人口減少と少子高齢化社会

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おしゃれ、グルメ、異国情緒…。これらの言葉は、古くから「港町」として発展してきた神戸市のイメージを象徴するものでしょう。

しかし、神戸という全国ブランドの陰に隠れ、兵庫県で実は人口減少と少子高齢化が拡大しています。神戸市から西の地域を「播州」といい、中でも西部を「西播」と呼びますが、この地域の高齢化率は30・7%。東北や中四国の県と同レベルかそれ以上になっています。

若者が流出し、高齢化が進む。人口が減ると財政が厳しくなり、行政サービスにかけられる経費も少なくなります。まさに「負のスパイラル」。国も地方創生を掲げて「超高齢化社会」に対応しようとしていますが、地方都市は青息吐息です。

人口=カネの現実

国内外から数多くの観光客が訪れる世界遺産・姫路城を抱える兵庫県姫路市。人口53万人を超え、平成8(1996)年に全国で初めて中核市となった近畿を代表するこの都市に隣接するのが、宍粟市です。「しそうし」と読みます。

市役所前に据え付けられた電光掲示板では、市民向けの情報が数秒ごとに更新されます。そこで「異例の呼び掛け」が始まったのは2月26日のことでした。

「人口減少非常事態」

市は平成17(2005)年に宍粟郡の山崎▽一宮▽波賀▽千種-の4町が合併して誕生。直後の同4月の人口は4万5724人でしたが、年々減少の一途をたどり、27年国勢調査の集計結果(速報値)では3万7792人。この10年間で約8千人減少し、市発足以来初めて4万人を割ったことを受けての非常事態宣言でした。

「人口減少対策に努力してきたが、歯止めがかからない。本当に厳しい状況だ」と福元晶三市長。市町村にとって人口問題が切実なのは、それが「カネ」=普通交付税に直結するからです。
普通交付税は、各地方公共団体の一般財源としての財政の需要額「基準財政需要額」から各団体の税収「基本財政収入額」を引いたマイナス分「財政不足額」に、相当します。

おおざっぱに言うと、この中で、基準財政需要額をはじき出すのに用いられるのが、人口です。
細かく見ていくと、経費が「道路橋梁費」であれば「道路の面積や延長」が、「警察費」であれば「警察職員数」が算出に用いられるのだが、「消防費」「下水道費」「社会福祉費」「保健衛生費」「商工行政費」などなど数多くの経費が人口を、測定の単位としています。
すなわち、人口が減れば減るだけ、国からの交付税が減ってしまいます。

神戸市「5大市」から転落

今年2月、27年国勢調査の集計結果(速報値)で福岡市の人口が153万8510人となり、20ある政令指定都市のうち神戸市(153万7860人)を抜いて5位となりました。神戸市にとっては人口「5大市」から転落したことになります。

久元喜造市長は「人口規模のみを追い求めるのではなく、街の総合力を高めるまちづくりを積極的に進めたい」と努めて冷静な見解を述べたましたが、関係者にとってはややショッキングなニュースでした。

それだけではありません。同国勢調査では、人口100万人以上の大都市は12市で、上位から、東京(特別区部)▽横浜▽大阪▽名古屋▽札幌▽福岡▽神戸▽川崎▽京都▽さいたま▽広島▽仙台。この中で前回調査(22年)から人口を減らしていたのは、神戸市だけだでした。学生が多い半面、就職で東京などへ出ていってしまうためとみられています。

しかし、こうした傾向はすでに26年に顕在化していました。「2040(平成52)年に全国896市区町村が〝消滅〟の危機に直面する」と全国に衝撃を与えた日本創成会議の試算結果です。
同会議の人口減少問題検討分科会が、国立社会保障・人口問題研究所のデータなどを基に、2040年の20〜30代の女性の数を試算。2010年と比較して若年女性が半分以下に減る市区町村を「将来的には消滅するおそれが高い」としたのだが、神戸市須磨区も含まれていました。

「2025年問題」が早くも露呈

人口減少には少子高齢化が伴います。宍粟市と同じ西播のまちの相生市で、その一端を垣間見ました。

とある市立幼稚園。英語の曲を、園児たちが頭、肩、ひざと順番に触りながらリズムに乗せて歌っていた。かたわらには米国人講師。幼稚園から中学校まで、市立園・校の12年間で一貫した英語教育を行おうと、市が今年度からスタートさせた英語教育の授業風景が公開されていました。

しかし、そこにいた園児はたったの7人です。視察に訪れた教育委員会の関係者や取材陣の数の方が多かったです。

「相生に行ったら子育てに得だと思わせたいから」と語るのは谷口芳紀市長。高齢化解消へ向け、子育て世代を確保したいという切実な思いがあふれています。

兵庫県の統計によると、同市や宍粟市など西播の高齢化率は30・7%。内閣府発表の平成26年の都道府県別高齢化率でみると、西播を上回ったのは、秋田(32・6)▽高知(32・2)▽島根(31・8)山口(31・3)-でした。

兵庫といえば、神戸に代表されるように都市部のイメージがあるかもしれませんが、西播の現状は疲弊した「地方」です。団塊の世代が75歳の後期高齢者を迎えて「超高齢化」社会となり、社会保障費の増大と税収の減少で、地方自治体の財政面がさらに苦しくなり「2025年問題」が、一足早く露呈しています。

「先駆的」という足かせ

「人口が減少し、高齢化率が30%になると、公務員をはじめとした行政サービスの担い手も減少する。このことで生じる非効率さは大きな問題だ」
国立社会保障・人口問題研究所の前所長、西村周三京都大名誉教授はこう指摘します。人口が少ないからといって行政コストがその分だけ減るかといえばそうではありません。そうした「非効率さ」が自治体を圧迫し、「深刻な状況になっていく」(西村名誉教授)と警鐘を鳴らしています。

宍粟市では、移住を促進し、空き家と遊休農地の解消に向けて思い切った施策を打ち出した。空き家の利用を希望する人に紹介する「空き家バンク」について、農地をセットにすることを可能とし、その面積は1アールからとしました。
「農地の取引は最低でも10アールから」という規制を大幅に緩和する措置で、農業関係者からの「それでは農地ではない」という反発の声を押し切った施策だが、「市としては『タダでもどうぞ』というくらいの思い」(福元市長)と切羽詰まった状態です。

「地方創生」の落とし穴

こうした中、国は人口減少や超高齢化を乗り切るためとして「地方創生」を掲げています。
しかし、現場にとっては、人口減による歳入の減少といった財政的な制約に加え、地方創生の各施策で支援を要請するのに際して国が定めた条件が、ネックのようです。
「企業とのコラボレーションや、最新の技術を活用するものといった〝先駆的な事業〟でないとダメだといわれる」と吐露するのは相生市の谷口市長。人口減に悩む地域は、雇用不足や高齢化だからこそ先駆的な事業が不足しているという皮肉な状況があります。国から課されたハードルは高いでしょう。

「地方分権といいながらも、なかなか自由が利かない。もっと規制緩和をしてくれたら…」
人口減少・超高齢化という「空前の事態」に立ち向かう地方都市の首長の悩みは深いといえます。

中村拓海

高度外国人材に特化した人材コンサルタント。人材探索から在留資格申請、入社後の日本語教育、ダイバーシティ研修等、求人企業の要望にあわせた幅広いサービスを提供する。また留学生専門キャリアアドバイザーとして東京外国語大学、横浜国立大学、立教大学、創価大学等で外国人留学生の就職支援を行い、80カ国・500名以上の就職相談を受ける。内閣官房、内閣府、法務省等の行政および全国の自治体における発表や講演実績も豊富。

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