外国人社員は、なぜ日本で働くのか?何を喜びとして感じ、何に不満を抱いているのか?外国人留学生の就職支援や外国人社員の転職支援に携わるソーシャライズが”ホンネ”に切り込みます!
※写真はイメージです。
私はカイロ出身で、カイロ大学で1年日本語の勉強をしていました。2012年に入学したのですが、2013年に母国であったクーデターの影響で日本語の勉強は一年しかできなかったです。そんな状況の中、2014年に東京外国語大学に1年留学をして、その後エジプトに戻りエジプトの大学を卒業したのちまた大学院生として、再来日しました。2018年10月に卒業しましたが、その後は地獄みたいでした。(笑)これが私のバックグラウンドです。
大学院2年生の時に日本でもっと住みたいと思い、就活をすることを決めました。
まず、外国人の求人はどんなものがあるか軽い気持ちで調べていたのですが、2018年の3月から本気で説明会などに参加し始めました。
しかし、実際の自分の行動はかなりひどく、私のやり方はかなり間違っていたと思います。
日本人就活生と同じように不格好な黒のスーツに身を包んで、髪を結んで、説明会に日本人と同じつもりで参加したんです。でも、こういったやり方はお勧めしません。後悔します(笑)。
説明会に参加し始めたらみんな会社の人は「日本はこれから人口が減るから、外国人が日本企業に就職しないと日本社会がなくなるのでぜひうちの会社に入ってください」など励ましの言葉などをたくさんもらったのですが、実際に応募したら、じゃあSPI受けてください、とか適性テスト受けてください、日本語テスト受けてください、とか私の能力以上の企業からの条件があって、企業に入りたいし、企業側も採用したいのに、固い考え方のまま「SPIは受けないといけない」とか「難しいトピックでのグループディスカッションなどをやらないといけない」というところがたくさんありました。
5月ごろから外国人向けの就職イベントに参加し始めたのですが、そのイベントはほとんどの会社が飲食やホテルなどのサービス業がほとんどで、私のやりたいことができる環境とは全然違ったんですね。さらに、就職イベントに参加していた企業のほとんどは採用対象の国籍すらも決めていました。ほとんどはアジア系の国籍に限定していて、エジプト出身の私にとっては本当に厳しい環境でした。アジア人には日本人にも人柄に対するイメージがあるのでしょうが、エジプトに関しては「みんなピラミッドとかファラオとかそういうイメージしかないのかな」という感じでした(笑)。なので、その他もろもろの条件も含めて結果的に企業とのマッチがうまくいきませんでした。
そういったこともあり、その方法はやめて卒業一か月前という直前に、オンラインで外国人向けの求人サイトで仕事を探し始めたんです。そうしたら、オンラインで履歴書を見せたらたくさんのオファーが来たんですね。そういうサイトでは英語と日本語で履歴書を見せられるし、求人情報もどちらの言語でも見れるのでたくさんのオファーを得ることができました。そこから10月くらいに1年後就職の内定をもらいました。でも、同時に難しい問題もありました。それは、ビザと在留資格の問題でした。
私は大学院生として日本に来ていたので留学生のビザは2年間しかとらなかったんです。なので2018年の9月23日に期限が一度切れることになっていたんですが、私の卒業式は10月1日だったんです。つまり、1週間のビザなし状態が発生することになります。しかしそれは日本の制度上あり得ないので、大学の留学生課にいってビザの延長について相談したんですが、「3月4月まで授業があれば、大学はビザをサポートできるけれど1週間だけの場合はサポートできない。ビザがない期間は1週間だけだから自分で何とかしてください」といわれました。どうすればいいか聞いたところ「特定活動のビザを申請してください」といわれました。
