海外現地法人の問題とマネジメント強化策

  • 2017-2-21

近年、国内需要の伸びが将来的に期待できないなか、スピード感を持って(時間を買うという発想で)海外の成長を取り込む狙いなのか、日経新聞等では連日のように、日本企業による大型の海外M&Aの記事が掲載されています。

しかし、友人のアナリストに聞いた話ですと、実際のところ日本企業が海外企業を買収して成功した例は、残念ながらあまり多くはなく、企業の考えとは裏腹に、海外の買収先に足を引っ張られるケースや、現地の法律問題等が後をたたないそうです。

海外現地法人の抱える問題

日本企業のグローバル化が本格的に叫ばれて約30年ほど経ちますが、現実はまだまだ多くの問題がありそうです。

前出のアナリスト曰く問題は大きく2つで、1つ目はガバナンス不足、2つ目は海外企業のマネジメント力不足だそうです。実際に人材業界にいて感じるのは、日本企業による海外現地法人のマネジメントは、ほとんど成功例がないのではないでしょうか。

日本の企業には、海外企業を買収しても、現地の社員を使いこなすマネジメントスキルが不足しています。日本では、阿吽の呼吸とか、なあなあ主義、秘密主義で仕事を進めることが出来ても、海外では、ビジネスのやり方、仕事の進め方が全く違いますので、マネジメントのあり方も大きく違って当然です。

問題の根底にある日本本社における外国人社員の少なさ

それではその2つの問題の根底にある理由は何か? 一言で言えば、日本本社における外国人社員の少なさが原因です。

海外現地法人及び海外企業のマネジメントを、外国人社員に慣れてない日本人が務めるのは、英語を話せるという理由だけでは当然ですが出来ません。英語(言語)は必要条件ではあっても、マネジメントという観点から言えば十分条件ではありません。また理想形でいえば、最終的に海外現地法人はやはりその国の出身者に任せるべきです。実際に現在の海外企業日本法人のトップは日本人がほとんどです。

しかし現実には、日本企業の海外現地法人(特に東アジア、ASEAN、南アジア)のマネジメント層は日本人がほとんどです。さらにコストが高いという理由で、1,000人以上の(ワーカーも含む)社員を抱える現地法人でも、常駐の日本人マネジメント人材がたった2、3人のケースも珍しくありません。さらに中国、ベトナム、タイ、マレーシア等、英語があまり通じない国において現地語を話せない人も多いです。

とはいえ、日本企業は海外企業のマネジメントを苦手とばかりは言っていられません。日本企業は早期に一定数の外国人社員を採用し、企業ロイヤリティを醸成しながら、日本型ビジネス文化・ルールを彼らに理解してもらう、一方で日本人社員には外国人社員とのコミュニケーション、マネジメントに慣れてもらう、そして最終的には海外現地法人を任せられる外国人(母国)社員を育成することが重要なのではないかと、最近多い日系海外現地法人の不祥事のニュースを見て改めてそう思いました。

ガバナンスが綻び、マネジメントが機能しなくなった海外現地法人は一つ間違えれば数億円、最悪の場合は数千億円の損失が生まれます。それを考えると外国人社員の採用・育成にもう少し予算をかけても費用対効果としては悪くないと考えます。

最後に現在主流の現地採用、現地育成(半年~1年間の短期日本出張も含む)では、海外現地法人を任せられる人材はなかなか育たないことも肝に銘じるべきではないでしょうか。

中村拓海

高度外国人材に特化した人材コンサルタント。人材探索から在留資格申請、入社後の日本語教育、ダイバーシティ研修等、求人企業の要望にあわせた幅広いサービスを提供する。また留学生専門キャリアアドバイザーとして東京外国語大学、横浜国立大学、立教大学、創価大学等で外国人留学生の就職支援を行い、80カ国・500名以上の就職相談を受ける。内閣官房、内閣府、法務省等の行政および全国の自治体における発表や講演実績も豊富。

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