ベトナム・フィリピン・インドネシアの生活水準と来日理由を解説

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2024年現在、歴史的な円安を背景として、日本で働く外国人材が減少する事が懸念されています。しかし、そもそも多くの外国人材(特に東南アジア諸国の若い人たち)は、なぜ日本で働くことを選択しているのでしょうか?この記事では、国ごとの来日理由とその背景を紐解いていきます。

ベトナム人の来日理由とは?- 在留資格別に解説

近年最も増加した外国人材は、ベトナム出身の人々です。厚生労働省の報告によれば、2019年時点で外国人労働者は166万人に達し、そのうちベトナム人は40万人以上となり、中国人とほぼ同数になりました。ベトナム人の主な在留資格は技能実習(48%)、資格外活動(留学生の9割以上)、専門的・技術的分野(5万人以上)です。

まず技能実習生として日本で働く背景には、ベトナム経済への送金や日系企業進出が挙げられます。ベトナムで技能実習制度が拡がる理由でその詳細をまとめています。技能実習生の増加は日本の人手不足に対応するためであり、中国人技能実習生の減少に伴い、多くの日本企業がベトナム人技能実習生を受け入れています。

留学生は2008年の「留学生30万人計画」以降急増し、2019年にはその計画が達成されました。日本での留学中は、週28時間以内のアルバイトが可能であり、多くの留学生が飲食店やコンビニで働いています。また、日本企業のベトナム進出による就職先の拡大が、多くのベトナム人留学生にとって魅力となっています。

専門的・技術的分野で働くいわゆる高度人材は、留学終了後にそのまま就職するほか、帰国後に日本企業の求人に応募して直接採用されるケースも増えています。日本での留学経験がなくても、日本企業の現地法人が採用するケースや、日本での技能実習生の経験を活かして働く人も増えています。

それでは、日本でのアルバイトや就職、更にはベトナムでの日系企業への就職は、ベトナム人の若い人材にとってどれほど魅力があるのでしょうか?ベトナムの物価や平均賃金のデータから見てみましょう。

日本とどのくらい違う?- ベトナムの物価、平均賃金などを解説

ベトナムの生活水準を理解するため、平均年収、産業別人口、最低賃金の上昇率、専門別年収ランキングの4つのデータを詳しく見ていきましょう。

まず、ベトナム人の平均年収ですが、ベトナム統計総局によると2022年第2四半期の全国平均月収は約38,000円です。
これはあくまで全国平均であり、大都市圏ではもっと高い給与水準となることが多いです。例えば、ホーチミン市では月収約51,000円、年収約660,000円となっています。

続いて産業別人口ですが、第1次産業(農林水産業)に従事する人口は32.8%で、第2次産業(工業・建設業)が30.9%、第3次産業(サービス業)が36.3%となっています。
日本では第3次産業が67.3%と圧倒的に多いため、ベトナムはまだまだ農業や工業に従事する人が多いと言えます。

2022年7月に平均6%引き上げられた最低賃金は、2013年以降、継続して上昇しています。
この上昇に伴い、労働者の収入も増加していると考えられます。

世界的な人材プラットフォーム『TOPIA』が公表しているデータによると、ベトナムの専門別給与ランキングでは、財務・経理マネージャーが最も高い給与を得ており、職種では日本と同等以上の給与水準になっています。

以上のデータから、ベトナムの生活水準は着実に向上しており、特に都市部や特定の職種では日本と同等、もしくはそれ以上の水準に達していることが分かります。ただし、全体としてはまだまだ発展途上であり、労働者の給与や生活環境の改善が求められています。

フィリピン人の来日理由とは?

続いては、世界一の人材派遣国家と言われるフィリピンの人々の来日理由を見てみましょう。

フィリピンでは10人に1人が海外に居住し、そのうち約18万人が日本で働いています。それらの海外移住者による母国への送金は、フィリピンのGDPの10%を占めています。実はフィリピン人の出稼ぎ先で最も多いのは中東諸国です。中東が選ばれる理由は、就労ビザの取得が比較的容易であることや、単純労働の職種も受け入れられる環境が整っていることが挙げられます。

一方で、フィリピンの人々が日本を選ぶ理由もあります。その1つが治安の良さです。中東では労働環境が劣悪だと言われており、安全性を考慮して日本を選ぶ人も多くいます。また、フィリピンと日本の物理的な距離が近いことも影響しています。日本からは飛行機で片道4時間ほどで帰国できるため、家族との連絡や帰国が比較的容易であるという利点があります。

日本では特定技能や留学生としての受け入れが増えており、日本語能力がそれほど高くなくても働くチャンスが広がっています。特にブルーカラー分野での労働者受け入れが進んでおり、日本語能力に関する要件が緩和されています。

さらに、フィリピンと日本は歴史的に親しい関係にあり、日本の文化や価値観への理解が比較的進んでいます。両国の間には留学生交流や文化交流などが盛んに行われており、フィリピン人が日本を選ぶ際に影響を与えています。

