社(広島県)

第4位三十三間堂(京都府)

第5位永観堂禅林寺(京都府)

厳島神社以外はランキングが重なっていません。伏見稲荷大社の真っ赤な鳥居、東大寺の巨大な大仏、金閣寺(鹿苑寺)の金色のお寺など、視覚的迫力があるものが好まれるのかもしれません。

日本の歴史や神社・仏閣に興味を持っている外国人と話をすると、意外と私たちの知らない視点から日本を見せてもらえるかもしれませんね。

外国人社員と共通の話題を持つ方法

ここまでで、世界に知られている日本のソフトパワーについて見てきました。最後に、そうした日本のソフトパワーをコミュニケーションの材料にする方法について考えてみましょう。

相手が知っていて興味を持っている日本のソフトパワー

日本で働いている、若しくは日本に留学しているという時点で、少なからずその外国人は日本の「何か」に興味を持っているはずです。ですので、コミュニケーションのための共通の関心事を見つけるためにも、相手が知っていて興味を持っている分野を探していく必要があるでしょう。アニメ・マンガ・ゲームなのか、音楽なのか、あるいは歴史や日本食なのか、そして相手の世代によって「忍者ハットリくん」なのか「鬼滅の刃」なのか、更には日本人とは違う視点や立場でそれらを受け入れている可能性もあります。

ですので、会話をする外国人の出身国で流行っている、若しくは世界的に流行している日本のマンガやアニメの題名やキャラクターだけでもインプットしておくと、そうした単語から会話を始めることができるでしょう。

これを行う上でとても役立つのがGoogleニュースです。外国人との会話でGoogleニュースを活用する具体的な方法については、『外国人とのコミュニケーションに使える最強ツール 』で取り上げます。

因みに、筆者が5年ほど前に出会った韓国人の若者は、「石原さとみが大好きで、彼女と結婚するために日本に来た」と言っていました。彼が今も元気に過ごしていると良いのですが。

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