いつどこにいても、世界中のニュースを読んだり視たりすることができる時代になりました。また、世界中のありとあらゆるコトやモノについて、簡単に情報を得られるようになりました。皆さんはどんな媒体を使っているでしょうか?
日本の大手新聞社も、日本語版と英語版の両方を公開しています。また、GoogleニュースやYahoo!ニュースなど、それぞれの地域・言語のニュースを纏めている媒体もあります。そしてWikipediaは、世界中のコトやモノについて瞬時に(ある程度)正確な情報を与えてくれます。
今回は、筆者が最強のコミュニケーションツールだと実感しているGoogleニュースとWikipediaの賢い使い方をご紹介します。これは、10年前中途半端な英語しか使えなかった筆者が、ネパールのカトマンズで多国籍スタッフたちとコミュニケーションを取るために使っていた、サバイバル・コミュニケーション・テクニックです。
とあるアメリカ人スタッフとの攻防
2012年6月の朝、私は少し憂鬱でした。その日は一日中、とあるアメリカ人スタッフと一緒に仕事をすることになっていました。その頃までに私はネパール語会話を習得し、同僚の多国籍スタッフたちも、日常会話はネパール語と英語を混ぜて行っていました。しかし彼は、全くネパール語を習得しようとせず、しかも常に高速のネイティブイングリッシュで喋っているのです。まるでアメリカ英語が世界で唯一の言語であるかのように。
当然皆、彼とのコミュニケーションには苦労していました。私たち非英語ネイティブはもちろんのこと、英語ネイティブであるはずのオーストラリア人スタッフも『私のオーストラリア訛りを馬鹿にしてくる』と落ち込んでいる始末です。そんな彼と一日中一緒に仕事をすることになった私は、とある秘策を実行します。
アメリカのGoogleニュースをチェック
先ず朝一番に会話の主導権を握ろう、その後は彼に喋らせておけば良い。そう考えた私は、前日の夜にGoogleを開きました。設定画面から位置情報をニューヨークにします。続いて言語設定を英語にします。そのうえでGoogleニュースを開きます。
そうするとアメリカのトップニュースが表示されます。政治などの議論を呼びそうな話題を避けて、芸能やスポーツをチェック。『トム・クルーズがケイティ・ホームズと離婚』『タイガー・ウッズがスキャンダルを乗り越えて3年ぶりに優勝』等々、話題になりそうなニュースが並んでいます。その中から5つくらいをピックアップしてメモしておきました。
Wikipediaをチェック
次に開いたのはWikipediaです。
彼はアーカンソー州の出身でした。もちろん私は行ったことがない場所です。そこで、英語版のWikipediaでアーカンソー州を検索してみました。
自然が豊かな州で、ブランチャード・スプリングス洞窟やワシタ国有林などの名所があるようです。出身有名人で話題が作れそうな人は、NBAでマイケル・ジョーダンと最強のコンビを組んでいたことで知られる、スコッティ・ピッペンがアーカンソー州出身であることがわかりました。他にも、ダグラス・マッカーサー元帥もアーカンソー州出身のようですが、これは触れないほうが良いでしょう。
これでネタは揃いました。あとはこれらのネタを英語で上手に振れるように練習して、翌日を迎えます。
トム・クルーズが離婚するらしいね
翌朝、彼と集合した私は開口一番こう言いました。「おはよう。ニュース見たかい?トム・クルーズが離婚するらしいね」。
これで反応が無ければ、タイガー・ウッズ、それでもだめならアーカンソー州とスコッティ・ピッペンと、話題のネタ振りは十分用意していたのですが、彼はこの最初のネタでじゅうぶん過ぎるほど喋ってくれました。相変わらずの早口で、ご機嫌に。
その後は、彼が喋っているのに合わせて、適当に相槌を打っていれば問題ありません。そのままの自然な流れで、「じゃあ、仕事始めようか」と言って業務開始です。私が発した言葉は、「おはよう。ニュース見たかい?トム・クルーズが離婚するらしいね」だけだったのですが、彼の中で私は『コミュニケーションを取りやすい人』とみなされたようで、私たちの関係はとても良好でした。その後いろいろと頼られて面倒だったのは、今となっては良い思い出です。
世界各国のGoogleニュースとWikipediaを活用する
この方法は、簡単にコミュニケーションを取ることができるだけでなく、世界のいろいろな国や街について知ることができるため、本当にお勧めです。
その後も私は、オーストラリア人スタッフと話すときには山火事のニュースと家族の安否、イギリス人スタッフと話すときはロンドンオリンピック関連など、その日会う相手の出身国とニュースについて、十分な知識を蓄えてコミュニケーションを取るように心がけました。そのおかげで、本当に中途半端な英語しか話せなかったにもかかわらず、『英語でコミュニケーションが取れる人』とみなされるようになりました。
もし外国人があなたの地元の情報を知っていたら
逆の立場に立ってみると、この有効性が良くわかります。
例えば、あなたが石川県出身だとしましょう。日本に来たばかりの、日本語がまだ上手ではない外国人が、「兼六園、写真でミマシタ!!とってもキレイ!!イキタイデス!!」と言ってきたらどうでしょうか?兼六園に10年以上行っていなかったとしても、なぜ日本に来たばかりの人が兼六園を知っているのかという驚きと、兼六園の魅力を正しく教えてあげなくては、という謎の使命感に駆られて話し始めるかもしれません。
あるいは、あなたが岩手県出身だとしましょう。同じく「Shohei Otani~!!!」と言われたら、大谷翔平に会ったことが無くても嬉しくなるのではないでしょうか?
このように、トップニュース、自分の街の名所や名産、有名人などは、話しのネタになるだけでなく、相手が自分に関心を持ってくれているという喜びにも繋がります。
外国人社員の出身地について調べてみましょう
もしあなたの職場に外国人社員がいて、どのようにコミュニケーションを取れば良いかわからない場合は、その人の出身地のニュースをGoogleニュースで調べてみましょう。そして、その人の出身地をWikipediaで調べてみましょう。
もしその人がベトナムやネパールなど、私たちが全く読めない言語の国出身であるなら、Googleの言語設定は英語で構いません。位置情報をハノイやカトマンズに設定し、言語を英語に設定して、Googleニュースを開きます。ベトナムやネパールの最新ニュースをいくつか見つけることができます。
もし自然災害や大きな事件が起きていれば、「こんなニュースを見たのだけれど、家族は大丈夫?」と声を掛けるだけでコミュニケーションが取れます。思い返すと私自身も、カトマンズに到着した2011年9月頃には、会う人皆に東日本大震災のことを心配され、「こんなところで仕事をしていて良いのか?今は日本の方が大変じゃないのか?」と声を掛けてもらっていました。
今回は、GoogleニュースとWikipediaを使用して会話のネタを探す、というコミュニケーションテクニックを考えました。もちろん、日本で働く外国人社員が、日本語や日本文化を学ぶ必要があるというのは確かですが、私たち日本人側が相手の国や文化に無知であって良いわけではありません。スマホで簡単に外国の情報を知ることができる時代なのですから、お互いの国について学びあうことで、円滑なコミュニケーションと人間関係を構築することができるでしょう。
グローバルタレントの力で日本企業の海外進出をサポートする【株式会社PILOT-JAPAN】代表。及び、多言語Web支援を行う【PJ-T&C合同会社】代表。キャリアコンサルタントとして500名以上の留学生や転職を希望する外国人材のカウンセリングを行ってきた。南アジア各国に駐在、長期出張経験があり、特にネパールに精通している。