その話を受けて入管に行ったら、そちらでも「卒業証明書がないと特定活動のビザを発給することはできない」といわれて結局特定活動ビザにも応募できなかったんです。なので、解決するにはどこかの会社に就職してビザの更新をしなければならなかったのですが、大学といろいろ話して、結局卒業見込ではなく、卒業要件を満たしていることを示す「卒業見込」より上の書類を特別に作り、留学生ビザが切れる3日前に入管に再度申し込んだら、「検討する」ということで受理されました。
通るかどうかとても不透明で、在留カードなしでの生活が2か月続きました。入社してもそのビザ関係の手続きをやっている途中なのでほかの労働ビザの申請もできないんです。すごくストレスでした。結局11月に特定活動ビザをもらって1週間後に就労ビザを応募しに行ったのですごく大変でした。
私が選んだ会社はダイヤモンド販売の会社でした。製造部門で働いていてダイヤモンドのことを何も知らない私にとっても、とても興味深い職場だったのですが、正直に言うとブラック企業でした。というのも、特にジュエリーではなく石のダイヤモンドとなるとダイヤモンドは日本では少し売りにくいんですね。で、私が働いていた会社はそういうジュエリーではなく石のダイヤモンドを取り扱っている会社だったんです。なのでダイヤモンドの産地からはフォーマルな形では日本には入ってきていないので海外に売るんです。日本から売って海外、特に中国でオークションをしているんですが、この会社は外国人を採用して観光ビザで仕事をしに行くということを常習的におこなっていたんです。
それは法的にかなり黒に近いグレーで、適正なビザではなく観光ビザで仕事するのは危険だと思いました。さっきも言ったように、ビザのことですごく大変な思いをしたので、簡単にそういった違法行為をしたくなかったんです。なので、それまで3か月その会社で仕事のことを勉強していたのですが、すぐに会社自体をやめました。たぶんそういう、外国人を利用する会社っていうのはたくさんあると思うのでそういうところにはほかの人には気を付けてほしいです。
いわゆる就活をするのはやめました。友達に相談するのが一番いいと思って仕事を紹介してもらうように頼みました。そして、友達の一人がその人自身も務めている会社を紹介してくれるということでそこで働くことに決めました。やはり外国人の友達に紹介されたということもあって前の会社のようなこともないので、すごく安心して入社することができました。会社の人たちも歓迎してくれました。そこで今でも働いています。
今の会社は従業員とバイトを含めて25人ほどの小さい会社です。スマートフォンに関係する通信機器を扱っている会社です。面接は日本語でしたが、外国人向けのサービスを行っているので使う言語は英語なので仕事にはストレスがないです。ほかの日本人の人もある程度英語ができるのでとても働きやすい環境で、仕事内容でもぜんぜん困っていません。
良いところとしては、最初はみんな名の知れた大きな企業に入りたいと思うかもしれませんが、小さな企業だと、みんな仲良くできるし、みんなも自分のこと、もっと具体的に言うと外国人材としての魅力やできること、反対にできないことも把握しているので、それはとてもありがたいです。大きな会社だとほとんどの人と話す機会がないので仲間外れのようになることもあるかと思います。なので、個人的には小さい企業のほうがお勧めです。
2番目のいい点は、私の仕事はさっき言った通り今ほとんど英語で行っています。私はネイティブではないけれどとても歓迎してくれて、英語での仕事を任せてくれてとても嬉しかったです。
3つ目は残業代が出ること。当たり前かもしれないけれど、30時間残業しないと残業代をもらえない会社とか、残業がないと契約書には書いてあっても実際には残業がある企業も日本にはたくさんあるので、私の会社は「残業があるけど、その分の残業代は出す」と明記してくれたのでありがたかったです。会社の人たちはみんな優しいので、外国人であるからといって疎外感を感じることはないです。年齢層も比較的若めなので、考え方や上下関係をすごく気にする必要もないのでとても過ごしやすく、自分の悩みなどを社長に直接言うこともできます。
