こんにちは!インドネシアで日系企業に勤めています、小林です。
インドネシアは世界一イスラム教徒が多い国と言われており、日々の生活にイスラム教の文化が根付いています。今回はイスラム教徒の方と働く際に事前に理解しておきたい点についてお伝えします。
そもそもイスラム教徒ってどのくらいいるの?
「正直、イスラム教徒の方との関わりが今まで無かったし、イメージもつかない」なんていう方もいらっしゃるのではないでしょうか?
早稲田大学の店田廣文氏がまとめている「世界と日本のムスリム人口 2018年」によると、日本では2018年時点で15万人のイスラム教徒(ムスリム)の方がいるとされています。日本の人口と比べるとその割合は1%以下。そのため、馴染みが無いのも当たり前かと思います。
一方で、世界規模で見ると2017年時点での世界のイスラム教徒の数は18億1396万人、これは世界人口の24.0%に上ります。2011年時点でイスラム教徒人口の増加率は1.78%と、世界人口増加率の1.18%と比べると高い数字を保持しており、今後も世界規模でイスラム教徒の方が増えていくのは間違いないでしょう。国別で見ても人口ボーナスの国の多くがイスラム教徒を抱えています。
こういった数字から見ても、日本で今まで馴染みが無かった方でも交流が増えていく可能性はとても高いといえるでしょう。筆者もインドネシアに渡るまでは知らないことだらけでしたが、日々一緒にチームとして仕事を出来ています。
それでは本題の「外国人採用で知っておきたい宗教や文化理解(イスラム教の場合)」に入っていきましょう。
食事
「イスラム教」と聞くと、アルコールを飲まない・豚を食べないといったイメージをもつ方も多いのではないでしょうか?最近はハラルマークのついた食品やレストランも日本で増えてきていますね。イスラム教徒が多い国では、スーパーやレストランなどで多くの食品にハラルマークがついています。
イスラム教の教えのひとつとして、アルコールや豚肉の摂取は禁じられ、イスラム法に則ったハラルマークのついた食品を摂取するようにされています。しかし一言に禁止といっても、どこまで守るかといったことは人によって多く異なります。日本で働く私の友人たち(イスラム教のインドネシア人)に聞くと、このようにバラエティに富んでいました。
- ハラルマークのついたものしか食べないので基本は自炊
- 豚やアルコールが使われているお店では食事しない
- 自分が食べなければOK(豚やアルコールが使われているお店でもOK)
- 自分が食べなければOK(同席している人が食べていても気にしない)
こういった教えを受けている人なんだと理解した上で、決めつけずに「避けているもの・食べられないものが無いか?」などと一言声をかけると良いでしょう。イスラム教徒の人に限らず「食べられないものはないか?」などを聞いたりするのはひとつの思いやりですよね。ハラル対応しているレストランへランチを誘ってみるのも良いかもしれません。
身なり
次は身なりです。イスラム教徒の方の身なりというとどんなことを思いつきますか?全身黒で目以外隠しているような姿でしょうか。髪をスカーフで覆ったような姿でしょうか。ニカブやヒジャブなどスタイルによって呼び方は様々ですが、教えに則って髪や肌の露出を控える女性が多くいます。
私が住むインドネシアでは髪を覆うヒジャブをつける方が多く、結び方やスカーフの柄などでファッションを楽しんでいる女性がたくさんいます。髪は家族以外の男性には見せないというのが一般的なようです。
日本に来た留学生がヒジャブを理由に接客のアルバイトに落ちたなんていう話を聞いたことがあります。もちろん業務の性質上許容しにくいこともあるとは思いますが、ダイバーシティと世間で騒がれている中でこういったことが起きてしまうことは個人的にはとても残念なことに思います。
最初は見慣れない気持ちもとても分かります、自分もそうでした。本当に仕事で支障があるものなのか?既存社員たちが異文化理解を進めて受け入れることが出来るのでは?など会社側の受け入れ体制を考えておくことが良いかと思います。
お祈り
最近は日本の空港でも祈祷室が設備されているところもありますよね。イスラム教では一日の中で五回のお祈りが義務となっています。お祈りの際には手足や顔を水で洗い、キブラと呼ばれる方角に向かってお祈りをします。人によって違いますがトータルで20分くらいといったところでしょうか。
この五回は時間が決まっていて、業務時間内にお祈りをしたいという要望も出てくるかと思います。業務との兼ね合いもありますが、「会議などの必要業務を優先した上で、休憩時間としてカウントしてお祈りをする」というように折り合いをつけた働き方をしている人が多いようです。
余談ですが、金曜には男性のみが参加する「金曜礼拝」というのものもあります。私が住むインドネシアではほとんどの会社が金曜のみ休憩時間を11:30~13:30としてこの金曜礼拝に対応しています。
断食
イスラム暦のなかで一ヶ月間、日の出から日没まで食事をとらないラマダンという月があります。このラマダンという月が終わると、レバランというお祝いの期間に入ります。日本で言うお正月のような、一年で一番大きい行事です。
一日食事を取らないと聞くと苦行のように思いますが、空腹を経験し貧困や飢えに遭っている人たちを思いやるといったことが目的です。寄付や施しを行ったり、争い事や喫煙などを避けることが推奨されており、穏やかに過ごす期間です。
日本で働いている友人に聞くと「日の出前に起きて食事を摂る、日没後の食事用に軽食と飲み物を職場に準備しておく」といった個々人で工夫しているケースが多いようです。学生時代から日本や海外に居る人の場合はどうやって対応するか慣れている方もいます。何かサポート出来ることがないか?などと声をかけておくのが良いでしょう。
ちなみにインドネシアの場合はその期間のみ、業務開始時間を早めてお昼の時間を短くするなどし、日没にはみんなが帰宅して食事をとれるような配慮がされています。
大切なのは決めつけずに、相手を理解しようとする気持ち
食事・身なり・お祈り・断食。イスラム教徒にとっては当たり前、でも馴染みのない私達にはまだ知らない点についてお伝えしました。数年前と比べるとイスラムへの理解に関する日本語の書籍もかなり増えてきましたし、YouTubeなどでの動画のコンテンツも増えています。歴史も長く、広い地域で信仰されている宗教なので、歴史の勉強やメンバーの国の理解のひとつとしてぜひ学んでみるのもおすすめです!
食事の点で挙げたように、一言でイスラム教といっても人それぞれここまではOKと決めているルールがあります。食事や礼拝、全て彼らの要望通りにすることが正解では無いと思います。大切なことは理解しよう、働きやすい環境を整えようと思う気持ちではないでしょうか。その気持ちは必ず本人にも伝わります。
仕事をするということは、プロフェッショナルとして一人ひとりが成果を出す必要があります。いままで馴染みのなかった文化に対して受け入れることは会社としてもストレスがかかりますよね。要望をヒアリングし、彼らが求めることと対応できることを一緒に折り合いをつけていくことが本当のダイバーシティへの一歩といえるのではないでしょうか。
学生時代と社会人で二度のインドネシア留学を経て、現在はジャカルタにて日系IT企業の現地法人立ち上げに従事。 日本語・インドネシア語・英語を駆使し、現地のIT人材と日本のIT人材の間のコミュニケーションをサポート。 英語などの非母語での業務、外国人として海外で働いて得た気づきをお伝えします。