それでは、フィリピンの人たちにとって日本で働くことはどれくらい魅力的なことなのでしょうか?フィリピンの平均年収や成長力を見て考えてみましょう。

日本とどのくらい違う?- フィリピンの平均年収や成長力を解説

2019年のフィリピンの平均年収は約45万円であり、これは日本の平均年収の約1/10に相当します。この差は、フィリピンが発展途上国であり、物価が低いことも要因となっています。実際、フィリピンの物価は日本の1/5〜1/3程度であり、生活費が低いことが平均年収の低さを補っています。

しかし、フィリピンの平均年収は上昇傾向にあります。2005年から2015年にかけては、一家庭あたりの平均年収が1.5倍に増加しました。2020年には新型コロナウイルスの影響で経済が苦境に立たされましたが、2021年には11.8%の成長率を記録し、平均年収の上昇が期待されています。フィリピンは着実に経済成長を遂げており、将来性のある国と言えるでしょう。

日本との比較では、平均年収で約10倍の差がありますが、物価の差を考慮すると生活費の負担は軽くなり、平均年収程度であっても十分な生活水準を維持できると言えます。これらの要素から、これまでは日本を含む海外でのキャリアを志向してきたフィリピンの若者たちが、国内に回帰する可能性も出てくるかもしれません。

インドネシア人の来日理由とは?

日本における外国人労働者の中で、インドネシア人の割合は年々増加しています。厚生労働省の統計によれば、現在日本で働いている外国人は約166万人であり、その中でインドネシア人は5万人程度です。特に、前年比増加率が高いのはベトナムに次いでインドネシアが2番目であり、インドネシア人労働者の数は増加傾向にあります。

インドネシア人は、主に外国人技能実習生制度を活用して日本に働きに来ます。この制度は1993年から始まり、当初は国際貢献を目的としていましたが、現在は日本の労働力確保の手段として利用されています。2019年には特定技能という新しい在留資格が導入され、インドネシア人労働者の受け入れがさらに促進されました。

インドネシア人が日本を選ぶ理由の一つに、他国と比べて日本の給与が高いという認識がありますが、実際には給与面での魅力はそれほど高くはありません。他国の中東やヨーロッパの方が給与が高いため、日本に来るインドネシア人は全体の数と比べてみると少ないです。ただし、日本の労働環境や将来性も考慮して、日本を選ぶ人が増えているのも事実です。

それでは、インドネシアの人々にとって日本の労働市場がどれほど魅力的なのか、インドネシアの平均年収や所得水準のデータから見ていきましょう。

日本とどのくらい違う?- インドネシアの平均年収や所得水準を解説

インドネシアの平均年収は、日本の平均年収と比べるとかなり低く、約40万円程度です。平均月収は約3万円で、日本の約1/10程度に相当します。インドネシアでは経済成長が続いており、将来的には平均年収も上昇する可能性があります。

インドネシアの経済成長の背景には、国内の資源が豊富で人口が多いことが挙げられます。経済成長により、低所得層から中間所得層への転換が進んでおり、中間所得世帯は過去20年で約40%増加しています。

ただし、インドネシアは収入の幅が広く経済格差も大きいため、自分一人の収入では生活が成り立たない人も多く、特に若い世代では両親の家に住んでいたり、交通費を親に出してもらっていたりする人も多いと言われています。

インドネシアの年収は、経験年数によって大きく異なります。新卒からシニアまでの各レベルごとに平均年収が異なり、経験を積むことで収入も増加する傾向があります。インドネシア人の採用で知っておくべき現地の給与水準ー最低賃金とデジタル人材で詳細をまとめていますので、ぜひ併せてご覧ください。

また、インドネシアの世帯所得分布は、低所得世帯が27.4%、中間所得世帯が70.3%、高所得世帯が2%となっています。近年では、中間所得世帯の割合が急増しており、インドネシアは2020年に上位中所得国に昇格しましたが、経済成長の停滞や低迷の可能性もあるため、政府はインフラ開発や教育、福祉に投資し、高所得国を目指しています。

ベトナム・フィリピン・インドネシアの生活水準と来日理由 – まとめ

今回の記事では、ベトナム・フィリピン・インドネシアの人々の来日理由と、それぞれの国での生活水準を見ることができました。平均年収では、依然として日本とは大きな差があるとはいえ、いずれの国も急速に経済成長しており、職種や分野によっては高い年収を得る人たちも多くいます。

また、日本よりも賃金水準の高い国に人材が流れていく状況も無視できません。必要な人材を確保するため、日本は賃金も含めた様々な魅力を創り出していく必要があるでしょう。

グローバルタレントの力で日本企業の海外進出をサポートする【株式会社PILOT-JAPAN】代表。及び、多言語Web支援を行う【PJ-T&C合同会社】代表。キャリアコンサルタントとして500名以上の留学生や転職を希望する外国人材のカウンセリングを行ってきた。南アジア各国に駐在、長期出張経験があり、特にネパールに精通している。

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