「全入時代」に突入する日本の大学
少子化により、2009年より日本の大学は「全入時代」に突入していると言われています。つまり、大学への入学希望者総数が入学定員総数を下回る状況となっているのです。大学に進学するということだけを目的にし、一定の得点ができれば、受験生は必ずどこかの大学に進学できるのです(もちろん難関校は相変わらず高い倍率となっていますが)。
大変なのは、学校経営を維持する学校法人のほうです。定員を割り込んでしまえば、本来、学校運営を維持できるだけの資金が集まらないこととなり、事実、廃校になってしまったり、合併したりする大学のニュースが後を絶ちません。
そうした状況下で、大学は生徒数を確保する主な施策として、以下の3つを行っています。
- 女子大学の共学化
- 社会人学生の受け入れ
- 留学生の受け入れ
これまで受け入れてこなかった人間を対象に、受入れ体制を用意して生徒数を確保する努力を各大学とも必死に取り組んでいます。
ここでふと感じるのは、大学だけではなく、企業も採用活動を行うにあたって、同じような傾向に少しづつなっているのではないかということです。
企業の採用活動における努力
- 休職・退職した女性の再活用
- シルバー人材の再雇用
- 留学生人材の活用
「1.」に関しては、性別の差はあれ、これまで体制が整っていなかった異性を受け入れる努力をするという点では共通していると言えます。
「2.」についても、いちど卒業(退職)した高い年齢層の方を対象に受け入れるという意味では、考え方は同じです。
「3.」に関しては、日本国内に限らず、対象範囲を世界に広げるという点で、まったく一緒の考え方になっています。但し、単純に人材不足という意味だけではなく、海外進出、インバウンドサービス、多様性による活性化というポジティブな意味合いが強いですが。
大学の取組みの成果
きっかけはいずれも少子化、グローバル化という現実からではありますが、企業よりも先に大学のほうが課題に直面し、解決の施策に取り組んでいます。その努力の成果として、いち早く課題解決に努めた大学は、どのような成果を得られているのでしょうか?
生徒数が確保できたという点は当然にして、多様な人間を受け入れたことによって、考え方や物ごとの受け止め方の違いなど、様々な価値観に卒業生は触れることで、後の実社会でも大いに役立っていると言われています。
特に海外から留学生を受け入れることで、日本人の学生にも
- 簡潔かつ論理的に会話するトレーニングになった。
- 異文化の価値観や思考パターンを知ることで意味を多元的に捉えるようになった。
- 国内にとどまらない新しい人脈を得ることが出来た。
- 活きた外国語を話せるようになった。
という効果がもたらされています。
当社とお付き合いさせて頂いている企業においても、外国人材(特に高度外国人材)を採用された企業が上記と同様の効果を得ています。単純に労働力不足を補うために受け入れるのではなく、また使い捨てにするのではなく、上記のように、真に日本企業ひいては日本社会に良い効果をもたらしてくれるいい前例として、大学の取組みを参考にすることは、今後の外国人採用の指針となるように思います。
ダイバーシティを促進する有効な施策の一つとして、海外人材の採用をいまいちど検討してみてはいかがでしょうか。
高度外国人材に特化した人材コンサルタント。人材探索から在留資格申請、入社後の日本語教育、ダイバーシティ研修等、求人企業の要望にあわせた幅広いサービスを提供する。また留学生専門キャリアアドバイザーとして東京外国語大学、横浜国立大学、立教大学、創価大学等で外国人留学生の就職支援を行い、80カ国・500名以上の就職相談を受ける。内閣官房、内閣府、法務省等の行政および全国の自治体における発表や講演実績も豊富。