陸上競技・十種競技の元日本チャンピオンである武井壮さんが、『オトナの育て方』という講演を行った際の映像があります(武井壮さんの公式YouTubeチャンネルで観られます)。その中で武井さんは、「僕が親の立場なら、子どもはインドに行かせて、スポーツはクリケットをやらせます。」と発言しました。
その時、会場には笑いが起こりました。日本のスポーツ教育の話しをしている途中に “インドでクリケット” の話が出てきたので、意表を突かれて笑ったのかもしれません。しかし、これが “野球をやらせてプロ野球選手に育てたい” とか “ヨーロッパにサッカー留学させたい” だったらどうでしょうか?聴衆は笑ったでしょうか?
“インドでクリケット” はもしかしたら、カバディのようなマイナースポーツで、『ウケ狙い』のイメージを持たれるかもしれません。しかし、ご存知の方も多いかもしれませんが、クリケットは野球より競技人口が多い、世界の5大スポーツのうちの一つです。
今回は、スポーツの競技人口を比較して、世界スポーツの『常識』を考えましょう。私たち日本人にとっては意外な常識が見えてくるかもしれませんし、外国の出身者と話す際の話題にもなることでしょう。
サッカーは何位?スポーツの世界競技人口を比較
「世界で最も親しまれているスポーツ」と言うとサッカー(フットボール)がまず思い浮かぶでしょう。アジア、ヨーロッパ、中東、アフリカ、中南米、世界中どこに行ってもサッカーは広く親しまれています。サッカーワールドカップは世界中で放映されますし、それほど強豪国でなくても、熱狂的なサッカーファンが存在する国はたくさんあります。ボール一つあればどこでもできるというのも、人気の理由かもしれません。しかし、以外にも競技人口1位はサッカーではありませんでした。
【1位】バレーボール
日本バレーボール協会がまとめたデータによると、バレーボールの世界競技人口は約5億人です。これはスポーツの競技人口としては1位の数字です。サッカーやバスケットボールに比べて運動量が少ないため、中年やシニア世代でもプレーできるというのが競技人口を押し上げているようです。女子競技として人気が高いのも、それに関係しているかもしれません。
【2位】バスケットボール
FIBA(国際バスケットボール連盟)が公式に発表している数値によると、世界のバスケットボールの競技人口は約4億5千万人です。これはバレーボールに続いて第2位の数字です。日本でも映画の公開に伴って『スラムダンク』が再流行しました。また、平均身長が2メートルを超えるNBAにおいて、八村塁や渡邊雄太のように日本人選手も活躍する時代になってきました。
【3位】卓球
正確な数字は明らかにされていませんが、卓球の競技人口は世界で約3億人と言われています。バスケットボールに次いで第3位の数字です。国際大会では様々な国の選手が上位争いをする卓球ですが、その中でも中国での競技人口がひときわ多いのも特徴と言えるでしょう。
【4位】クリケット
クリケットの競技人口は約3億人と言われています。卓球に次いで第4位にランクインしています。しかし、日本クリケット協会が公表している情報によると、サッカーに次いで第2位ということです。データの取り方によって順位は変動しそうですが、いずれにせよ億単位の競技人口を抱える世界スポーツであることには変わりありません。
クリケットは、英国、オーストラリア、インド、南アフリカ、西インド諸島などの英連邦諸国を中心に人気があり、特にインド、パキスタン、スリランカ、バングラデシュなどの南アジア諸国では、圧倒的な人気があります。まさしく大英帝国が世界に広めたスポーツと言えるでしょう。
【5位】サッカー
言わずと知れた世界スポーツですが、FIFA(国際サッカー連盟)が公表している競技人口は2億6千万人で、これはクリケットに次ぐ第5位の数字です。しかし、サッカーを競技人口第1位とするデータもありますので、これもデータの取り方次第と言えるでしょう。
野球は何位?
それでは、日本ではサッカーやバスケットボールと肩を並べる(昭和世代にはそれ以上かもしれない)人気スポーツである野球の競技人口はどれくらいでしょうか?
IBAF(国際野球連盟)の推計によると、世界の野球の競技人口は約3500万人です。これはゴルフに次いで第8位の数字です。日本人にとっては『生活の一部』と言って良いほどなじみ深いスポーツですが、日本、韓国、台湾、アメリカ、キューバ、ドミニカ等の国を除けば、あまり浸透していないと言えます。ヨーロッパの人と話していると、野球はルールが難しそうだし道具もいろいろ必要なので興味がわかない、と言われることもあります。確かに、サッカーと野球の違いはそこにあるかも知れません。
スポーツを選べる国日本
この記事では、スポーツの世界での競技人口を比較しました。上位にランクインしているスポーツの中で、私たち日本人になじみが無いのはクリケットくらいかもしれません。ある意味日本は、『スポーツを選べる国』と言えます。
多くの子どもたちは何万円もする装具をそろえて少年野球チームに入ります。サッカー、バスケットボール、空手や柔道など、子どもの頃から多くのスポーツに親しむことができます。国民の殆どが水泳施設を利用でき、スケートやスキーも盛んです。布を丸めた “サッカーボール” を子どもたちが裸足で蹴っている国に比べると、まさしく日本は『スポーツを選べる国』です。
一方、武井壮さんのクリケットの話しは、私たちの『常識』を拡げてくれます。私たちが慣れ親しんでいる野球の方が、実はマイナースポーツだったと気付かせてくれるのです。続く記事では、プロスポーツ選手の年収を比較して、更に『常識』を拡げてみましょう。
グローバルタレントの力で日本企業の海外進出をサポートする【株式会社PILOT-JAPAN】代表。及び、多言語Web支援を行う【PJ-T&C合同会社】代表。キャリアコンサルタントとして500名以上の留学生や転職を希望する外国人材のカウンセリングを行ってきた。南アジア各国に駐在、長期出張経験があり、特にネパールに精通している。