人手不足の恐ろしい結末?

  • 2017-5-17

厚労省の国立社会保障・人口問題研究所は、4月10日に「将来推計人口」を公表しました。人口が減少しているという事実は、ほとんどの人が認識していると思いますが、その中身を今一度しっかり考えることが大切だと思います。

過去15年間で34歳以下の人口は約22%減少し、60歳以上の人口は43%も増加しました。そして、生産年齢人口(15歳~64歳)は、今後50年間で40%も減ってしまうと予想されています。人口推計は、最もハズレが少ない統計ともいわれており、推計通りに人口が推移する可能性は高いでしょう。人々のライフスタイルや人生における価値観は変わり、企業はそれにともなって事業内容や売り方を変えていかなければなりません。人材採用・育成のあり方にも大きな影響を与えるでしょう。政府は時代に適した税制改革や年金等の制度設計が必要です。いずれにしても、今までと同じやり方は続けられない、ということです。

ファストフード店のワンオペ問題、24時間営業からの撤退、省人化などの影響は既に出てきています。飲食、宿泊、介護、建設、ITなど幅広い分野において人手不足は発生しています。今後はホワイトカラーの事務職も、深刻な人出不足に陥るでしょう。人口減少・労働力不足の本格化が、日本経済に及ぼす影響について具体的な施策が必要です。もし、生産性の向上等によって人手不足を補えない場合、現実として生産を縮小、所得の減少、最悪の場合清算する企業がますます出てくる可能性は十分に考えられます。

と、数々の著書やウェブニュース、テレビなどでは悲劇の未来に焦点があてられがちですが、実際のところ前向きに評価できる面もたくさんあるだろうと私は考えています。その一つに、多様化と個の尊重があげられます。

現状、日本社会は外国人に対して不慣れです。過去の記事『半径3メートルの異文化体験』にも書いたとおり、日常的に接する範囲に外国籍の人があまりいないので、その実態がつかめていません。しかし、今は観光客、留学生、就労者として外国籍の人への門戸をどんどん開放していっているので、近い将来至るところに外国籍の人がいて、一緒に生活をするようになります。日本人と結婚する人、永住権を取る人、日本国籍に帰化する人も増え、またその事実を公にしやすい雰囲気もできるでしょう。そうなると、「外国人」としてわざわざ認識・区別しなくてもよくなります。そういう抽象的なレッテルで人を捉えるのではなく、目の前の一個人として接する姿勢が強くなります。インターンシップでやってくる最近の大学生や高校生と接していると、一部は既にそういう感覚になっているようです。

一緒に暮らす仲間として「外国人」が増えていくと、場所によっては、日本人の方が少数派となることも考えられます。それが望ましいかどうかは各人の意見でしょうが、仮に望まなかったとしてもそうなります。グローバル化は選択できません。まさに自らが変わることを強制されます。その環境に適応できないことがリスク(“危”)となり、適応できることはチャンス(“機”)となります。おそらく、多様化の時代に自らを最適化できる力こそ、今後最も求められるソフトスキルなのでしょう。

人手不足による労働力の供給制限、成長鈍化。税収の低下、医療・福祉への歳出増加、年金制度の破綻。いずれも将来をリスク(”危”)として認識しています。「仕方ないから外国人を入れよう」「入れるからには面倒見なきゃ」「とりあえず、最低限やるべきことを調べよう」正直なところ、この考え方が今の世の中の主流でしょう。しかし、「外国人」の物理的な人数が増えれば、チャンス(”機”)として物事を捉え、主体的に行動する人が増えます。私の周りにも、企業、政府、個人、所属をこえてそのような人が存在しています。例えば、企業においては有能な外国人の採用手法や戦力化・定着化させる為の研修・育成法の構築に着手しはじめるところがどんどん増えています。外国人の採用はしなくとも、日本人社員へ英語教育や異文化理解力を備えさせるなどの準備をする会社もあります。何にせよ、”危機”の中からどちらを掴み取ろうとするのかが今問われれているのでしょう。

中村拓海

高度外国人材に特化した人材コンサルタント。人材探索から在留資格申請、入社後の日本語教育、ダイバーシティ研修等、求人企業の要望にあわせた幅広いサービスを提供する。また留学生専門キャリアアドバイザーとして東京外国語大学、横浜国立大学、立教大学、創価大学等で外国人留学生の就職支援を行い、80カ国・500名以上の就職相談を受ける。内閣官房、内閣府、法務省等の行政および全国の自治体における発表や講演実績も豊富。

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