日本国内の大企業においても、①グローバルビジネスへの適応 ②多様性を活かした組織活性 ③少子高齢化対策などの理由で外国人を正社員として採用する流れが少しづつではありますが、確実に広まってきています。
しかし、日本全体の労働者における外国人比率はわずか2%(上場企業においては0.3%)であり、ドイツの12%、アメリカの16%、イギリスの8%に比べ、遥かに少ないのが現状です。もちろん日本の国民性や地勢学的なもの、また今までの人口動態もありますが、これからのグローバルビジネス、少子高齢化を乗り越えるためには、単純に移民という考えではなく、アメリカやヨーロッパとは違う、日本独自の外国人活用方法を本格的に模索・構築しなければいけない時代に入ったと思われます。
日本と似ている?ドイツの状況
この中で、日本に歴史的背景、国民性が似ていると言われるドイツの高度外国人材をめぐる状況を少し考えてみたいと思います。ドイツも日本と同じく深刻な少子高齢化に直面しており、ある調査によるとドイツの人口は現在の約8,200万人から2050年までに5,900万人までに減少するといわれています。さらに現在の15歳~64歳までの労働人口を維持するためには年間で相当数の外国人受け入れが必要だという結果も出ています。
ドイツは戦後の高度経済成長期にトルコや東欧などからの移民を積極的に受け入れてきました。先述した人口8,200万人のうち1,500万人が「移民の背景(ドイツに居住している外国人、ドイツで生まれた外国人等)」を持つ住民となっています。ヨーロッパ各国に見られる少子高齢化の状況と相まって、5歳未満の子供の場合は34.4%が「移民の背景」をもつとされており、おそらく、ドイツでは今後も「移民」とともに「移民の背景」をもつ住民も増えていくでしょう。
移民に関しては犯罪や貧困の問題が存在しているのも事実ですが、一方でドイツの経済成長を支えてきたこともまた事実です。移民及び移民二世、三世の中から多くの起業家が生まれGDPや雇用、産業のイノベーションにも多大な貢献をしています。
単なる労働力としてだけではない外国人材
日本では、特にこの10年、少子高齢化による労働力不足を補う意味も含め(多様性という面では本質的には違う意義もあります)女性や高齢者の労働力を促す面がありました。そして、現在は外国人に労働力としての役割を大いに期待しています。この判断が正しかったのか正しくなかったのかは半世紀以上も先にならないとわからないでしょうが、個人的には単純に労働力不足を補うという意味だけではなく、日本企業の海外事業強化、インバウンドビジネス拡大、イノベーション創出、組織活性、多様な視点・アイデアをもたらすなどといった価値も生み出してくれるだろうと期待しています。今までのような、外国人は「怖い」「めんどくさい」「日本人の雇用を奪う存在」などのような狭い考えでは、日本企業、ひいては日本社会の活性化・成長は難しいのではないでしょうか。
ラグビーワールドカップから学ぶ日本の採用戦略
今後の日本企業の高度外国人材戦略(採用戦略)はどうあるべきか。そのひとつの示唆が、ラグビー日本代表の姿だと思います。ラグビーワールドカップ2015において日本代表は歴史的な3勝をあげました。その偉大な達成は、桜のエンブレムを胸につけて日本代表として戦った外国人の存在なしではあり得ませんでした。ちなみに、この時のヘッドコーチはオーストラリア人です。
この大会において五郎丸選手はツイッターにこう書いています。『彼らは母国の代表より日本を選び日本のために戦っている最高の仲間だ。国籍は違うが日本を背負っている。これがラグビーだ。』
代表という箇所を「企業」に、日本という箇所を「企業名(御社名)」に、そして最後のラグビーの箇所を「グローバルビジネス」に変えれば、まさに当社が目指すべき世界がそこに浮かび上がってきます。
高度外国人材に特化した人材コンサルタント。人材探索から在留資格申請、入社後の日本語教育、ダイバーシティ研修等、求人企業の要望にあわせた幅広いサービスを提供する。また留学生専門キャリアアドバイザーとして東京外国語大学、横浜国立大学、立教大学、創価大学等で外国人留学生の就職支援を行い、80カ国・500名以上の就職相談を受ける。内閣官房、内閣府、法務省等の行政および全国の自治体における発表や講演実績も豊富。