これまでの記事でも何度か触れてきた公共職業安定所(ハローワーク)は、全国544拠点を有する、職業紹介、雇用保険、雇用対策の3業務を一体的に無償で実施する機関です。事業主にとっても求職者にとっても、利用しない手はなく、また日本人だけでなく外国人本人や外国人の雇用を目指す事業主向けの支援も充実しています。
今回の記事では外国人材の募集から雇用時、離職時まで常に関わることになるハローワークの活用方法や注意点などを見ていきましょう。
求人のためのハローワーク申込手順
ハローワークは、無料で求人登録できることは広く知られています。実際、この記事の執筆時点で100万件以上の求人がハローワーク インターネットサービスに登録されており、多くの企業が活用しているようです。
利用時のポイントとして、ハローワークは国籍や出身に言及して求人募集をすることはできません。その代わり、求めるスキルや資格、特記事項などに「中国語 ネイティブ」や「日本語能力試験N2以上」等の条件を記載することは可能です。書き方がよくわからない場合は、上記のハローワーク インターネットサービスにアクセスして「フリーワード」の項目に「中国語」などと入れて検索してみてください。参考になる求人票がたくさんあります。
また注意点としては、ハローワークの求人申込は記載すべき項目が多く、民間の求人サイトと比べて時間がかかることです。考えても書き方が思いつかない項目もあると思いますので、その意味でも掲載済みの求人票を参考にすると良いでしょう。
外国人雇用サービスセンター
ハローワークには、外国人雇用に特化したサービスがいくつかあります。外国人雇用サービスセンターは、その代表的な組織です。東京・新宿・名古屋・大阪・福岡の合計5拠点にあり、外国人求職者に対する情報提供、職業相談・紹介や事業主に対する外国人雇用の情報提供、援助などを専門的に行う厚生労働省所管の公共職業安定機関です。
求人申込以外の要望があるなら積極的に活用すべき機関ですが、場所が大都市に限定されている点と、取り扱い可能な在留資格の種類に制限がある点に要注意です。
拠点名 | 支援対象の在留資格 | ||||
---|---|---|---|---|---|
留学生(就職希望) | 専門的・技術的分野の在留資格 | 身分に基づく在留資格 | 留学生(アルバイト希望) | 特定活動 | |
東京(四ツ谷) | 〇 | 〇 | |||
東京(新宿) | 〇 | 〇 | |||
名古屋 | 〇 | ||||
大阪 | 〇 | 〇 | 〇(※1) | 〇(※2) | |
福岡 | 〇 | 〇(※3) |
※1.「留学生」「家族滞在」などの在留資格所持者で「資格外活動許可」を得ている者
※2. 別途交付される「指定書(パスポートに添付)」も持参
※3. 卒業後3年以内
毎年マッチングイベントやセミナー、インターンシップなど多種多様なサービスを提供しています。外国人雇用に興味が出てきたら、まずは訪問しておいて損はないと思います。訪問が難しければ、ホームページでサービスやイベントの詳細を確認することも可能です。
外国人雇用サービスコーナー
全国138拠点にある、日系人等の身分に基づく在留資格所持者を対象とした、主に通訳を通じて相談したい外国人求職者の支援を目的にハローワーク内に設立されたコーナーです。
また、通訳以外にも「外国人雇用管理アドバイザー」と呼ばれる、各ハローワークに設置された外国人雇用に関して専門的知識を有するアドバイザーがおり、外国人労働者の雇用管理の改善や職業生活上の問題などに各事業所の実態に応じた相談・指導を無償で行ってくれる窓口が存在します。
「労働条件等について外国人労働者の理解が得られない…」
「生活習慣の違いから外国人労働者との間に溝ができてしまった…」
「職務上の指示をもっとうまく伝えられないだろうか…」
事業主のこんな悩みに寄り添ってくれる強い味方です。ぜひ活用してみてください。
留学生コーナー(新卒応援HW)
留学生コーナー(新卒応援HW)は、仕事を探している留学生向けの窓口です。北海道から九州までの全国21拠点にあり、大学院・大学・短期大学・高等専門学校・専修学校などの学生や、卒業後3年以内の者を対象に、学校との連携の下、就職支援ナビゲーターによるきめ細かな支援などを無料で行っています。
例えば、以下のような支援が利用可能です。
- 専門の相談員による就職支援
- 就職活動についての相談
- 応募書類作成指導・面接対策
- 就職・職業に関する相談
- 通訳を通じての相談
採用後もハローワークへ 雇用状況届出書の提出
外国人材を採用できた後は、外国人雇用状況の届出をハローワークに提出する必要があります。これはハローワークをまったく利用せず、代わりに民間の求人サイト等を利用して雇用した場合でも必ず行わなくてはいけません。
平成19年に行われた第166回通常国会において「雇用対策法及び地域雇用開発促進法の一部を改正する法律」が成立したことに伴い、同年10月1日より、
すべての事業主は外国人労働者の雇用/離職の際に、厚生労働大臣(ハローワーク)へ届け出ること
が義務化されました。この場合の外国人労働者とは、特別永住者・在留資格「外交」「公用」を除くすべての在留資格を所持する外国人です。罰則規定も設けられているので、忘れずに行うよう注意してください。
なお、採用後の雇用保険被保険者の場合は、雇用保険被保険者資格取得届(様式第2号)又は雇用保険被保険者資格喪失届(様式第4号)を提出することで、外国人雇用状況の届出を行ったこととなります。
「任意」から「義務」へ移行の歴史
実はすでに平成5年度の段階で「外国人雇用状況報告制度」というものが存在しました。これは当時の外国人労働者数は(合法・不法を問わず)60万人以上、労働者全体の1%以上に達したことで、日本における彼らの労働市場への影響を考えた結果、外国人労働者の雇用状況の把握により彼らの失業予防や雇用の安定等の対策を実施するべきとして作られた制度でした。
ただこの制度は、従業員50人以上の規模の全事業所と、従業員49人以下の規模の一部の事業所を対象とした「任意」報告制度でした。故に外国人労働者を雇用しているすべての事業所や労働者数の把握はまだできませんでした。
平成5年の報告では約10万人弱であった外国人労働者も、平成18年には約22万人に達しました。潜在的な外国人労働者数はさらに増加を続けていることを憂慮したからか、この翌年から「雇用対策法及び地域雇用開発促進法の一部を改正する法律」が施行され、外国人の雇用状況届出が義務化されました。
以前の記事『増加し続ける外国人労働者の現状と在留資格の基本』を参照すると、平成19年以後も外国人労働者の人数が(ハローワークへ雇用状況届出書の提出によって把握された外国人労働者の数が)年々増加していることが分かります。この届出に基づいて、ハローワークでは雇用環境改善に向けて、事業主への助言や指導、離職した外国人への再就職支援を整備した経緯があります。
まとめ
ハローワークは事業主にとって、外国人材の募集から離職まで、いわゆる「ゆりかごから墓場まで」付き合うことになる国営の機関です。今回の記事を参考に、ハローワークとのより良い付き合い方を検討してみてください。きっと役に立つはずです。
劇団民藝所属。俳優として活躍する傍らソーシャライズで多文化共生を推進すべく主に動画編集や記事の執筆、インタビューなどを担当。舞台や歌、踊りなど人類がはるか昔から共有していた活動にこそ相互理解の本質があると考え、人の心に触れる術を日々模索している。