反対に悪い点は、男女比率の問題が最初に挙げられます。社長を含め、上司はみんな男性です。私が日本社会で気づいたことの一つは、やはり女性はあまり社会進出が進んでいないことです。前の会社でも今の会社でもほかの外国人の友達が勤めている会社でも、「女性の上司」や「女性マネージャー」はあまりいないです。自分の会社だけではなく日本全体でもそうなのだとしたらそれはとても問題だと思います。
次の悪い点は、有給が10日間しかないことです。とてもびっくりしました。そんなに有給が少なくて、日本人はどうやって生活しているんだろうと思いました。給与をもらっても何に使っているのかなって。旅行もできないし、何もできないですよね。風邪や病気の休みの時もこの10日間から引いているので私にとってはこの休みの日程は足りないです。私はあまり日本の会社のシステムについてよくわからないのですが、企業の規模にもよるのかなと思っています。
3番目は外国人だと「一時的な扱い」を受けることです。これは例えば女性だと自分の意志に関わらず出産や結婚のことで会社の中であまり大きな仕事を任されなかったり、長期的なキャリア形成にあまり協力してもらえないことがあります。これは外国人に関しても同じことが起こっていて、「外国人は海外旅行に沢山いく」とか、「すぐに自国に帰る」という風に思われているので会社に入ってもそんなにいろいろ仕事について教えてくれないという現状があると思います。私は女性で外国人だからその障害が2つもあって、私の能力と実際にやっている仕事には差があるなと感じています。
お勧めなのは、やはりいわゆる「就活」はしないでください。日本のやり方ではなく、あなたの個性を把握して自信をもって自分のやりたいことに基づいて会社を探してください。説明会でもジョブフェアでもインターネットでも探してせっかく日本にいるので、日本人みたいに就活するのはお勧めしません。たとえ日本語が上手であって能力がいろいろあっても日本のマナーがわかっていても、「あなたは日本人じゃないから」日本人と同じ感覚で仕事を探さないほうがいいです。
2つ目は本当に入りたい会社は最初に応募しないほうがいいです。最初はあまり興味のない会社を受けて、面接でどういう質問が来て「日本の会社はどういう人材が欲しいのか」ということを勉強したうえで、興味のある会社に応募したほうがいいと思います。皆さんンお国とは絶対に違う価値観や社会なので、自分の考えていないことがたくさんあると思います。だから練習としてあまり興味のない会社に応募してください。
3つ目はリクルーティング会社とかたくさん使ってみてください。ソーシャライズのような会社にいって「仕事をどこで見つければいいですか?」とか「仕事を紹介してくれませんか」と聞いてアドバイスをもらってください。
あと、就活にはインターンシップとバイトでの経験がとても大切です。留学では遊ぶことも多いと思いますが、バイトとかだと、日本の会社の考え方やホウレンソウなどの常識が学べると思います。面接に行くとき、面接官があなたのマネージャーやボスになるかもしれないので、それを考えて行動したほうがいいです。会社に入ることより、あなたが会社に合うかどうか、面接官の話すことをよく聞いて、どういう質問をされているとか、どういう考え方を面接官が持っているかということに注意を払った方がいいです。そこを気を付けていないと、会社に入った後に後悔すると思うので「会社に入りたい」ということで盲目にならず、面接官といい人間関係が築けるかどうか常に見定めることを頭の中に入れておいてください。
あと、内定をもらってもすぐにサインをせずに、日本人の友達などにその内定先や契約内容がいいかどうか相談してください。例えば残業代とか年金とか、税金とか、ボーナスとかその辺もよく見たほうがいいと思います。一番いいのは日本人の友達と内定の契約内容を確認してからサインをすることです。
外国人雇用に関する綿密な調査と積極的な情報発信を手掛ける新メンバー。『グローバル』や『ダイバーシティ』という単語がメディアを踊る中、外国人を頼れる仲間として雇用する企業・団体が増えていかない現状に課題を感じ、海外で過ごしてきた自身の経験も活かしながら記事を書いています。